アウディ TT(8S)は、日本でも人気の高いアウディのコンパクト・スポーツカーです。
この記事では、日本未導入の6速マニュアル・トランスミッションやディーゼルエンジンについて主に解説しながら、それらの仕様を日本に並行輸入する方法についても触れていきます。
この記事の目次
モデル概要
イギリスのマン島で1907年から現在まで開催されている、マン島TT(Tourist Trophy)レースをその名の由来とするアウディ TTは、2014年のジュネーブモーターショーで現行型となる第3世代がデビューしました。この8S型と呼ばれる第3世代からフォルクスワーゲングループのMQBプラットフォームを採用し、アウディ先進の技術を投入することで走りに一層の磨きをかけています。
日本で販売されているのは、1.8L・7速Sトロニックと2.0L quattro・6速Sトロニックのガソリンエンジン仕様ですが、イギリスでは日本にはない6速マニュアルやディーゼルエンジンが用意されています。2017年のイギリス仕様は、クーペ/ロードスターともに「Sport」「S line」「Black Edition」と3つのグレードで構成されており、全グレードで選べるエンジンとトランスミッションの組み合わせは共通で、違いは主に装備の面となっています。
ハイライト
エクステリア
知性と獰猛さを併せ持つシャープなエクステリア
1998年に登場した初代は丸みを帯びたフォルムでしたが、代を重ねるにつれてスポーツカーらしいシャープな印象へと生まれ変わりました。最新アウディ車共通の意匠である6角形の大型フロントグリルや、シャープなヘッドライトは猛禽類を思わせるアグレッシブさとインテリジェンスを感じさせます。4,180mmというコンパクトな全長に、全高1,380mm・全幅1,830mmとワイド&ローなスタイルは、ひと目でアウディTTと分かるデザインとなっています。
イギリス仕様では、18インチアルミホイール・LEDデイライト・キセノンヘッドライト・リトラクタブルリアスポイラーなどを装備する「Sport」が標準グレードとなります。「S line」は19インチアルミ、LEDヘッドライト、専用のフロントバンパー、サイドシル、専用カラーのリアディフューザー、エンブレムなどが追加されます。「Black Edition」ではS lineと異なるデザインの19インチホイールとなり、フロントグリルとバンパーにブラックハイライトが加えられ、クーペではプライバシーガラス、ロードスターではウインドディフレクターが追加装備されます。マトリクスLEDヘッドライトはS lineとBlack Editionで£945の有料オプションとして用意されています。
インテリア
スポーツカーらしいシンプルな機能美と高級感のあるインテリア
現行アウディ TT クーペ/ロードスターのインテリアは、無駄を排したスポーツカーの雰囲気とアウディらしい高級感を併せ持ったものになっています。ダッシュボード中央に3つ並んだエアアウトレットは、3連メーターを彷彿とさせながらダイヤル部にそれぞれ独立した機能を与えたもので、アウディ R8と共通の意匠になっています。シートは全車アルカンターラとレザーコンビのスポーツシートで、ドアトリムの内側もアルカンターラが使われています。S lineとBlack Editionは「S」の文字がエンボス加工され、4way電動ランバーサポート機能がつくシートになります。バーチャルコックピットは全車「Technology Pack」というパッケージオプションです。
グレードによるインテリアの違いは、アルミの加飾がS lineとBlack Editionは光沢を抑えた仕様になり、ステアリングに「S line」バッジが付くほか、アルミ加飾がSportより多くあしらわれ、アルミのスポーツペダルとなるなど細かい部分に手が加えられます。また、Black Editionは標準でBang & Olufsen サウンドシステムを搭載します。
パワートレイン
日本にはないマニュアルトランスミッションとディーゼルエンジン
日本仕様とイギリス仕様の違いは、6速MT(マニュアルトランスミッション)とディーゼルターボエンジンが用意されていること。日本で販売されているアウディ TT(8S)は、1.8TFSI・7速Sトロニックと2.0TFSI quattro・6速Sトロニック、2つの選択肢に限られます。ロードスターに至っては後者の一択です。
これに対してイギリス仕様では、1.8TFSI・6速MT、2.0TFSI・6速MT、2.0TFSI・6速Sトロニック、2.0TFSI quattro・6速Sトロニックとガソリン4種、さらに2.0TDI ultra・6速MT、2.0TDI quattro・6速Sトロニックと2種のディーゼルエンジンも用意され、クーペ/ロードスター双方の全グレードで好みのエンジンとトランスミッションの組み合わせを選択できます。
ガソリンエンジンの出力は日本仕様と同じで、ディーゼルは直列4気筒2.0Lターボ・184ps/3,500-4,000rpm、380Nm/1,750-3,250というスペックです。0-100km/h加速はultra(FWD)が7.3秒、quattroが7.0秒、最高速はそれぞれ236km/h・230km/h、欧州複合基準の燃費は同じく20.83km/L・17.85km/Lとなっています。
アウディのSトロニックはデュアルクラッチ・トランスミッションのセミオートマで、奇数段と偶数段を別々のクラッチ板が担当してマニュアル操作よりはるかに素早いシフトチェンジを行い、優れた運動性能を発揮するものです。quattroは1980年の登場以来アウディが熟成を重ねてきたAWDで、走行状況に応じて常に最適なトルク配分を実現しています。
サスペンション
走行モードが選べるアウディ・ドライブセレクト
アウディ TTは、標準サスペンションでAuto・Comfort・Dynamic・EfficiencyとIndividual mode(カスタム)の5つのモードが選べるアウディ・ドライブセレクトを装備しています。エンジン音や回転数、変速タイミング(Sトロニックのみ)、ステアリングなどが選択したモード別に統合制御され、ドライバーの好みや気分によって使い分けることができます。Dynamicモードが最もスポーツカーらしさを感じることができ、Efficiencyモードでは燃費効率を追求するなどそれぞれに特徴があります。
イギリス仕様のS lineとBlack Editionは、Sportより10mm車高が下がるS lineスポーツサスペンションを標準装備します。
参考スペック
アウディ TT クーペ S line 1.8TFSI 6速MT(180ps)
寸 法 ▶︎全長x全幅x全高 = 4,177 x 1,832 x 1,343 mm
ホイールベース:2,505mm トレッド:前/後 1,572 mm/ 1,552 mm
エンジン▶︎1.8L 直列4気筒ガソリンターボ
1,798cc 1830ps/5,100-6,200rpm 250Nm/1,250-5,000rpm
駆動方式▶︎FWD(前輪駆動)6速マニュアルトランスミッション
懸架装置▶︎前:標準サスペンション
後:標準サスペンション
ブレーキ▶︎前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
タイヤ ▶︎前:245/35 R19 後:245/35 R19
燃料容量▶︎50L 車両重量:1,210kg 最高速度:240km/h 0-100km/h加速:6.9 秒
燃 費 ▶︎16.66km/L(欧州複合基準) -m/L(JC08モード日本仕様参考値)
価 格 ▶︎30,165ポンド(イギリス仕様車)
※その他の仕様のスペック詳細はカタログ情報(関連リンク)をご覧ください
ライバルモデル
アウディ TT クーペ/ロードスターのライバルとしては、メルセデスベンツ SLCクラス、BMW Z4、ポルシェ ボクスター/ケイマン、マツダ ロードスター、フィアット/アバルト 124 スパイダーなどが挙げられます。
メルセデスベンツ SLCクラス(R172)は、先代のSLKクラスの大幅改良モデルとして車名を変更して2016年にデビューしました。電動リトラクタブル・ハードトップを採用し、1台でクーペとカブリオレの2通りの楽しみが得られます。イギリス仕様には日本で販売されていない6速MTが存在します。
BMW Z4(E89)も電動リトラクタブル・ハードトップを装備したクーペカブリオレモデルで、2016年で販売を終了しています。数年後にデビューを予定している次期Z4は、ソフトトップを採用するという噂があります。次期型はより純粋なロードスターに生まれ変わるかもしれません。
ポルシェ ボクスター/ケイマンは、718型からそれぞれ718ボクスター、718ケイマンと車名が変更されています。718型からエンジンパワーの差を設けなくなったことから、ボクスターの方が上位モデルという位置づけになりました。水平対向4気筒ターボエンジンは2.0Lと2.5Lにダウンサイジングされましたが、パワーはそれぞれ300ps・350ps。2.5Lを積むSグレードは、3.4Lエンジンを搭載した先代GTSを上回る出力が与えられています。
世界的に人気のマツダ ロードスターは、現在4代目となるND型となっています。ダウンサイズされた1.5Lエンジン、軽量コンパクトになったボディ、気持ちの良いハンドリングが得られる足回りなど、初代から貫かれる人馬一体感はさらに進化を遂げています。電動格納式ルーフのロードスター RF (リトラクタブル ファストバック)は専用チューニングされた2.0Lエンジンとなっています。
フィアット/アバルト 124 スパイダーは、マツダ ロードスターがベースのオープンスポーツで、日本ではフィアット 124 スパイダーをチューンアップしたアバルト 124 スパイダーが正規販売されています。興味深いことに、アバルト 124 スパイダーは広島県のマツダ宇品第1工場で生産されているため日本では国産車の扱いになります。ロードスターがベースとは言え、インテリアを除いてエクステリアやエンジン、ミッションなどは別物で、イタリア車らしい乗り味が楽しめます。
どの車も独自の特徴がありますが、アウディ TT クーペ/ロードスターはやはりそのデザインが一番の魅力ではないでしょうか。アウディ R8を彷彿とさせるアグレッシブなスタイルは、スペックだけでは計り知れない独特な雰囲気を放っています。また、ライバルとしてご紹介した車はすべて後輪駆動。TTはFWDかAWDを選べるところも他車とは異なるところです。
バイヤーズガイド
コンパクトなFWDスポーツの軽快な走りを堪能したい方には、アウディ TT クーペ/ロードスター S line 1.8TFSI 6速MTがおすすめです。S lineは19インチアルミホイールや、エアインテークが大きくシャープな形状のフロントバンパー、アルミペダルなどスポーティな雰囲気が楽しめます。1.8TFSIエンジンはわずか1,250回転から最大トルクを発揮するので、クラッチ操作も気を使いません。
また、ディーゼルでコンパクトスポーツを味わってみたい方には、380Nmという大トルクが持ち味の2.0TDIエンジンをおすすめします。こちらはFWDなら6速マニュアル、quattroなら6速Sトロニックとなります。
2017年現在のアウディ TT 6速MT仕様・ディーゼル仕様 日本導入の可能性
2015年の日本デビューから2年以上経過しましたが、今のところ6MTやディーゼルエンジンが導入される予定はないようです。Sトロニックでも2ペダルでギアチェンジができますし、メルセデスやBMWもこのクラスにマニュアルを導入しないことから、今後も期待は薄そうです。また、日本ではスポーツカーとディーゼルエンジンの組み合わせはイメージしづらいため、こちらも導入の可能性は低いでしょう。
並行輸入という選択肢
日本市場に正規輸入されていないモデルも、並行輸入を行えば日本で所有できます。一例としてコアカーズを運営する並行輸入車販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したプアウディ TT クーペ/ロードスター S line 1.8TFSI (180ps – 6速MT)の乗り出し価格を案内しています。下記表では最新の為替レートに基づいた価格を表示しています。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
現地法人公式サイト・コンフィギュレーター
- アウディ 英国 TT クーペのコンフィギュレーター(AUDI UK TT COUPE)
- アウディ 英国 TT ロードスターのコンフィギュレーター(AUDI UK TT ROADSTER)
※本記事は2017年12月22日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。