アウディ S3セダンは、絶妙なサイズ感とスポーティなルックスが日本でも人気のCセグメントモデルです。そんなS3セダンの欧州仕様には、日本仕様と異なる魅力がいくつもあります。この記事ではそれらの違いを、主に日本と同じ右ハンドルのイギリス仕様(イギリス販売名はS3 サルーン)にスポットを当てて解説するとともに、それらの欧州仕様を日本に並行輸入する方法についても解説します。
この記事の目次
モデル概要
MQBプラットフォームを採用した第3世代のアウディ A3は、日本で販売されているスポーツバックとセダンのほか、ヨーロッパでは3ドアやカブリオレも存在します。このうちA3セダンをベースにチューニングを施したモデルがS3セダンで、イギリスではS3サルーン(Saloon)と呼ばれています。また同様にA3セダンをベースとしたRS3セダンもあり、こちらは2.5L 直列5気筒ターボエンジンを搭載し、さらにハードなチューニングが施されたモデルです。
2014年にデビューしたアウディ S3セダンは、2017年にマイナーチェンジを受けました。日本では、このマイナーチェンジを機にそれまでの285psから290psへとパワーアップしましたが、ヨーロッパ仕様は310psに引き上げられました。この記事でご紹介するイギリス仕様の”S3 サルーン”はこの310ps版で、日本にはない6速マニュアルや、「Black Edition」というグレードも存在しています。
ハイライト
エクステリア
派手すぎずシャープで知的なエクステリアデザイン
現行アウディ S3セダンのエクステリアは、近年のアウディ車に共通するコンセプトに基づき、大きな六角形のフロントグリルや鋭角な印象のヘッドライト、ドアパネルに刻まれるキャラクターラインなど、直線を基調としたシャープで知的なデザインが施されています。
日本仕様のアウディ S3セダンとイギリス仕様のS3サルーンの異なる点は、日本仕様が18インチホイールであるのに対し、イギリス仕様は19インチでよりスポーティなデザインを採用していることです。また日本にないS3サルーン Black Editionは、フロントグリルとグリルを囲むトリム、ウィンドウトリム、リアディフューザー、ドアミラーがブラックアウト塗装され、ホイールがチタニウム(グレー)カラーのウイングデザインとなり、より迫力を増しています。なお、LEDヘッドライトは日本と同じく標準装備で、イギリス仕様では先進のマトリクスLEDヘッドライトもオプション装着が可能です。
インテリア
高性能コンパクトセダンに相応しい緻密かつスポーティな空間
アウディ S3セダン/サルーンのインテリアは、コンパクトセダンの域を超えた高級感と、随所に施されたスポーティな演出が同居する満足度の高いものに仕上がっています。レッドステッチが施されたホールド性の高いナッパレザーのスポーツシートに腰を下ろせば、この車が只者ではないことに気がつかされます。フラットボトムのレザーステアリングには、誇らしげに「S」のバッジが添えられています。Sトロニック(2ペダルのセミオートマ)を選択した場合は、ステアリング奥のパドルで任意のギアにシフトチェンジが可能です。
日本仕様のアウディ S3セダンと異なる点は、アウディ・バーチャルコックピットやMMIコントローラーがセットオプションになること、Black EditionにはプライバシーガラスやBang & Olufsenのオーディオが標準装備になることが挙げられます。
パワートレイン
6速マニュアルも用意された日本仕様と異なる310ps/400Nmのエンジン
アウディ S3サルーン(イギリス仕様)が搭載するエンジンは、直列4気筒・2.0Lターボの2.0TFSI。前述の通り、日本仕様のアウディ S3セダンと比べ、20ps/20Nmアップの310ps/400Nmとなっています。昨今の高性能モデルと比較すると控えめな印象を抱くかもしれませんが、アウディ S3サルーンが目指しているのは、日常と非日常を1台でこなすことです。
ピークパワーの発生回転数は 5,500~6,500回転と、高回転までエンジンを回して「攻める」楽しみを味わえます。それと同時に、最大トルクを2,000~5,400回転という非常に広い回転域で発揮し、どの速度域からでもアクセルひと踏みで気持ち良い加速が得られるエンジン特性も持ち合わせています。駆動方式は4WDのquattroシステム。前後に100%までトルクを振り分けられるよう改良されたシステムで、走行状況と路面コンディションに合わせて最適なトルク配分を実現。高い次元で安全性と走行性能を両立しています。
イギリス仕様のS3サルーンには、7速Sトロニック・デュアルクラッチオートマティックと6速マニュアルが用意されています。7速Sトロニックはマイナーチェンジ前の6速Sトロニックの後継トランスミッションで、0-100km/hのタイムが0.3秒短縮されています。日本仕様のアウディ S3セダンではこのSトロニックしか選べませんが、自分で車を操る感覚をダイレクトに味わえる6速マニュアルが用意されている点もイギリス仕様を含む欧州仕様の特徴です。
サスペンション
アウディ・マグネティックライドを標準装備
イギリス仕様のアウディ S3サルーンは、日本のS3セダンではオプションとなっているアウディ・マグネティック・ライドを標準装備しています。このアダプティブ・ダンパーは、「Comfort」「Dynamic」「Auto」の3つのモードを備えており、1,000分の1秒単位で減衰力を調整することで車の姿勢を制御するシステムです。
Comfortモードでは路面の凹凸や段差による衝撃をうまく吸収し、同時にロードノイズも抑えることで310psの車とは思えないほど柔らかく快適な乗り心地となります。Dynamicモードはスポーツ性を重視したセッティングとなり、ステアリングの応答性や重みも連動してエキサイティングなドライビングを楽しめます。このマグネティック・ライドが組み合わされるサスペンションは、標準のA3と比べ15mmダウンしたスポーツサスペンションとなっています。
参考スペック
アウディ S3サルーン Black Edition 2.0TFSI quattro 7速Sトロニック(310ps)
寸 法 ▶︎全長x全幅x全高 = 4,470 x 1,795 x 1,380 mm
ホイールベース:2,630mm トレッド:前/後 1,545 mm/ 1,515 mm
エンジン▶︎2.0L 直列4気筒直噴ガソリンターボ
1,984cc 310ps/5,500-6,500rpm 400Nm/2,000-5,400rpm
駆動方式▶︎4WD 7速Sトロニック・デュアルクラッチオートマティック
懸架装置▶︎前:スポーツサスペンション
後:スポーツサスペンション
ブレーキ▶︎前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
タイヤ ▶︎前:235/35 R19 後:235/35 R19
燃料容量▶︎55L 車両重量:1,470kg 最高速度:249km/h 0-100km/h加速:4.6 秒
燃 費 ▶︎18.5km/L(欧州複合基準) -m/L(JC08モード日本仕様参考値)
価 格 ▶︎39,220ポンド(イギリス仕様車)
※その他の仕様のスペック詳細はカタログ情報(関連リンク)をご覧ください
ライバルモデル
アウディ S3セダン/サルーンはCセグメントのコンパクトセダンですが、このクラスで高性能を誇るモデルと言えば、同じアウディのRS3、メルセデスベンツ AMG CLA45、スバル WRXなどが挙げられます。
日本でも発売予定のアウディ RS3サルーン(日本ではRS3セダン)は、S3とほぼ同じコンパクトなボディに400ps/5,850-7,000rpm、480Nm/1,700-5,850rpmを発揮する2.5TFSIエンジンを搭載。quattroシステム+7速Sトロニックで0-100km/h加速は4.1秒という俊足を誇ります。
AMG CLA45 4マチックは、全長4,670mmのボディに381ps/6,000rpm、475Nm/2,250-5,000rpmを発揮する2.0L直4ガソリンターボエンジンを搭載し、4WD+7速ATで、こちらも0-100km/h加速を4.1秒でこなします。ひとつのエンジンにつき、ひとりの熟練した職人が最後まで手作業でエンジンを組み上げる、AMGのクラフトマンシップが特徴のスペシャリティカーです。
スバル WRX STIは、日本のスポーツセダンを代表するモデルです。2.0L水平対向ターボ+4WD+6速MTで308ps/6,400rpm、422Nm/4,400rpm、0-100km/h加速は4.7秒というスペックです。イージーに高スペックを味わいたい方向けには、300ps/400NmでCVTのWRX S4も用意されています。
ボディサイズとスペックだけで比較すると、直接的にライバルと言えるのはスバル WRXくらいですが、アウディ S3セダンはプレミアム性でWRXを大きく上回ります。310ps/400Nmという性能はもちろん文句なく高性能なのですが、「ハイパワー過ぎない」という絶妙なポジションに位置するのがアウディ S3サルーンなのです。RS3やCLA45が「非日常の刺激」だとすれば、S3サルーンは「日常と非日常を自由に行き来できる」稀有な1台と言えるでしょう。
バイヤーズガイド
日本のアウディ S3セダンと異なるイギリス仕様のアウディ S3サルーンを検討するならば、Black Editionをおすすめします。ホイールサイズの違いだけでなく、随所がブラックアウトされたエクステリアは、日本仕様のS3セダンに乗っている方はもちろん、車好きな方を振り向かせる魅力を持っています。トランスミッションは、イージーに楽しみたい方は7速Sトロニック、ダイレクトな操縦感を求める方には6速マニュアルをおすすめします。
Sトロニックを選択する方におすすめのオプションは、ドライバー・アシスタンス・パックです。アダプティブ・クルーズコントロール、トラフィックジャム・アシスト、アクティブレーンアシスト、アウディ・サイドアシスト、ハイビームアシストなど安全性や利便性を向上する機能がセットになっており、お得感があります。
2018年現在のアウディ S3サルーン 310ps仕様 日本導入の可能性
日本仕様のアウディ S3セダンが290ps仕様で、ヨーロッパ仕様が310psになっている理由は公式にはアナウンスされていません。ただ、この出力は北米仕様と同一です。振り返れば有史以来、欧州車の日本仕様車はナンバープレートの形状が同じ北米仕様車に準じるケースが多くありました。理由は排気ガス規制だったり、北米撤退を機に在庫を日本に持ってきたり、日本の最高速度事情やドライバーの嗜好が欧州より北米に近いとマーケティング的に判断されたりと様々でした。
アウディジャパンがアウディS3セダン日本仕様のスペックを欧州仕様準拠で販売することは、技術的には不可能ではないでしょう。しかし、2018年に日本でも発売されるRS3セダンや、クラスが上のアウディ S4と分かりやすく差別化が図れることから、290ps仕様のまま留めておいた方が当面販売面で有利になると考えられます。また、あまりスペックの差がないと上級モデルが売りづらくなる可能性がありますし、290psでもS3セダンが他に類を見ない独自のポジションに位置するモデルであることに変わりはありません。
このような理由から、310ps仕様のアウディ S3サルーンが日本に導入される可能性は残念ながら低いでしょう。加えて、日本の昨今のドライバー事情を鑑みると、トランスミッションに6速マニュアルが設定される可能性も絶望的だと考えられます。
並行輸入という選択肢
日本仕様のS3 セダンに飽き足らないエンスージアストにも並行輸入という選択肢が残されています。一例としてコアカーズを運営する並行輸入車販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したアウディ S3サルーン Black Edition 2.0TFSI quattro(310ps – 7速Sトロニック)の乗り出し価格を案内しています。下記表では最新の為替レートに基づいた価格を表示しています。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
現地法人公式サイト・コンフィギュレーター
・アウディ 英国 S3 セダンのオフィシャルサイト(AUDI UK S3 SALOON)
・アウディ 英国 S3 セダンのコンフィギュレーター(AUDI UK S3 SALOON)
※本記事は2018年1月21日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。