「並行輸入車」というキーワードはコアカーズをはじめ、多くの自動車関連メディアでしばしば採り上げられています。しかし、並行輸入車とは何なのか、わかりやすい説明はあまり見かけません。
この記事では、並行輸入車とは一体何なのか、自動車関係の各団体や機関による位置づけや具体的なケースを徹底解説します。
JAIAによる「並行輸入車」の見解
JAIAこと日本自動車輸入組合は、正規輸入業者(海外自動車メーカーの日本法人、海外自動車メーカーと輸入契約を結んだ代理店、一部の日本の自動車メーカー)が参加する業界団体です。JAIAは並行輸入車について以下のように説明しています。
輸入形態
自動車の輸入形態は、①海外自動車メーカーから直接輸入するもの(正規輸入)と②海外のディーラー等を経て輸入するもの(並行輸入)の二つに分けることができます。
正規輸入は新車だけですが、並行輸入には中古車も含まれます。
(出展:日本の輸入車市場 | JAIA)
これはとてもシンプルで、多くの人にとって分かりやすく、自動車雑誌などで言及される並行輸入車は基本的にはこの意味で使われています。
とはいえ、並行輸入車について言及している組織はJAIA以外にも存在します。その代表的な一例が次に紹介するNALTECです。
NALTECによる「並行輸入車」の見解
NALTECこと自動車技術総合機構は、国土交通省所轄の独立行政法人で、車検制度の調査や審査、リコール制度の検証を行なっています。元は自動車検査独立法人と交通安全環境研究所という2つの団体でしたが、2016年に統合されて現在の機構になりました。自動車技術総合機構は並行輸入車について以下のように説明しています。
Q1. 「並行輸入自動車」とは何ですか?
A.
日本で未登録の自動車を個人で日本に輸入した場合は、原則として「並行輸入自動車」として取り扱われます。
また輸入自動車のうち、自動車製作者又は同製作者から自動車を購入する契約を締結して日本への輸出を業としている者が国土交通大臣に対して自動車の型式ごとに安全性、環境性などを申請又は届出し、これを認められた場合は、これらの自動車を「型式指定自動車」、「新型届出自動車」又は「輸入車特別取扱自動車」(いわゆる「ディーラー車」)として取り扱っています。
(出典:よくある質問(FAQ):並行輸入車関係)
これは、並行輸入自動車とは何かという質問に対して「ディーラー車」についても説明してしまっているため、やや分かり辛いところがあります。しかし並行輸入自動車を並行輸入車、ディーラー車を正規輸入車として読み替えると
- 正規輸入車とは形式指定自動車、新型届出自動車、輸入車特別取扱自動車
- 並行輸入車とは上記3つに該当しないもの
と幾分シンプルになります。
なお、実際に並行輸入車を日本で登録する場合は「並行輸入自動車届出書」という公的な書類の作成・届け出が必要となりますが、この際の並行輸入自動車とは自動車技術総合機構の見解に一致します。
具体的ケース:正規輸入車?並行輸入車?
JAIAとNALTEC(自動車技術総合機構)の見解を比較すると、前者は流通経路に、後者は法的・公的な枠組みで並行輸入車を分類していることが分かります。この切り口が要因となり、実際の輸入車を正規輸入車/並行輸入車に分類すると、自動車技術総合機構の方が並行輸入車に該当するケースが僅かに多くなります。
たとえば2012年、ルノー・ジャポンにより60台限定で輸入したメガーヌ エステート GT(左ハンドル6MT仕様)は日本法人が輸入・販売したにも関わらず「並行輸入車だったらしい」ことが当時話題になりました。
これは導入車種が少なかったため「指定形式自動車」「輸入車特別取扱自動車」ではなく「並行輸入自動車届出書」によって輸入手続きが進められたことを意味します。一方でこのモデルの流通経路は正規輸入車でした。
コアカーズ内での「並行輸入車」の位置づけ
今回解説したJAIAとNALTEC(自動車技術総合機構)の並行輸入車に関する見解は代表的な2例ですが、これらとは異なる見解も存在します。たとえば並行輸入の際の手続きや作業の全て/一部を個人が行うものを、個人輸入や輸入代行として並行輸入車からさらに区別する場合があります。
コアカーズの各記事で言及している「並行輸入車」は基本的にJAIAの見解に準じます。また、この位置づけに基づいて並行輸入車のメリットやデメリットの解説記事も掲載しています。あわせてご確認ください。
※本記事は2017年5月19日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。