メルセデス・ベンツ Gクラスは本格的なクロカン(クロスカントリー車)として、また1979年の登場当時のデザインを21世紀に伝える稀有なロングライフモデルとして人気を集めてきました。しかし2017年11月、メルセデス・ベンツはついにGクラスのモデルチェンジを行うことを来年発表、同時に3種類の限定車をヨーロッパ限定でリリースすることを決定しました。
今回はモデルチェンジを控えたGクラスについて解説、G350dプロフェッショナルリミテッドエディションをはじめとした3種類の限定車の詳細情報、さらに日本でこれらの限定車に乗るための並行輸入情報も掲載します。
この記事の目次
モデル概要
1993年にメルセデス・ベンツのモデル名が再編される以前はゲレンデヴァーゲン(ゲレンデワーゲン)、また欧米ではGワーゲンとも呼ばれていたGクラス。このモデルは日本では軍用車の民生仕様、あるいはNATOからリクエストを受けて開発されたモデルとして紹介されることもありますが、事実はやや異なります。
実際にこのモデルをリクエストしたのは、1970年代にダイムラー・ベンツ社(当時)の大株主だったモハンマド・レザー・パフラヴィー国王(パーレビ国王とも呼ばれています)でした。世界的なカーマニアとしても知られたパーレビ国王はイランの国境巡視、あるいは狩猟などの民生用途も想定された万能4輪駆動車の開発を希望、この命題に対して戦後しばらく4輪駆動車の開発から距離を置いていたメルセデス・ベンツは、オーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフと協業体制をとります。サハラ砂漠や北極圏など過酷な環境下でのテスト走行を含む開発は順調に進み、1977年には量産化に向けて合弁会社GfGが設立され、ついに1979年にゲレンデヴァーゲンはデリバリーの体制が整いました。ところが同年イラン革命が起こり、20,000台の旧イランからのバックオーダーが宙に浮いてしまったのです。幸いにもゲレンデヴァーゲンはその基本性能の高さや取り回しの良さから、ドイツ国境巡視隊での採用を皮切りに、フォークランド紛争に備えるアルゼンチン軍からの受注、そしてNATO、ノルウェー軍、ベルギー軍、ギリシャ軍などから受注し、2017年現在は世界44ヶ国の軍隊で採用されているとも言われています。
また、1979年からは一般向けのゲレンデヴァーゲンの販売も開始されました。こちらは2ドアのショートと4ドアのロングの2種類のワゴンボディ、そしてショートボディベースのカブリオレが設定され、商用としてワゴンボディにはリアウィンドウをパネルとした仕様が設定されるなど、色々な需要に対応するためのバリエーションを最初から揃えていたことが伺えます。ちなみにこちらはシュタイアー・ダイムラー・プフの自社ブランドからプフ Gとしてもラインアップされ、一部地域ではプフブランドで販売されました。このようにゲレンデヴァーゲンは必ずしも軍用前提で作られたものが民生品として発展したわけではなく、あらかじめ万能車として開発されていたことが伺えます。
メルセデス・ベンツのファンに限らずクルマ好きならばベンツ各モデルの世代を示す呼び方として公然と知られている開発コードは、当初軍用/一般向けいずれもW460が割り当てられました。パワートレインは直列4気筒・6気筒のガソリン、あるいは直列4気筒・5気筒のディーゼルが設定され、パートタイム式の4WDが採用されました。しかし1980年代にアウディ クワトロがフルタイム4WDという新たな世界を開拓し、このようなクロスカントリー車が悪路走破を必要としていないオーナーが徐々に選ぶようになります。そのため1990年モデルからは一般向けモデルはフルタイム4WDとオーバーフェンダーを採用したW463にモデルチェンジ、パートタイム4WDを継承するW460は1992年まで継続されましたがW461へのマイナーチェンジが行われました。
W463は徐々に出力の大きなエンジンを搭載するようになり、特にGクラスへのモデル名変更以降は高級化が進みます。一方W460の流れを汲むW461は断続的に限定モデルとして一般販売が行われましたが、2001年にはW461の生産は終了しました。この頃になるとW463の生産中止の可能性が徐々に話題に挙がるようになり、実際にメルセデス・ベンツはGクラスの置き換えを意図してGLクラス(X164)を開発・販売しますが、市場が求めたのは無骨なデザインを持つ既存のGクラスでした。こうしてGクラスには本来搭載を意図していなかったV型8気筒エンジン、はてはV型12気筒エンジンまでもが搭載されるようになり、そのコンセプトを大きく転換させていきます。一方、W460/461のようなモデルを求める顧客に対しては、メカニズムはフルタイム4WDのW463ながら、敢えて装備を簡素化した仕様を”プロフェッショナル”と銘打って断続的な限定販売を行いました。
こうしてW461の生産終了から16年経った2017年、遂にW463も生産終了がアナウンスされることになるのですが、ここまでの流れを汲むと、最終モデルとしてラインアップされた各限定車それぞれが意図するコンセプト、そしてその魅力を一層感じられるかもしれません。
G350d Professional Limited Edition/G350d プロフェッショナル リミテッド エディション
1990年代にはW461をベースにラインアップされたプロフェッショナル仕様。2000年代以降はW463がベースとなりメカニズムの面では通常のGクラスと変わらないものの、このモデルが本来持つ悪路走破性を最大限に発揮できるモデルです。特に2016年に限定販売されたG350d プロフェッショナルは久しぶりのプロフェッショナル仕様ということで大きな話題を呼びましたが完売も早く、買い逃した方にとっては待望の追加生産という意味合いも持ちます。
エクステリアはクロームやメッキを廃して樹脂やスチールを多用、ルーフにはヘビーデューティーな固定式キャリアを持ち、荷物を満載できます。ナンバープレートはルーフの高さまで移設され、本来の位置には牽引キャリアが搭載されます。ボディカラーはチャイナブルーのみの設定、これはW460の雰囲気を今日に伝えるものです。
インテリアはチェック柄のファブリックシートを採用、多機能情報ディスプレイは敢えて採用されていません。また窓も近年は珍しく、むしろコストもかかると言われるものの、圧倒的な信頼性を持つ手動式を採用しています。
エンジンは日本仕様と同じ3.0LのV6ターボディーゼル”ブルーテック”を採用。最高出力245馬力は1990年代のガソリン仕様のG320を凌ぎ、また最大トルクは圧倒的な600Nmを誇ります。
販売台数はW463にちなみ、463台です。
G350d Limited Edition/G350d リミテッド エディション
こちらは通常のG350dをベースに数々の特別装備を加えたモデルです。エクステリアは19インチのAMGのホイールが最大の見所、ボディカラーはモカブラックのみの設定です。インテリアはサドルブラウンのナッパレザーシートを採用、またステアリングもAMGのものが採用されています。明るい陽光を取り込めるサンルーフも装備されています。パワートレインはG350d プロフェッショナル同様に600Nmのブルーテックエンジンを採用しています。
このモデルは2010年代のスタンダードモデルとしてラインアップされていたG350dの究極系、あるいはモデルチェンジ当時のW463の正統進化系という解釈も可能かもしれません。また、リミテッド化による追加装備の数々はメルセデス・ベンツの最終限定車としては王道の構成です。古くからのメルセデスのファンならばニヤリとしてしまうところもあるかもしれません。
販売台数はこちらも463台です。
G500 Limited Edition/G500 リミテッド エディション
2000年代以降、Gクラスの顔となったV8ガソリンエンジン搭載モデルのW463の最終限定車がこのモデルです。G500というモデル名は2008年まで日本仕様でも見ることが出来ましたが、2009年に排気量が5.0Lから5.5Lに拡大された際に日本仕様はG550を名乗るようになったのに対して、ドイツをはじめとした多くの仕向地では引き続きG500の名前で販売されてきました。2015年にダウンサイジングの流れからエンジンは4.0L V8ツインターボに変更されましたが、ドイツではG500、日本ではG550の名前が継承されました。もっとも排気量が小さくなったとはいえ、最高出力は421馬力、最大トルクは610Nmに達し、いずれも自然吸気5.5L時代のスペックを上回ります。
もっとも、このG500 リミテッドはG350d リミテッドとは対象的なコンセプトを持っており、プラチナマグナのボディカラーを基調に細部の加飾はマグネットブラックに、またインテリアもブラックのナッパレザーを採用するなど、クリーンで落ち着いたイメージが与えられています。
販売台数は上の2台同様に463台です。
W463型Gクラス最終限定モデルの並行輸入情報
日本での販売が予定されていない上記3モデルですが、並行輸入を行えば日本で所有することができます。一例としてコアカーズを運営する並行輸入者販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したリーズナブルな輸入販売を行っています。各モデルの価格についてはお問い合わせください。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
G350d プロフェッショナル の中古車情報
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
メルセデス・ベンツ ドイツ Gクラス公式ページ (Mercedes-Benz De G-Klasse)
※本記事は2017年11月13日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。