1950年に最初のモデル、タイプ2(通称ワーゲンバス)が登場して以来の長い歴史を持つフォルクスワーゲン トランスポーター(Volkswagen Transporter)は、1947年登場のシトロエン Hバン(Citroen H Van)や、1956年登場のフィアット 600ムルティプラ(Fiat 600Multipla)、1959年登場のルノー エスタフェ(Renault Estafette)と並んで、ヨーロッパの小型商用車(LCV:Light Comercial Vehicle)の歴史を紡いできました。2015年にはT6と呼ばれる第6世代に移行しましたが、そんな最新のトランスポーターに、65年の歴史を感じさせるスペシャルモデルが設定されています。それがジェネレーション6です。
ジェネレーション 6は、T6 トランスポーターの最上級モデルとして設定されており、イギリスではカラベル ジェネレーション6(Caravelle Generation Six)、その他のヨーロッパの左ハンドル圏ではマルチバン ジェネレーション 6(Multivan Generation Six)としてカタログにラインアップされています。最新のテクノロジーや機能性の高さを持つT6 トランスポーターに、絶妙なノスタルジックさが加わったジェネレーション6は、ラインアップの中でも独特な存在感を放っています。
今回はイギリス仕様右ハンドルのカラベル ジェネレーション6を中心に徹底解説します。T6 トランスポーターの中で、もっとも個性的で存在感を放つ、特別なカラベルを並行輸入してみませんか?
この記事の目次
フォルクスワーゲン カラベル ジェネレーション6の特徴
カラベル ジェネレーション6は、イギリス仕様のトランスポーターの上級モデルであるカラベルをベースに、ツートンカラーの専用色をはじめ、さまざまな特別装備を追加したモデルです。
ベースモデルであるカラベルのトップグレード、カラベル エクスクルーシブに対して、価格は9,000ポンドほど高価になりますが、通常ではオプションとして選択できない特別装備に加え、通常のカラベルではオプションとして設定されている高性能な装備も多数追加されており、カラベルに単純にオプションを追加するよりも、むしろ割安感を感じる価格設定です。
それでは、特別装備や追加装備の内容について、詳しく触れていきましょう。
フォルクスワーゲン ジェネレーション6 プロモーションビデオ(30秒)
ARVE Error: Aspect ratio 560:315
is not valid
初代トランスポーターを髣髴とさせるエクステリア
カラベル ジェネレーション6のエクステリアで真っ先に目を引くのは、車体の上下で塗り分けられた2トーンカラーです。BMWがMINIを復活させて以来、2トーンカラーは世界中のクルマのトレンドとなっていますが、このような大胆な塗り分けを採用したモデルは他になかなか見当たりません。
この2トーンカラーは、初代トランスポーターへのオマージュ。塗り分けの境目がプレスラインと一致するのも初代と同じです。車体上部は、通常1,000ポンド超のオプションとして設定されている特別色のオリックスホワイトが、車体下部はソリッドカラーであるチェリーレッドが採用されています。なお、イギリスではジェネレーション6のイメージカラーとも言うべき、この白x赤の組み合わせのみが設定されていますが、左ハンドル仕様のマルチバン ジェネレーション6では、下部を灰色、緑色、濃い青色、ベージュとしたもの、また上部をシルバー、下部を水色としたものも存在します。
また、ジェネレーション6では、通常はオプション扱いとなっているリアのプライバシーガラスが標準装備されています。広い面積のサイドガラスをブラックアウトさせるプライバシーガラスは、デザイン上のアクセントとなり、2トーンカラーとあわせてジェネレーション6の存在感を引き立ててくれます。また、精悍な印象を与えるLEDヘッドライトも標準で装備されています。
初代トランスポーターへのオマージュはカラーリングだけに留まりません。ホイールは、往年の白く塗装されたスチールホイールと、メッキされたホイールキャップの組み合わせを連想させる、ジェネレーション6専用デザインのアルミホイールが用意されました。このホイールは通常のカラベル エクスクルーシブの17インチよりも大きな18インチで、タイヤサイズは255/45 R18となります。
Bピラーには”Generation Six”というエンブレムが追加されています。小さなエンブレムは、このモデルが特別であることを、さりげなく主張しています。
なお、ボディサイズはカラベル エクスクルーシブ同様の、全長4.9m、ホイールベース3.0mのショート仕様のみとなります。カラベル SEのような40cm長いロング仕様の設定はありませんが、2m以内の全高とあわせて、日本の駐車場事情でも持て余すことが少なく、また十分な室内スペースを持っています。
高級感にカジュアルさも加わったインテリア
カラベルのインテリアは、高級感を感じさせる上質な仕上がりでしたが、ジェネレーション6では、そこに往年の空冷フォルクスワーゲンに通じるポップさ、カジュアルさも個性として加わりました。
ドアを開くと、ジェネレーション6のロゴが入ったイルミネーションで照らされたステップが乗員を出迎えます。
通常はピアノブラックとなるダッシュボードのパネルは、エクステリア同色のチェリーレッドに。ドライバーの気持ちを明るくしてくれるでしょう。
シートは、通常は1,300ポンドのオプションとなる、2トーンのアルカンターラ/レザーシートを採用。座面や背もたれは、”Moon Rock(ムーンロック)”と呼ばれる淡いベージュのアルカンターラで仕上げられ、車内の雰囲気を明るくしてくれるほか、滑りにくさにも配慮されています。一方、擦れやすく耐久性が求められるシートの縁には、チタニウムブラックのレザーが使われています。フロントシートにはシートヒーターも備わります。
オーディオは、通常の5インチのディスプレイオーディオに代わって、オプション設定されている6.33インチのものを標準で装備。App-Connectと呼ばれるスマートフォンのアプリ連動機能、Bluetoothハンズフリーフォン、SDカードやAUX入力にも対応しています。なお、残念ながら内蔵のカーナビゲーションシステムは日本ではそのまま使えませんが、配線解析等で日本の地図を表示させることが可能な場合もあります。お気軽にご相談ください。
その他の室内のレイアウトや快適装備は、ベース車両のカラベルを受け継いでいます。7人が快適に過ごせるレイアウトや、折り畳み式のテーブルなどは、ヨーロッパのLCVベースのミニバンの中でも特にバランスの取れたもので、近年はライバルもカラベルをベンチマークとして、同様のレイアウトや装備を採用しています。
パワートレインはパワフルなディーゼルターボと7DSG
カラベル ジェネレーション6のパワートレインは、排気量2.0Lの直列4気筒のディーゼルエンジンに限られます。出力は2仕様あり、シングルターボのTDIは150PS、ツインターボのBiTDIが204PSを発揮するのも、カラベルと同様です。ただし、ベースのカラベルに設定されているガソリンターボエンジンの設定は、残念ながらありません。
また、トランスミッションはイギリス仕様では、7速デュアルクラッチトランスミッション(7DSG)に集約されています。6速MTは左ハンドル仕様のみの設定となっています。
7DSGは日本に正規輸入されているフォルクスワーゲン各車でも馴染みのあるものですが、カラベルのディーゼルエンジンは強力なトルクを発揮するため、それに対応した湿式多板クラッチを持つものを採用しています。これは変速段数こそ違うものの、ゴルフ GTIなどのスポーツモデルに近い構造です。
動力性能は150PS仕様でも十分で、100km/hまでの加速は13.0秒、最高速度は180km/hに達しますが、204PSはさらに余裕が加わり、100km/hまでは9.9秒、最高速度は202km/hに達します。カラベル ジェネレーション6ならば、新東名高速道路や東北自動車道の制限速度が120km/hに引き上げられても、ストレスのないクルージングが楽しめるでしょう。
電子制御ダンパーを標準装備した足回り
カラベル ジェネレーション6には、通常876ポンドのオプションとなっている、DCC(ダイナミック・シャシー・コントロール)と呼ばれる電子制御ダンパーが標準装備されています。これは先代T5でオプションだったエアサスペンションに代わって、T6で新たに採用されたシステムで、積載量や乗車人数に左右されず、安定した走りを実現します。またサスペンション自体もダイナミックサスペンションと呼ばれるものが採用され、カラベルSEなどの通常モデルに対して、最低地上高が20mm低くセッティングされています。
駆動方式は前輪駆動のみとなっています。残念ながら電子制御式4WDである4モーションを選ぶことはできません。
良好な燃費と気になるタイヤサイズ
カラベル ジェネレーション6は、効率の良い7DSGが採用されていることもあり、欧州複合モード燃費で、150PS仕様では16.6km/L、204PS仕様では15.8km/Lをマークします。これはベースモデルのカラベルと同じ数値です。車両重量2.4トン弱の巨体であることや、エンジンパワーを考えれば、十二分に良好なスペックと言えるでしょう。
一方、やや頭を悩ませるのはタイヤサイズかもしれません。18 x 8Jのホイールを採用したことにより、標準のカラベルの235/55 R17に対して、255/45 R18と大きくなったタイヤですが、このサイズのタイヤは価格が張る傾向があり、特にスタッドレスタイヤの選択肢が減ってしまいます。積雪地ではスタッドレス用に、17 x 7Jのホイールを別途用意することも検討したくなるかもしれません。
総評:フォルクスワーゲンの考えた理想的なT6のひとつ
カラベル ジェネレーション6は、フォルクスワーゲン T6の宣材写真でも多く使われています。フォルクスワーゲンは、この仕様をT6のひとつのトレードマークとして位置づけているのでしょう。実際にタイプ2のデザインテイストの導入は、通常のカラベルが持つ、高級ながらややビジネスライクな雰囲気を緩和することに成功し、一方でハメを外しすぎていないという、絶妙なバランスに仕上がりました。
また、見た目の存在感に留まらず、非常に充実した標準装備が備わっていることに気付かされます。価格などの販売戦略上、通常のカラベルでは標準装備できなかったものの、フォルクスワーゲンとしては標準装備したかった装備について、特別仕様車の名を借りて標準装備としたという見方をすることもできるかと思います。
ですから、カラベル ジェネレーション6を選ぶ理由は2つ考えられます。ひとつは、個性的なデザインを持つトランスポーターが欲しいから。もうひとつは、装備が充実したカラベルが欲しいから。いずれの理由で選んでも、ジェネレーション6は、十分な満足度をユーザーに与えてくれることでしょう。
カラベル ジェネレーション6の装備とオプション
カラベル ジェネレーション6は、特徴の項目でもご紹介したとおり、非常に装備が充実しています。中でも、通常オプション扱いされている安全装備が多数追加されていることは、ジェネレーション6の大きな魅力です。
クルーズコントロールは、カラベル エクスクルーシブで標準装備される通常型に代えて、レーダーで前車との車間を保ち、加減速を自動で行うアダプティブクルーズコントロール(ACC)が標準採用されています。近年日本車をはじめ、多くのモデルで採用されているACCですが、ジェネレーション6のものは約160km/hまでの追尾に対応、最大120mまでの任意の車間を保ちます。日本の道路事情でも積極的な使用が可能です。
またACCのためのセンサーを活用した、市街地での警告・自動ブレーキ機能も搭載。不注意による追突事故のリスクを減らします。車重約2.4トン弱に達するカラベル ジェネレーション6の運動エネルギーはかなりのものですから、万一の場合を考えると、これは頼もしい装備です。
車線変更するときに、ドアミラーの死角に入ってしまう斜め後方の並走車の存在をモニタリングする、サイドスキャン機能も搭載されています。ウィンカーを出して車線変更する際に並走車が走っていると、ドアミラーに警告表示を出してドライバーへの注意を促します。また、ドアミラーは電動で格納できますが、これも通常はオプションとなっている装備です。
パーキングセンサーとリアビューカメラも搭載され、駐車中の接触事故を防止します。また、サイドカーテンエアバッグは、標準の前席用に加えて、後席用のものも搭載されています。
一方で、カラベル エクスクルーシブから削られた装備も存在します。自動防眩ミラー、レインセンサー、フロントガラスのヒーター、フロントガラスのウォッシャーノズルのヒーター、3列目シートの中央アームレスト、電動スライドドア、テールゲートが半ドア状態でも電動で引き込むパワーラッチング、そしてステアリングのサーボトロニックが、ジェネレーション6に搭載されず、カラベル エクスクルーシブには搭載されている主な装備です。
また、ジェネレーション6は特別仕様車という扱いから、通常のカラベルと異なり、膨大な組み合わせを持つメーカーオプションは設定されていません。通常のカラベルなら可能なオーダーメイド感覚のオプション追加ができないのは、ジェネレーション6の弱点かもしれません。ただ、各種キャリアなどのディーラーオプション相当の装備は追加可能です。
ライバルは不在ながら、個性豊かなフランス勢は気になる存在か
ジェネレーション6は、フォルクスワーゲン タイプ2のエッセンスを、上手に最新のカラベルに織り込んだモデルです。このような商品展開は歴史と伝統の裏打ちがあるからこそ出来ることですから、同じような存在感を持つモデルを見つけることは、容易ではありません。
ベースであるカラベルには最大のライバルとして、メルセデス・ベンツ Vクラスがあり、またシトロエン スペースツアラー(Citroen Space Tourer)はビジネスラウンジと呼ばれる、3列目も独立シートとした6シーターの高級グレードを設定して、カラベルとVクラスへの追撃を行っていますが、これらは王道の上級ミニバンである一方で、ジェネレーション6のような存在感には敵いません。
ただし、高級ミニバンというコンセプトから少し離れると、ルノー トラフィック(Renault Trafic)に設定されたSport+packと呼ばれるオプションは、ジェネレーション6と比較してみたくなる存在です。これはボンネットやボディ側面にエクステリアデザインを引き立たせるデカールを追加し、またルノースポール開発のフロント・リアスポイラーを追加するというセットオプションです。やはり、ルノースポールというバックグラウンドがあるからこそ実現できた商品展開であり、メーカー開発ならではの一体感を達成しています。
ルノーはミニバンとしてエスパスをラインアップしていることもあり、トラフィックには上級乗用モデルを用意していません。そのためトラフィックとカラベルは本来直接競合しないのですが、他とはひと味違う個性を持ったLCVとして、トラフィック Sport+packはジェネレーション6の良きのライバルになりそうです。
カラベル ジェネレーション6の並行輸入、日本での乗り出し価格は?
フォルクスワーゲン カラベル ジェネレーション6のイギリスでの販売価格は、150PS 7DSG仕様で£52,830です。イギリスより並行輸入した場合の日本国内の乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
カラベル ジェネレーション6を含むフォルクスワーゲン T6 トランスポーターの各モデルはフォルクスワーゲン・ジャパンでは正規輸入車として導入されておらず、今後の導入可能性も低いモデルです。日本で乗る場合、並行輸入が最も現実的な方法です。また、左ハンドル仕様についても、お気軽にご相談下さい。
※輸入国からの輸送料、各種税金、検査費用、登録諸費、納車費用(大阪近郊)は全て含まれています。
※正式なお見積り、遠方への納車費用など、改めてご提示いたしますのでお問い合わせください。
金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスしてください。
フォルクスワーゲン T6カラベルの輸入中古車も狙い目
乗り出し価格を抑えられる、現地で流通している高年式の中古車やディーラーデモカーなどもオススメです。中には、最新年式で走行10-100マイル程度の極上コンディションの個体も出ています。
以下のものは、一例ですが、他にも魅力的な条件のものが多数出ております。ご希望をお聞かせいただければ、条件に近いものをお探しいたします。是非お問い合わせください。
スペック表
フォルクスワーゲン カラベル ジェネレーション6のスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | フォルクスワーゲン カラベル / Volkswagen Caravelle |
エンジン、サンプルグレード | Generation Six 2.0 TDI 150PS 7-Speed DSG BMT |
英国販売価格 | £52,830 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 5 |
カラー | オリックスホワイト x チェリーレッド(MTL/標準色) ※MTL:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 4,904 x 1,904 x 1,970 mm |
ホイールベース | 3,000 mm |
トレッド(前/後) | -/- |
車両重量 | 2,380kg(参考値) |
乗車定員 | 7名 |
トランスミッション | 7DSG |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒直噴ターボ |
総排気量/内径x行程 | 1,984cc / 81.0 x 95.5 mm |
圧縮比 | 16.5(参考値) |
最高出力 | 110kW(150PS) / 3,250-3,750 rpm |
最大トルク | 340Nm / 1,500-3,000 rpm |
燃料タンク容量 | 80L |
燃費 | 約16.6km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ディスク |
タイヤ/ホイール | 255/45R18 (参考データ) |
最高速度 | 約180km/h |
0-100km/h加速 | 13.3秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
フォルクスワーゲン T6 カラベル ジェネレーション6をもっと知りたい方はこちら
フォルクスワーゲン 英国 カラベル ジェネレーション6のオフィシャルサイト (VW UK Caravelle Gen 6)
フォルクスワーゲン 英国 カラベル ジェネレーション6のカタログ・価格表 (VW UK Caravelle Gen 6)
※本記事は2016年8月3日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。