ボクスホール|オペル アダムは、Aセグメント・ハッチバックのコンパクトカーです。アダムはオリジナリティのある個性的なデザインや、あえて3ドアのみで5ドアを設定しないという割り切り、そして多彩なバリエーションの設定で、高級感やスポーティーさを持ちながら、他社のプレミアムコンパクトとは一味違うモデルとして仕上がっています。
この記事ではボクスホール|オペル アダムを徹底解説します。また現地カタログ情報や、日本への並行輸入情報も掲載しています。
この記事の目次
ボクスホール|オペル アダムの特徴
会社の創業者の苗字を社名とするのは、洋の東西を問わず幅広く見られます。しかし創業者の名前そのものを商品名とするのは、自動車メーカーに限らず滅多にないことです。アダムは、オペルの創業者であるアダム・オペル氏の名前をそのまま車名とした稀有な例です。実際に登場時は日本へのオペルの輸入が途絶えていたにも関わらず、「これは日本なら”ホンダ ソウイチロウ”という名前のクルマが出たようなものだ」と随所で話題になりました。しかし当時のオペルには、このような一手を打つべき切実な理由があったのです。
2009年、1929年以来オペルの親会社であった米ゼネラル・モータース(GM)が破綻します。欧州の子会社としてスウェーデンのサーブと共に整理対象となったオペルと、その兄弟ブランドのボクスホールはロシア企業へ売却されることが決まりましたが、その後GMが急に方針を転換、ボクスホールとオペルは一旦GMの手元に残ることになりました。しかし一連の流れは、それまでも必ずしも好調とはいえなかったボクスホール|オペルにとっては手痛い出来事となり、GM傘下に残ったあとも工場の閉鎖などを余儀なくされました。
アダムが登場したのは、それからしばらく経った2012年のパリモーターショーでした。オペルにとっては、アダムの名前を冠したモデルを登場させ、マイルストーンとすることで悪い流れを断ち切り、ブランドのリフレッシュをはかりたいという意図があったのかもしれません。またこのモデルは、オペルとは異なる出自を持つ兄弟ブランドのボクスホールでも、同じアダムの名前で販売されることになりました。
言わば背水の陣の中で生み出された”アダム”、果たしてそれはどのようなクルマに仕上がっているのでしょうか?そしてオペルとボクスホールに何をもたらしたのでしょうか?
エクステリア
個性的な2トーンカラーと練られたプレスライン
BMW MINIが復活する際に、オリジナルのミニ特有の、ボディカラーと異なる色のルーフを採用したことがきっかけとなり、2010年代のプレミアムコンパクトにおいては、2トーンカラーを採用するのが定番となりました。アダムも2トーンカラーを採用していますが、先行する多くのモデルが天井の色だけを変える場合が多かったのに対し、アダムはA、B、Cピラーの色までも変えることで、2トーンカラーをより強調しています。といっても、このような塗り分けは決してアダムが最初というわけではありません。
アダムのエクステリアデザインの真髄は2トーンカラー以外の部分にあります。アダムのデザインを真横から見ると、ウエストラインから上に隆起したボンネットが割り込んできており、ウエストラインの塗り分けは敢えて崩されています。そして膨らんだボンネットが下がっていくラインは、ドア下部のプレスラインに連なって行きます。結果、どこか海洋哺乳類を連想させるような有機的な雰囲気が生まれています。モノトーンを選んでもピラーの付け根はブラックアウトされており、この雰囲気は引き継がれます。
一見すると王道のエッセンスを積み上げたように見えて、後から気付かされる奥の深さ。アダムのデザインは名前負けしていない秀作です。
インテリア
ブランドのターニングポイントに
3本スポークのサテライトスイッチ付きステアリングホイール、クロームで縁取られたスピードメーターとタコメーター、その間に鎮座するマルチディスプレイ、スポーティーな印象の丸い空調ダクト、大きく多機能なディスプレイ……。アダムのインテリアはプレミアムコンパクトらしい、上質かつ機能的な内容に仕上がっています。
インテリアは、エクステリアもしくはグレードに応じて多彩なバリエーションが楽しめますが、もしかするとエクステリアに比べて、独創性に乏しいと感じられる方もいるかもしれません。しかしアダム登場当時のボクスホール|オペルはが各車種センタークラスターが左右をはっきりと分断する縦基調のインテリアデザインを基本的に採用している中で、アダムのデザインは横基調を採用するという新しい取り組みが行われていました。それはあたかも「これからボクスホール|オペルはインテリアデザインの方向性を変えていく」と宣言しているかのようでした。実際、アダムの後にリリースされたアストラが横基調のインテリアを採用し、アダムのインテリアはボクスホール|オペルにとってターニングポイントとなったのです。
パワートレイン
ガソリンのみながらバリエーションは充実
デビュー時点でのアダムは、1.2Lと1.4Lの自然吸気”ecoFLEX”直列4気筒ガソリンエンジンのみが採用されていました。これはGMファミリー0エンジンと呼ばれるものの第3世代で、1996年の登場時から熟成を重ねてきたものです。最高出力は1.2Lが70馬力、1.4Lが87馬力から100馬力までの計3種類が用意されています。これらのエンジンは、設計の古いポート噴射のエンジンならではの味わい深さが魅力で、また87馬力仕様では、2ペダルの「イージートロニック」もオプションで選べます。
より経済的なエンジンや、よりパワフルなエンジンを求めるユーザーにとっては、2014年から追加された2つのエンジンが応えてくれます。”SIDI”とも呼ばれる新世代の”Turbo EcoFLEX”エンジンは、直列3気筒の直噴ターボで90馬力から115馬力を発揮。一方で従来の4気筒よりもCO2排出量は少なく、アダムの新しい顔になるエンジンです。
一方、最強モデルとなる1.4L”ECOTEC”エンジンは、150馬力と220Nmを発揮。このエンジンは”アダムS”というスペシャルグレードと紐づけられており、特にホットハッチ好きには見逃せないモデルです。
足回り
アダムSではコルサOPC/VXR譲りの設計も導入
アダムの足回りは、フロントにマクファーソンストラット、リアにトーションビームというヨーロッパのコンパクトカーとしてはオーソドックスな設計です。熟成を重ねた構成は、走行シーンを問わず安定した乗り味に貢献してくれます。またアダムSでは足回りの設計を、よりパワフルなオペル コルサ OPC/ボクスホール コルサ VXRから流用しています。
余裕のあるシャシー性能のおかげで18インチの大径ホイールに対応しているのも、プレミアムコンパクトとしては見逃せないポイントです。
総評
アダムが出てボクスホール|オペルはどうなったのか
2010年代、それまでセールス面などビジネスの観点からは元気がないと評価される機会の多かったボクスホール|オペルも、シェアの回復や好調な出荷台数など、少しずつ明るい話題が聞こえてくるようになりました。これはまさに創業者の名前を受け継いだアダムが一番の立役者…ということはさすがになく、インシグニアをはじめ、各モデルの品質や性能が評価されたことに起因するものですが、とはいえ復活の狼煙として”アダム”の名前が与えたものは大きかったと言えます。
そして2017年、ボクスホール|オペルは88年間に渡りパートナーだったGMから離れ、フランスのグループPSAの傘下に入りました。奇しくも、オペル創業者アダム・オペルは、若き日にフランスに渡り、ミシンのノウハウをフランスからドイツに持ち帰ることでオペルを創業しています。またオペルの自動車事業参入も、フランスのダラックとの関係から始まっているなど、北米資本になる以前は実は何かとフランスと縁の深いメーカーだったのです。
あたかもブランドを原点に導いたかのようなアダム。日本では地味なモデルですが、もしかするとこのモデルは数十年後に歴史に名を残しているモデルかもしれません。
ボクスホール アダムのライバルは?
付加価値を備えたAセグメントのモデルとして、アダムの直接のライバルはフィアット 500が真っ先に挙がるモデルでしょう。またボディサイズが異なるものの、BMW MINIやシトロエン DS3、MG 3もコンセプトの点でアダムに近い要素を持っています。
これらのモデルを選ぶ場合、単純な優劣よりもコンセプトを気に入るか否かが鍵となります。アダムの場合は特にそのデザインが購買ポイントとなるでしょう。
ボクスホール アダムのベストバイは?
アダムは設計思想の異なる複数のパワートレインを持っているため、同じモデルながら仕様によって相応に性格が異なります、ですから日本に並行輸入して乗るならば、お好みの仕様を選ぶことが肝要です。
とはいえ、日本の道路環境との相性やご家族と1台を共有するケースを想定すると、1.4Lの87馬力仕様に2ペダルのイージートロニックを組み合わせたパワートレインの選択は、アダムを万能なコンパクトカーとして楽しむことができるベストチョイスかもしれません。このパワートレインを選べるグレードは「GLAM」「UNLIMITED」の2つですが、特に後者は膨大なオプション組み合わせから世界に1台のアダムを作り上げられます。
150馬力のエンジンを搭載する「S」も魅力的な選択肢です。しかしホットハッチ好きは、よりパワフルで本格的なコルサVXR/OPCの存在に頭を悩ませることになるかもしれません。
ボクスホール アダムを並行輸入した場合の乗り出し価格は?
オペル アダムのイギリス仕様、ボクスホール アダムの販売価格は、GLAMに1.4L、87馬力仕様のecoFLEXとの組み合わせで14,875ポンドです。並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
2006年のオペルの日本市場撤退により、アダムの正規輸入の可能性は殆どなくなっているので、日本での入手は並行輸入が現実的な選択肢です。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
車両詳細画像ギャラリー
ボクスホール アダムのカタログダウンロード
・ボクスホール英国 アダムのカタログダウンロード(VAUXHALL UK ADAM)
ボクスホール アダムの現地法人・ディーラーリンク
・ボクスホール英国 アダム のオフィシャルサイト(VAUXHALL UK ADAM)
・ボクスホール英国 アダムのコンフィギュレーター(VAUXHALL UK ADAM)
※本記事は2017年4月27日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。