フォルクスワーゲン ジェッタ(Volkswagen Jetta)は、北米を主要な市場に据えつつ、欧州やオセアニアでも販売されているミッドサイズセダンです。北米で大きなシェアを持つ日本車と対抗するというコンセプトから日本の道路事情にマッチしている部分も多く、初代から5代目までは日本にも正規輸入されていましたが、6代目へのモデルチェンジ時に輸入が途絶えてしまい、日本語の情報も減ってしまいました。最新のジェッタは果たしてどのようなモデルに仕上がっているのでしょうか?
そこで今回は6代目ジェッタの右ハンドル・イギリス仕様について、デザインからラインナップ構成まで徹底解説します。世界戦略車として高い完成度を誇りながらも、日本には導入されていないジェッタの最新モデルを並行輸入してみませんか?
この記事の目次
フォルクスワーゲン ジェッタの歴史と特徴
初代ジェッタは、実用的な3ボックスセダンを好む北米市場の要望に応じ、大ヒット作の初代ゴルフをベースに1979年にデビューしました。「ゴルフの後ろにトランクを足してセダンにする」という単純明快ともいえる成り立ちが特徴で、そのスタンスは以降3代目まで続いてゆくことになります。
フォルクスワーゲンは車名に風にまつわる名前を用いることが多く、「ジェッタ」もジェット気流を意味するJetstreamを語源とする造語でした。日本への導入は1981年にされたものの、当時は輸入車自体がまだ一般化していない時代。しかも3年間という短い期間で2代目にバトンタッチされたため、日本で出回っていた個体数はそう多くなかったと思われます。
2代目は1984年にデビュー。基本的にゴルフ同様に初代からのキープコンセプトでデザインがされており、当時のセダンでは世界最大容量という575Lものトランクスペースがセールスポイントでした。
3代目は1992年に登場し、これまでと同じく「リアドアまでをゴルフと共有して前後デザインを専用化する」というスタンスで開発されましたが、車名を「Vento」(ヴェント)に改めました。新しい車名の由来はイタリア語もしくはポルトガル語で風を意味します。
「乗降性に優れ、広大なキャビンと収納力に富むトランクルーム」という初代から継承されてきた質実剛健なコンセプトは、3代目でひとつのピークを迎えます。国産車のセダンが、80年代後半から90年代初頭まで居住性よりスタイル優先のセダンを開発をしていたのとは対極にある存在でした。
4代目は1998年に登場。何とまたしても車名が「BORA」(ボーラ)に変わりました。Boraとはアドリア海を吹き抜ける冬の北風を意味する言葉です。
1993年に会長に就任したフェルディナント・ピエヒ氏が進めた高級拡大路線によって、歴代の質実剛健でパッケージ効率優先のベーシックなデザインからボディサイズを拡大し、各部品の精度を高めた上でパーツ間の隙間を徹底的に少なくするなど、ゴルフIVと同様にこれまでとは一線を画す品質で登場しました。
エクステリアは角ばったキャビンから、やや丸みを帯びたものに変化。これは、1996年にデビューした4代目パサートとのデザイン的な繋がりを意識したものでした。これを受けて、ゴルフIVと共有のボディパネルは実質的にフロントドアのみとなり、ゴルフとのデザイン上の差別化が一気に進みました。
5代目は2005年に登場します。これまで3~4代目にかけて欧州や日本向けは繰り返し車名を変更してきましたが、5代目は初代からの車名である「Jetta」を再び名乗る事になります。これまで「Jetta」の名前を初代から貫き続けてきたのは北米向けのみでしたが、紆余曲折を経て2代目以来となる世界統一の車名が復活しました。
車名が二転三転するのは迷走の証である事が多く、車としての印象がどんどん薄くなり売り上げに繋がらずにフェードアウトしてしまうモデルも多いのですが、原点回帰で最初の車名が復活するのはめずらしいことです。
ジェッタの場合は初代から北米市場では保守層向けをターゲットとしていただけに、唯一車名の変更をしなかったことが功を奏しました。「車名を元に戻す」という後ろ向きなイメージではなく「車名をジェッタに統一する」という言い方ができたのもそのおかげです。
先代比で、+180mmと大幅に延長された全長を筆頭に、全てのディメンションでサイズアップが図られた結果、ジェッタはCセグメントとDセグメントの中間に位置するレベルにまで到達しました。年々厳しさ増す各国の衝突安全基準を満たすためにボディサイズが拡大の一途を辿る時代のなかにあって、それ以上に先代から続くVW全体の高級化路線への指向を反映したディメンションとなっていました。
歴代モデルとの大きな相違点は、フロントマスクの印象に大きな影響を与えるヘッドライトユニットがゴルフVと完全共有化された事です。これにより、初代から貫いてきた「ゴルフは丸目、ジェッタは角目」という、デザイン上における棲み分けの法則が初めて崩れました。
最新モデルの6代目は、2010年に主要マーケットである北米からデビューしたのを皮切りに、翌年の2011年に欧州デビュー。VWは、新型を「イオスやティグアンと同様に、VWライナップの中で独立したモデルした上で、ゴルフとパサートの間を埋めるモデル」と位置付けました。歴代モデルと同じように、基本コンポーネンツそのものはゴルフVIをベースにしつつ、外見上はゴルフと共有しているパネルをゼロにした事が6代目における最大の特徴であり、遂に4代目以降徐々に薄められてきたゴルフ一族の面影は完全に消えることになりました。
フォルクスワーゲン ジェッタ コマーシャル (約33秒)
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スタイリッシュに生まれ変わったエクステリア
6代目ジェッタは、先代比で全長が75mm伸びていますが、これはホイールベースの延長分と一致しており、そこから後席のフットスペース拡大分に67mm使用する事で、後席居住性重視になりました。これらの拡大策によって、完全なDセグメントカーへと成長を遂げました。
エクステリアは、2008年のシロッコからスタートした、黒い横一文字のシンプルなグリルと、シャープなヘッドライトを組み合わせるという現行のデザインアイコンに則っています。2014年にマイナーチェンジを受け、ゴルフVIIなどの最新世代とテイストを合わせたアップデートが施されました。
高品質で機能的なインテリア
一見するとゴルフ6の雰囲気に似ていますが、基本的にゴルフから流用されたものはなく、ジェッタ専用のものが与えられています。スイッチやメーターなどの配置はフォルクスワーゲン各車に共通するオーソドックスなデザインで、奇をてらったところはありません。はじめて乗る方でも違和感なく使うことのできる配置です。
インテリアに使用されているプラスチック類は、手触りもよく、高級感を感じさせる上質なものです。2014年のマイナーチェンジでは、インパネ各部にみられる加飾パネルがピアノ調のブラックパネルに変更され、ステアリング自体もゴルフVII世代と同じデザインのものに変わり、高級感を増しています。
選べる7通りのパワートレーン
イギリス仕様の場合はエンジンが4種類、トランスミッションも4種類あり、また3つのグレード(下から順にS、SE、GT)によってエンジンとトランスミッションの組み合わせが異なります。
【ガソリンエンジン】
- 1.4L TSI 125PS 6MT (S/SE)
- 1.4L TSI 150ps 6MT/7DSG (SE/GT)
【ディーゼルエンジン】
- 2.0L TDI 110PS 5MT/7DSG (S/SE/GT)
- 2.0L TDI 150ps 6MT/6DSG (SE/GT)
DSGはデュアルクラッチトランスミッションで、7速のものは乾式単板クラッチが、6速のものは大出力に対応した湿式多板クラッチが組み合わせられます。グレードを先に選び、その中から用途に合ったパワートレインを選ばれると良いでしょう。
ゴルフ譲りの定評ある足回り
ジェッタのサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンクを採用しています。これは、現行ゴルフ7の上級グレードと共通の形式で、優れた直進性や、コーナリング時の安定性、そして乗り心地のよさに定評があります。
ゴルフより拡大された後席空間も相まって、大人4人での長距離移動も疲労感少なくこなせるでしょう。
ガソリンエンジンでも優れた経済性を発揮
長距離移動が多く、燃費性能にもシビアな欧州車だけあって経済性も重視されています。1.4L TSI(150ps)と7速DSGの組み合わせの場合、欧州複合モード燃費は 19.6km/Lです。さらに、2.0L TDI(110ps)と7速DSGの組み合わせにいたっては 23.8km/Lに達します。
ディーゼルエンジンの燃費の良さはもちろんのこと、ガソリンエンジン仕様でもクラストップレベルの低燃費を実現しています。
総評:実直さと上質さをあわせもつ正統派セダン
6代目ジェッタは、密接な兄弟関係にあったゴルフから袂を分けた独立車種として開発されたモデルですが、メカニカルコンポーネンツはゴルフとの共通性が高く、基本性能に関しては折り紙付きです。
ホイールベースを拡大することで得た後席空間の余裕は、大人4人での快適な移動を可能にします。優れた乗り心地や良好な燃費も相まって、長距離移動は得意とするところです。また、スタイリッシュに生まれ変わったとはいえ、伝統である大型のトランクを確保するなど、実用車としての使い勝手も高いレベルにあります。
現在の日本市場では、ジェッタのようにシンプルでありながら伸びやかで上質なエクステリアデザインを纏ったDセグメントセダンはそう多くありません。VWによる正規輸入が途絶えた今も、6代目ジェッタは魅力的な選択肢のひとつと言えます。
フォルクスワーゲン ジェッタのライバルは?
現行ジェッタはDセグメントに属しているものの、主戦場に名を連ねる他のモデルはボディサイズが更にひとまわり大きく、パサートの方が直接的なライバルになるようなモデルが大勢を占めます。
ひとつ下のCセグメントで見回してみても、王者ゴルフと対決するためライバルメーカーが用意するモデルのほとんどがハッチバックボディを採用しており、やはり対決できるセダンボディのライバルを見つけにくいのが現状です。見方を変えると、フォルクスワーゲンは巧みにライバル不在のニッチなポジションに現行ジェッタを据えたとも言えます。
ジェッタに近いボディサイズで候補を挙げた場合、
- アウディ A3セダン(24,235ユーロから)
- BMW 3シリーズセダン(22,645ユーロから)
- メルセデス・ベンツ Cクラスセダン(22,495ユーロから)
の3台が最も近いと言えますが、これらはプレミアムブランドのモデルのため、ジェッタ(19,155ユーロから)と比べると、もっとも安価なグレードで価格が3,000ユーロ以上違うなど、車格や価格帯が少々異なります。
ボディサイズと価格帯の両方でジェッタと現実的に比較できるのは、
- トヨタ アヴェンシスセダン(18,085ユーロから)
- マツダ 3セダン(17,395ユーロから)
※日本でのアクセラ セダンに相当
の2車種です。日本車勢のモデルがもっとも近く、特にハッチバック車が優勢なイギリス市場ではあまり比較するモデルがいないようです。
ジェッタにとっての主戦場はやはり北米市場であり、そちらに目を向ければ、ひしめくライバル達は皆日本車という市場です。トヨタのカローラ、日産のセントラ、ホンダのシビックが鎬を削る、熾烈な競争の中に送り込む欧州車の代表がジェッタなのです。それゆえ、欧州で直接競合する相手もまた日本車勢となるのは道理であると言えるでしょう。
フォルクスワーゲン ジェッタの装備とオプション
イギリス仕様のジェッタは「S、SE、GT」の3つというシンプルなグレード構成になっていますが、以下の安全装置についてはグレードに関係なく全車標準装備です。
- ABS/HBA(アンチロックブレーキシステム/油圧ブレーキアシスト)
- ESC/EDL/ASR(横滑り防止装置/電子制御デフロック/トラクションコントロール)
- 自動追突軽減ブレーキ
- 運転席/助手席エアバッグ(助手席エアバッグキルスイッチ付き)
- カーテンエアバッグ
- 前席サイドエアバッグ
- タイヤ空気圧監視システム
- ISOFIXシートベルトアンカー(リア2席)
- 集中ドアロック
最低限必要とされる安全装備に関しては国産車よりも装備レベルが高く、グレードによる差をつけないところはフォルクスワーゲンに限らず欧州車の美点と言えます。
また、グレードごとの主な標準装備は下記の通りとなっています。
フォルクスワーゲン ジェッタの装備とオプションは+ボタンで詳細が表示されます。
Sの主な標準装備
- マニュアルエアコン
- パワーウィンドウ
- 盗難防止装置
- マルチインフォメーション・カラーディスプレイ(センターコンソール)
SEの主な標準装備は、上記Sの装備に加えて(または入れ替え)
- 16インチアロイホイール
- マルチファンクション付革巻き3本スポークステアリング
- クルーズコントロール
- マルチメディアシステム(車両機能設定も含む)
GTの主な標準装備は、上記SEの装備に加えて(または入れ替え)
- 17インチアロイホイール
- フロントフォグランプ
- 熱線吸収プライバシーガラス(リアドア/リアウィンドウ)
- 自動防眩ルームミラー
注文時にしかオーダーできない主なメーカーオプション
- オートエアコン(運転席/助手席温度独立調整式)
- ブラインドスポットモニター(後続車両の存在をドアミラー内のインジケーターで通知)
- 後席サイドエアバッグ
ジェッタのベストバイグレードは?
4ドアセダンに何を求めるかは人によってさまざまですが、今回はベストバイグレードとして、ジェッタ GTをご案内します。こちらは、5代目ジェッタの日本仕様に設定されていて、2016年現在も中古市場で注目度が高い「ジェッタ GTスポーツ」を彷彿とさせるスポーティーなルックスが魅力的です。
一方、GTの装備が過剰だと感じられる方、例えばプライバシーガラスが苦手な方は、SEにオプションを積み上げていっても良いかもしれません。
エンジンは、日本で乗られる場合、価格と動力性能、燃費のバランスが良い、1.4L TSIの150PS仕様に、7速DSGの組み合わせがおすすめです。もちろん、MTやディーゼルなどのご注文も承ります。お気軽にご相談ください。
フォルクスワーゲン ジェッタの並行輸入、日本での乗り出し価格は?
フォルクスワーゲン ジェッタのイギリスでの販売価格は、フォルクスワーゲン ジェッタ SE 1.4 TSI(150ps) 7速DSGで£22,615です。イギリスより並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
フォルクスワーゲン ジェッタはフォルクスワーゲン・ジャパンでは正規輸入車として導入されておらず、今後の導入可能性も低いモデルです。日本で乗る場合、並行輸入が最も現実的な方法です。19,155ユーロから設定されている左ハンドルの並行輸入も可能ですので、ご相談ください。
※輸入国からの輸送料、各種税金、検査費用、登録諸費、納車費用(大阪近郊)は全て含まれています。
※正式なお見積り、遠方への納車費用など、改めてご提示いたしますのでお問い合わせください。
金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスしてください。
フォルクスワーゲン ジェッタ NYでのワールドプレミアの様子 (約3分10秒)
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スペック表
フォルクスワーゲン ジェッタのスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | フォルクスワーゲン ジェッタ GT / Volkswagen Jetta GT |
エンジン、サンプルグレード | 1.4 TSI 150ps 7DSG |
英国販売価格 | £23,480 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 4 |
カラー | ブラック(標準色) トルネードレッド(OP) ピュアホワイト(OP) ブルーシルク(OP/MTL) ダークブロンズ(OP/MTL) プラチナムグレー(OP/MTL) ルビーレッド(OP/MTL) ディープブラック(OP/PAL) ※OP:有料オプション ※MTL:メタリック塗装 ※PAL:パール塗装 |
全長x全幅x全高 | 4,659 x 1,778 x 1,482 mm |
ホイールベース | 2,651 mm |
トレッド(前/後) | 1,535mm/1,538mm |
車両重量 | 1,364kg(参考値) |
乗車定員 | 5名 |
トランスミッション | 7DSG |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒ターボ |
総排気量/内径x行程 | 1,395cc / 81.0 x 95.5 mm |
圧縮比 | 10.0 |
最高出力 | 110kW(150PS) / 5,000-6,000 rpm |
最大トルク | 250Nm / 1,500-3,500 rpm |
燃料タンク容量 | 50L |
燃費 | 約19.6km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ディスク |
タイヤ/ホイール | 205/55 R16 |
最高速度 | 220km/h |
0-100km/h加速 | 8.6秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
フォルクスワーゲン ジェッタをもっと知りたい方はこちら
・フォルクスワーゲン 英国 ジェッタのオフィシャルサイト(Volkswagen UK Jetta)
・フォルクスワーゲン 英国 ジェッタのコンフィギュレーター(Volkswagen UK Jetta)
・フォルクスワーゲン 英国 ジェッタのカタログ・価格表ダウンロード(Volkswagen UK Jetta)
※本記事は2016年6月24日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。