「幸せな結婚」とはどんなモノでしょうか?人生においてなかなか難しいテーマでもあり、人それぞれ答えが違うかも知れません。一見、クルマと関係ないハナシのように感じますが、今回紹介する一台を考えると、こんなフレーズが思い浮かぶのです。なぜかは、読み進めていただければ納得いただけるはずです。
今回はフィアット 500Xを徹底解説します。日本にもすでに正規輸入されているモデルですが、未導入の組み合わせを並行輸入してみませんか?
この記事の目次
フィアット 500Xの特徴
フィアット 500XはCセグメントのクロスオーバーSUVです。名前の通り、復活版500をはじめとする一連のモデルのひとつで、500、ステーションワゴンタイプの500Lに次く3作目です。500Xの「X」は「クロスオーバー」を表しており、2014年のパリモーターショーで発表され、日本市場へは2015年より正規輸入されています。
500XはコンパクトSUVであるフィアット セディチの後継にあたります。セディチはスズキと共同開発したモデルで、日本ではスズキ SX4(初代モデル)として販売されていました。ちなみにセディチという名前は、AWDを表す「4×4」の計算結果「16」を表すイタリア語に由来します。さらにフィアットのクロスオーバーやオフロードモデルを辿っていくと、イタリア軍での採用実績があるオフロードモデルで、フィアット版ジープとも言えるカンパニョーラや、ビーチカーに近い存在のユングラなどが祖先にあたるようです。
プラットフォームは、スモールワイド4×4アーキテクチャーを採用しています。これはかつて業務提携関係にあったGMと共同開発し、グランデプントで採用された「GMフィアットスモールプラットフォーム」をベースに発展させたものです。このプラットフォームを採用した兄弟車には、同じフィアット・クライスラー・オートモビルズ(以下FCA)グループの、ジープ レネゲートがあります。
生産国はイタリアで、500Xとレネゲートは同じラインで作られています。この2車種の生産ラインが同じであることは、現在のFCAを象徴していると言えそうです。
フィアット 500X City Look CM動画(約30秒)
エクステリア
NUOVA500のDNAをしっかり継承
500Xのボディタイプは、5ドアハッチバックのみです。復活版500と同じく、レトロかつキュートなデザインです。誰が見てもフィアットと分かるエクステリアは、過去の名車NUOVA500のDNAをしっかり継承しています。
500シリーズの前作である500Lよりもデザイン言語の解釈が慣れており、「SUV」と「キュート&ポップ」という相反する要素をうまく消化しています。この解釈を音楽で例えるなら、かつてのオリジナルを尊重したトリビュートバンド、もしくはうまくアレンジしたセルフカバーのようなものと言えましょうか。
デザインだけを見れば、ただ500の車高を上げ、5ドア化とSUVルックにしただけのモデルのようにも見えますが、ボディサイズは全長4,248mm×全幅1,796mm×全高1,600mmと大きく、500のイメージで対面すると、その大きさに驚くかも知れません。それもそのはずで、500がAセグメントであるのに対し、500XはCセグメントと、体格に大きく差があるのも頷けます。
インテリア
500よりもワンランク上の質感
インテリアは500と共通したイメージにまとまってまいますが、各パーツの質感はアップしています。ボディ同色パネルを配置したインパネや、シックな2トーンカラーのシートは掛け心地もよく、500Xが上級モデルであることが分かります。そしてドライバーズシートに腰掛けると、アイポイントが高いため見晴らしが良く、このクルマがクロスオーバーSUVであることにあらためて気づかされます。
500Xの美点のひとつは、優れたユーティリティです。大人気の500は確かにファニーでステキなクルマですが、ラゲッジ容量を中心としたユーティリティの低さは唯一の難点となっています。3ドアモデルのみであることに加え、ボディサイズが小さく仕方ない面もありますが、500Xはこのネガをしっかり改善しています。
リアシートはゆったりと広く、ラゲッジ容量も350Lを確保しています。さらに、リアシートを倒すことで荷室は1,000Lまで拡大でき、ライバル車種と比べて遜色ありません。ボディサイズが拡大し、上級移行したぶん、500Xは広いキャビンと素晴らしいインテリアを手に入れています。
パワートレイン
MultiJetディーゼルや、6MTも選択可能
イギリス仕様のパワーユニットは大きく分けて3種類です。ガソリンのダウンサイジングターボ「MultiAir」、クリーンディーゼルの「MultiJet」、バイフューエルの「E-TorQ」が設定されています。(以下、★は日本に正規輸入されるパワーユニット)
●ガソリン
- 直列4気筒 1.4Lターボ MultiAirII 140PS(★)
- 直列4気筒 1.4Lターボ MultiAirII 170PS(★)
ガソリンエンジンの排気量はどちらも1.4Lですが、チューニングが異なる2種類が用意されています。
●ディーゼル
- 直列4気筒 1.3Lクリーンディーゼル MultiJetII 95PS
- 直列4気筒 1.6Lクリーンディーゼル MultiJetII 120PS
- 直列4気筒 2.0Lクリーンディーゼル MultiJetII 140PS
ディーゼルエンジンは排気量が3種類設定されており、ディーゼルエンジンがメインであることが分かります。
●バイフューエル(ガソリン/LPG)
- 直列4気筒 1.6Lバイフューエル E-TorQ 110PS
バイフューエルエンジンは日本ではあまり馴染みがありませんが、ガソリンのほかに燃料代の安いLPGが併用できることから、欧州では一定の支持があり、フィアットでは多くの車種に採用されています。
トランスミッションは、コンベンショナルな6速MTに加え、2ペダルデュアルクラッチミッションのDCT、そしてフィアットでは初採用の9速ATが設定されています。
DCTはMultiAir 1.4L FFモデルのみに設定され、9速ATはMultiAir 1.4L、MultiJet 2.0LのAWDモデルのみに設定されています。ガソリンエンジンに2ペダルの組み合わせはどちらも日本に導入されています。
500Xの6速MTは、スパッと気持ちよくギアチェンジができる軽快なトランスミッションという評判です。日本仕様では導入されていませんが、ぜひ選択したいトランスミッションです。
足回り
FFでも本格的な悪路走破性
サスペンションはフロント/リア共にマクファーソンストラットを採用しています。駆動方式は基本的にFFがメインですが、AWDもラインナップされています。AWDはトルクオンデマンド式のものが採用されており、通常走行時は2WD(FF)に自動で切り替えることで燃費性能を向上させています。
シフトレバー近くに設置されたダイヤルで、Auto/Sport/Tractionの3つのドライブモードが設定可能です。Autoは燃費性能を重視した普段使いのモード、Sportはエンジンレスポンスやハンドリングをシャープに設定したモード、そしてTractionは悪路走破性を向上させたモードです。Tractionモードを選択すると、FFモデルでは「トラクションプラス」と呼ばれるシステムが起動し、細かくブレーキング制御することでAWDモデルのデフロックのような効果を発揮します。FFモデルでありながら、見かけだけのSUVにならず、高い走破性を実現しているのです。
そして500Xが採用する「スモールワイド4×4アーキテクチャー」プラットフォームは、軽量かつ高い剛性を確保しているため、一般的に重心が高くなりがちなSUVでも、コーナリング時のロールを抑えたスムーズなハンドリングに仕上がっています。
オフロード性能はアプローチアングルが21.3度、ディパーチャーアングルは30.1度と、SUVとして十分な性能を持っています。さらにオフロード性能を求めるユーザーには、500Xよりも走破性の高い、兄弟車のジープレネゲートをすすめたいというのがメーカーの思惑のようです。
タイヤ/ホイールは17インチと18インチがラインナップされていますが、見た目より乗り心地を重視するなら17インチの方が適しています。
グレードとオプション
日本未導入の高級グレードもラインナップ
イギリス仕様の500Xは、大きく分けて2WD系の「City Look」と、4WD系の「Off-Road look」の2つのモデルに分かれます。
City Lookのグレードは、ベースグレードのPOP、充実装備のPOP STAR、そして最上級グレードのLOUNGEの3つです。City Lookは、基本的に500をそのまま大きくしたような外観の、レトロさとキュートさを前面に押し出したモデルです。
Off-Road Lookは、ベースグレードのCROSSと充実装備のCROSS PLUSの2グレードで、バンパーにカンガルーバー風のデザイン処理が行われていたり、ホイールの装飾やボディのフィニッシュなども、名前の通り無骨なSUVの文法に則ったデザインが施されたモデルです。
各グレードに対して組み合わされるパワートレインは、カタログ情報をご参照ください。
日本に正規輸入されるのは、FFモデルはベーシックなPop Starと、充実装備のPop Star Plusの2種類の設定です。これはイギリス仕様のCity-Lookにあたり、POPとPOP STARに近いものです。AWDモデルはイギリス仕様のOff-Road Lookにあたり、Cross Pulsのみの設定です。どのモデルも1.4LガソリンエンジンのMultiAirで、トランスミッションは2ペダルのみでMTはなく、FFモデルはDCT、AWDモデルは9ATの設定です。
オプションには、18インチアルミホイールをはじめ、高級感のあるブラックレザーシートや、おしゃれなブラウンパイピングのタバコレザーシートなどが用意されています。パックオプションには、オートライトやヒーテッドドアミラー、バックカメラなどをセットにしたプレミアムパックなどがあります。ほかにも日本仕様には設定されないオプションもありますので、お気軽にお問い合わせください。
総評
フィアットとクライスラーの「幸せな結婚」から生まれた一台
キュートな外観から「見た目優先のSUV」のように見えますが、実際はそうではありません。ユーティリティ性の高いインテリアや、ジープ譲りのタフでしっかりとした悪路走破性など、極めてマジメに設計されたクロスオーバーSUVです。大ヒットしたフィアット 500も素晴らしいクルマですが、500のオーナーに家族が増えたり、アウトドアを楽しむために乗り換えるのにぴったりな、ファミリーユースに適したモデルです。
これは、フィアットがジープを有するクライスラーと手を組んだからこそ実現できたことです。500Xとジープ レネゲートという、見た目もイメージも全く違う兄弟車を、ここまでお互いの個性を保ったまま作り分けることができたのは、近年好調なFCAの実力なのかも知れません。それは、フィアット(500)とクライスラー(ジープ)が、それぞれのブランドに対して誇りと明確なポリシーを持っているからこそ、とも考えられます。お互いを知り、尊重し合うことが「成功のカギ」となるのは、本当の結婚生活と同じかも知れません。500Xはフィアットとクライスラーの「幸せな結婚」から生まれた一台と言えそうです。
フィアット 500X Off-Road Look コンセプト動画(約45秒)
フィアット 500Xのライバルは?
欧州市場で大人気のコンパクトクロスオーバーSUVの中から、ミニ カントリーマンと、日産 ジュークを500Xのライバルとして挙げます。
ミニ カントリーマンは、クロスオーバーSUVという概念をミニに持ち込んだモデルで、日本では「ミニ クロスオーバー」の名前で販売されています。カントリーマンは500Xと近い成り立ちにあり、クラシックモデルからトリビュートしたキュートなデザインや、SUV化にあたりボディサイズが大幅に大きくなったことも同じです。500Xとの大きな違いは、クロスオーバーは、3ドアのベース車と同じプラットフォームのままボディサイズの拡大とSUV化を行っているのに対して、500Xは500とは違う専用のプラットフォームを使用しており、ボディサイズを大きくしても違和感がなく、うまく上級モデル化を実現しています。
日産 ジュークは、コンパクトクロスオーバーSUVというジャンルを切り開いたパイオニア的なモデルです。コンパクトカーのプラットフォームをベースにSUV化したジュークは、その個性的なデザインも相まって欧州市場で大ヒットとなりました。ガソリン/ダウンサイジングターボ/ディーゼルのそれぞれが設定されていますが、パワーユニットのラインナップ自体は500Xより少なく、さらにデビューから大分時間が経っています。そしてキュートさを重視されるユーザーの場合、ジュークは比較対象にし辛いかも知れません。
フィアット 500Xのベストバイは?
日本に正規輸入されている500Xですが、やはり低燃費ディーゼルと、運転が楽しい6MTモデルの組み合わせは魅力的です。そこで、1.6L MultiJetII 120PSエンジンを積んだLOUNGEはいかがでしょうか。日本には導入されていない最上級グレードのLOUNGEに、パワーと低燃費を両立した1.6L ディーゼルエンジンの組み合わせです。駆動方式はFFですが、前述の通りFFモデルでも十分な走破性を持っているため、ハードな悪路走行をしない限りはまず問題ないでしょう。
さらに悪路走破性を重視されるユーザーにはOff-Road Look系モデルや、ランニングコストを重視する方には、日本未導入のバイフューエルの並行輸入も可能ですので、お気軽にお問合せください。
フィアット 500Xを並行輸入した場合の乗り出し価格は?
フィアット 500Xの英国での販売価格は、おすすめとなるFFのCity Look LOUNGEに1.6L MultiJetIIディーゼル、6MTの組み合わせで21,555ポンドです。日本に並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
500Xは日本にも正規輸入されていますが、2017年5月現在LOUNGEグレードやディーゼルエンジン搭載モデルは日本で販売されていないため、確実に入手するには並行輸入が現実的な方法です。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
スペック表
フィアット 500Xのサイズやカラーなどスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | フィアット 500X / Fiat 500X | |
---|---|---|
サンプルグレード | LOUNGE / CROSS PLUS | |
1.6 MultiJetII 16v 120 | 2.0 MultiJetII 16v 140 AWD | |
英国販売価格(£) | 21,555 | 26,470 |
ハンドル | 右 | |
ドア数 | 5 | |
乗車定員 | 5 | |
ボディカラー | アイボリー カプチーノベージュ シネマブラック(OP) アイスホワイト(OP) パッシオーネレッド(OP) マグネティックブロンズM(OP) アルジェントグレーM(OP) ジーンズブルーM(OP) ベネチアブルーM(OP) ファッショングレーM(OP) マットマグネティックブロンズSP(OP) アマルフィイエローSP(OP) アモーレレッドSP(OP) ※M:メタリック、SP:スペシャルカラー、OP:オプション |
|
全長(mm) | 4,248 | 4,273 |
ホイールベース(mm) | 2,570 | |
全幅(mm) | 1,796 | |
全高(mm) | 1,600 | 1,620 |
トレッド前/後(mm) | 1,545/1,545 | |
車両重量(kg) | 1,320 | 1,430 |
エンジン搭載位置 | フロント横置き | |
駆動輪 | 前 | 前後 |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC | |
16バルブ | ||
燃料 | 軽油 | |
吸気 | 高圧ターボ | |
燃料噴射 | 直噴 | |
排気量(cc) | 1,598 | 1,956 |
内径 x 行径(mm) | 79.5 x 80.5 | – x – |
圧縮比 | 16.5 | |
最高出力(kW/rpm) | 88 / 3,750 | 103 / 4,000 |
最大トルク(Nm/rpm) | 320 / 1,750 | 350 / 1,750 |
変速機 | MT | |
変速形式 | シングルクラッチ | |
段数 | 6 | |
最高速度(km/h) | 186 | 190 |
0-100km/h加速(秒) | 10.5 | 9.5 |
燃費(km/L) | 20.4 | 24.3 |
燃料タンク容量(L) | 45 | |
サスペンション前 | マクファーソン・ストラット | |
サスペンション後 | マクファーソン・ストラット | |
タイヤ前 | 225/45 R18 | |
タイヤ後 | 225/45 R18 | |
ブレーキ前 | ベンチレーテッドディスク | |
ブレーキ後 | ディスク | |
最小回転半径(m) | 5.5 | |
特記事項 | 1kWは約1.34hp(英馬力)、約1.36ps(仏馬力)です 一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります |
車両詳細画像ギャラリー
フィアット 500Xのカタログダウンロード
・フィアット 500X カタログ(要登録)(FIAT UK)
フィアット 500Xの現地法人・ディーラーリンク
・英国フィアット 500X City Lookのオフィシャルサイト(FIAT UK 500X City Look)
・英国フィアット 500X Off-Road Lookのオフィシャルサイト(FIAT UK 500X Off-Road Look)
・英国フィアット 500X City Lookのコンフィグレーター(FIAT UK 500X City Look)
・英国フィアット 500X Off-Road Lookのコンフィグレーター(FIAT UK 500X Off-Road Look)
おすすめ関連グッズ
今回紹介するのは、「FIAT 500X (CARTOPMOOK ニューカー速報プラス)」です。500Xの日本正規導入開始時に発刊されたムックで、500Xのコンセプトやメカニカル、そしてデザインなどをインタビューを交えながら徹底解説しています。このムックには、兄弟車のジープレネゲート版もありますので、合わせて読み比べれ見ると両車の性格の違いや、開発の共通性が読み取れて面白いのではないでしょうか。
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