スペイン最大の自動車メーカー、セアト(SEAT)の小型車、イビサ クプラ(Ibiza Cupra)をご紹介します。
1950年に設立されたセアトは、当初出資者であるフィアットと技術提携し、フィアットが撤退する1980年まで一貫してフィアットのライセンス生産を行い、スペイン随一の地位を獲得しました。その後1993年にフォルクスワーゲン(VW)により完全子会社され、現在はVWグループの一員となっています。
2000年代以降、「アルファ ロメオをライバルとする」戦略の元にスポーティブランドとして位置づけられたセアトは、新たなコーポレート・アイデンティティを導入し、より躍動的で優雅なイメージを追及。現在では、VWグループの中で「アウディ・ブランド部門」に属しています。
イビサはVWグループのVW ポロやアウディ A1、シュコダ ファビアと同じ欧州Bセグメントに属する小型車。欧州の各メーカーにとって最も販売台数を稼げるこのBセグメントは、価格と品質のバランスを取りながら、いかに個性を発揮するかを各メーカーがしのぎを削っているカテゴリーです。そんな激戦区で戦うイビサのスポーツモデル、イビサ クプラを徹底解説します。日本で使いやすい右ハンドル、イギリス仕様で並行輸入してみませんか?
この記事の目次
セアト イビサ クプラの特徴
現行のイビサ クプラは2008年に登場した4代目で、2015年に2度目のフェイスリフトを受けたモデルです。フェイスリフトと言えば日本ではマイナーチェンジのように受け取られがちですが、外観はもちろん中身も一新されており、ほとんど新型車と言えるほどです。
3ドアハッチバック・6速マニュアルトランスミッションのイビサ クプラの最大の特徴は、このクラスでトップレベルのパワフルなエンジンです。1.8Lの直列4気筒直噴ターボエンジンから最高出力192ps/4,300-6,200rpm、最大トルク320Nm/1,450-4,200rpmを発揮。自然吸気エンジンに換算すると、馬力で2.5Lクラス、トルクで3Lクラスと比肩します。
往年の車好きなら「スターレット ターボ」のようなホットハッチを連想されるかもしれません。イビサ クプラは、まさに現代のホットハッチと呼ぶにふさわしいモデルなのです。
セアト イビサ クプラ プロモーションビデオ(約77秒)
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エッジの効いたスポーティなエクステリア
イビサ クプラのボディサイズは、兄弟車のVW ポロと比較すると全長が60mm長く、全幅はほぼ同じ、全高は40mm低くなっています。現行のポロは全グレード5ドアですが、イビサ クプラは3ドアの分、サイドのシルエットが伸びやかに感じられます。
フロントフェンダーからリアホイールアーチにかけて続くプレスラインによって、斜め前方・斜め後方から見るとエッジの効いたスタイリングとなっており、リアフェンダー上部のプレスラインが、まるでブリスターフェンダーであるかように幅広に見せています。
フロントバンパーに開いた大きな開口部は、見た目だけでなくエンジンの冷却効果を高め、リアバンパー左右のダクトはリアブレーキローターの熱を逃がす働きを併せ持っています。ディフューザー形状のリアバンパー下部、バンパー一体式のセンターマフラーフィニッシャーなど、各所にスポーツマインドが散りばめられています。
最新のモデルらしく、ヘッドライトはバイキセノン&LEDデイライトとなっており、機能とデザインを高い次元で融合させているところも見逃せません。
静かな情熱を感じさせるインテリア
ドアを開けた瞬間、まず目に飛び込んでくるのはシートの横に使われた明るいシルバー調のカラー。ドアトリムも同じカラーで加飾され、インテリアの統一感が生まれています。面積自体は少ないものの、このシルバーカラーが効果的に使われていることが、黒っぽくなりがちなインテリアに新鮮さをプラスしているように感じられます。
もし標準のカラーがあまり気に入らない方には、オプションでアルカンターラを選べばインテリアは黒一色となります。
シートに座って目を惹くのは、Dシェイプの本革巻きステアリングでしょう。ここにもシルバーカラーのステッチが入り、否応にも気持ちを昂らせてくれます。
ダッシュボードやドアトリムはプラスチッキーな感じはあるものの、品質は高く上質な部類です。例えばVW ポロと比較してもチープな感じはしません。VWグループ内で「アウディ・ブランド部門」に位置づけられているセアトらしく、アルミの加飾がアウディA1のように効果的に使われ、高級感さえ感じさせます。また、人間工学に基づいたスイッチ類は、すぐに馴染める使いやすい配置です。
スペインの自動車メーカーということで、もっと派手で情熱的なインテリアを想像される方もいるかも知れませんが、総じて抑制されたスポーティさを感じさせる雰囲気にまとめられています。
運転する楽しさを追及したパワフルなエンジン
イビサ クプラに用意されるエンジンは、1.8L直列4気筒直噴ターボのガソリンエンジン1機種です。前述の通り、最高出力192ps/4,300-6,200rpm、最大トルク320Nm/1,450-4,200rpmを発揮し、0-100km/h加速は6.7秒、最高速は235km/hに達します。この数値はVW ポロ GTI(6速マニュアル)とまったく同じです。
そこに組み合わされるトランスミッションが、イギリス仕様では6速マニュアルのみというのも特徴のひとつです。VWグループは「DSG」という優秀なデュアルクラッチ式トランスミッションを持っており、実際に多くのモデルがこのDSGを搭載しています。兄弟車であるVW ポロ GTIも、7速DSGと6速マニュアルの選択が可能なのですが、イビサ クプラはあくまで6速マニュアルのみとの仕様を貫いています。
また、ダウンサイジングが主流の昨今の車事情において、以前採用されていた1.4Lから1.8Lへと排気量をアップされていることも特徴です。そこには、セアトの明らかなメッセージが込められています。イビサ クプラは、運転する楽しさを味わうという原点に戻るための車なのです。
従来型の1.4Lターボエンジンはレスポンスが非常にシャープだったため、その性能を引き出すためには恐ろしく早く、しかも頻繁なギアチェンジが必要でした。そのため、人間よりはるかに早くギアチェンジできるDSGがベストマッチと言われていました。しかし結果的に機械任せでイージーにスポーツドライブが可能になり、逆に運転する楽しさが薄らいでしまいました。そこを補うために、ステアリングの反応をクイックにしたり、足回りを必要以上に固めてスポーティさを「演出」せざるを得なかったのです。
現行のイビサ クプラが積むエンジンは、従来型ほどレスポンスがシャープではありません(もちろん鈍重なわけではありません)。わずか1,450回転から最大トルクを発揮するエンジン特性としたのは、多少ギアチェンジに時間がかかってもパワーバンドを外さずに気持ちの良い加速を楽しむため。そしてその狙いは見事に実現しています。
加速性能と最高速に見合ったブレーキ性能も見どころのひとつです。フロント310mm、リア230mmの大径ディスクブレーキを備え、踏力に応じた絶妙なタッチで素晴らしいストッピングパワーを発揮してくれます。
セアト イビサ クプラ プロモーションビデオ(約4分40秒)
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「コンフォート」と「スポーツ」選べる2つの走行モード
イビサ クプラは電子制御のダンパーが備わり、2つの走行モードを選ぶことができます。
コンフォートモードを選ぶと、イビサ クプラはファミリーカーのように快適な車になります。良く動くサスペンションが悪路の凹凸も吸収して不快な突き上げをうまくいなし、ステアリングは拍子抜けするほど軽く、スポーティさとは程遠く感じるかもしれません。
ですが、ひとたびスポーツモードを選択すると、サスペンションはコンフォートモードに比べ約20%固くなり、ステアリングも重くなるほか、室内に入るエンジンサウンドもより大きく感じられるようになります。イビサ クプラが真価を発揮するのはやはり「スポーツモード」にほかなりません。
適度な重さを持つステアリングは、コーナリング時に確かな情報をドライバーに伝えます。生粋のスポーツカーのように曲がる方向へノーズがズバッと切り込むような感覚ではありませんが、安定感・安心感のあるハンドリングと言えるでしょう。
またイビサ クプラは「XDS」と呼ばれるリミテッド・ディファレンシャル・ロック(LSD)のように機能する電子制御装置を備えているのですが、このシステムは高速でカーブ走行時に駆動輪の内側に空転を感知すると瞬間的にブレーキをかけて空転を抑え、トラクションを回復させてくれるものです。このXDSのおかげて、スポーティで正確なハンドリングを実現しています。
運転する楽しさを追及しているイビサ クプラですが、同乗者への気遣いも忘れてはいません。コンフォートモードならデイリーユースで同乗者の不評を買うようなことはないでしょう。このクラスではトップレベルの快適さと言っても過言ではないはずです。
お買い得感が溢れる充実した装備
1.8Lのターボ付きエンジンだと燃費が気になるかもしれません。イビサ クプラの燃費は欧州複合基準で約19.4km/L。ハイブリッド全盛の昨今では目を見張るような数値ではありませんが、実燃費13~14km/Lと考えるとこのクラスの平均と言えます。
燃費も重要ですが、充実した装備も見逃せません。たとえば日本仕様のVW ポロ GTIでは標準ではハロゲンヘッドライトですが、イビサ クプラはバイキセノン&LEDデイタイムライトが最初から標準装備。前述の安全装備「XDS」をはじめ、運転者の疲労検知システム、上り坂の発進時に安心なヒルホールドコントロール、万が一の衝突後のダメージを軽減するマルチコリジョンブレーキシステムなども標準装備となっています。
詳細な装備については後述しますが、輸入車の場合「こんなものもオプション!?」とびっくりすることもしばしば。しかも付けたい装備が他のものとパッケージ化されているために割高になってしまうケースも見受けられます。しかし最初から装備が充実しているイビサ クプラなら、そんな心配はいりません。
総評:運転の楽しさを求める方におすすめの1台
国産車において、6速マニュアル車に乗りたいと思っても選択肢が非常に少なくなっています。マニュアルトランスミッションの設定自体、一部の限られたモデルのみとなってしまいました。日産のR35 GT-Rでさえ2ペダルのデュアルクラッチ式トランスミッションしか設定がない時代です。
たしかに速さのみを追及すると、その方が優秀なのは間違いありません。しかし、マニュアルには「車を自分の意思で操っている」という感覚や喜びを得られるという利点があります。
「3ドア」「6速マニュアル」「1.8Lターボエンジン」と乗り手を選ぶ車ですが、だからこそ、運転する楽しさと車に個性を求める方にぜひおすすめしたい1台といえます。それがこのイビサ クプラという車です。
セアト イビサ クプラ プロモーションビデオ(約5分)
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イビサ クプラのライバルは?
ヨーロッパにおいてBセグメントのベンチマークと言われ、雑誌や批評家からの評価が高いのがフォード フィエスタ ST。そしてフィエスタ STと並んで好評を得ているのがプジョー 208 GTiです。この2台がイビサ クプラの強力なライバルと言って間違いないでしょう。
フィエスタ STはヨーロッパで3年連続販売台数No.1に輝いたフィエスタをベースにしたスポーツモデル。イビサ クプラ同様に、3ドアハッチバック、6速マニュアルトランスミッションのみの設定です。
1.6Lの直列4気筒ターボエンジンは182ps/6500rpm、240Nm/3500rpm (オーバーブースト時290Nm)を発揮。0-100km/h加速は6.9秒、最高速は223km/hに達します。スペックを見ると、イビサ クプラと本当によく似ています。
フィエスタ STが最も評価されているのは、その乗り心地とハンドリングの絶妙なバランス。コーナーを曲がるときにステアリングから感じる手応え、ロールの少なさ、後輪の接地感。すべてが高い次元でバランスが取れており、運転する楽しさや喜びが大きい点が評価されています。
一方でパワー、加速性能、最高速、燃費においてはイビサ クプラが一歩リードしています。乗り心地やハンドリングは常用速度域や好みにもよるので、あくまでヨーロッパではこのような評価が多い、と参考程度にとどめてよいでしょう。
プジョー 208 GTiは日本に正規輸入されており、ディーラーで購入できます。
1.6L直列4気筒直噴ターボエンジンは、208ps/6,000rpm・300Nm/3,000rpmという大パワーを発揮。こちらも3ドア・6速マニュアルトランスミッションのみの設定となっています。
BMWと共同開発した1.6Lターボエンジンをさらにチューンしたエンジンなので、その気持ちよさは格別。高回転まで回すエンジンではありませんが、常用域で気持ちの良い加速を得られます。抜群なフロントの足回りに対して、リアは少し評価が分かれるようです。
丸みを帯びたデザインはプジョーらしさに溢れ、高性能なホットハッチにも関わらず可愛らしさも感じさせます。赤が効果的に使われた高品質なインテリアもスポーツ心をくすぐります。総合評価ではフォード フィエスタ STに一歩及ばないと言われることもありますが、フランス車らしい雰囲気もあわせて、他では得難い魅力を持つモデルです。
このほかに、 MINI クーパー S、ボクスホール コルサ VXR/オペル コルサ OPC、そしてVW ポロ GTIなどがライバルとして比較されることが多いようです。
Bセグメントでもホットハッチは特殊な存在。運転の楽しさと、ファミリーカーとしても使える懐の深さが求められます。各社そのバランスを取るのにさまざまな知恵を絞り、特色あるモデルを送り出しています。限られた予算の中でどれだけ良い車を作るか激戦が繰り広げられているこのカテゴリー、魅力的なモデルがたくさんありますから、最後には好みで選んでも後悔しないと思います。
セアト イビサ クプラの装備とオプション
イビサ クプラはイビサの上級モデルという位置づけもあり、最初から標準装備が充実しています。クライメートコントロール・エアコン(オートエアコン)やオートライト&ワイパーなど、オプションなしでも日本での乗り出しで不便を感じることはないでしょう。
オプションとしては、リアのルーフスポイラーやサイドスカードなどのエアロパーツが注目です。スポーツモデルとしてのイビサ クプラを、さらに演出してくれるでしょう。
標準装備品・オプションについては、+ボタンで詳細がご覧いただけます。
【インテリア】(標準装備)
- 5インチディスプレイ インフォテインメントシステム
- クライメイトコントロール・エアコン
- 本革巻きスポーツステアリング
- オートライト&ワイパー
- スポーツシート
- プライバシーガラス
【オプション(インテリア)】
- アルカンターラブラックシート(£400)
【エクステリア】
- バイキセノンヘッドライト
- LEDデイタイムランニングライト
- 17インチアルミホイール
- 専用フロント&リアバンパー
- 専用フロントグリル
- 専用センターマフラー
- 専用ブラック塗装ドアミラー
【オプション(エクステリア)】
- パノラマガラスサンルーフ(£495)
- リアルーフスポイラー(£399)
- サイドスカート(£270)
- テールゲートクロームトリム(£80)
【安全装備】
- XDS(電子制御式ディファレンシャルロック)
- 疲労検知システム
- ヒルホールドコントロール
- マルチコリジョンブレーキシステム(衝突後ダメージ軽減システム)
【オプション】
- リアパーキングセンサー(£220)
イビサ・クプラとイビサ・クプラ「Black」の違い
イビサ クプラには「Black」というグレードも存在します。「Black」は、標準のイビサ・クプラに+£800で以下の装備が追加されます。
- ブラック塗装17インチアルミホイール
- レッド塗装フロント&リアブレーキキャリパー
- 6.5インチディスプレイ インフォテインメントシステム
ブラックのホイールとレッドキャリパーで外観がよりスポーティに仕上げられているのが大きな違いです。上記以外に装備等の違いはありません。
好みになりますが、ホイールは後々交換する可能性があること、キャリパー塗装は比較的簡単かつ安価にできるので、標準グレードを自分好みに仕上げても良いかもしれません。
注目の並行輸入、セアト イビサ クプラの日本での乗り出し価格は?
セアト イビサ クプラのイギリスでの販売価格は、標準仕様で£18,100です。イギリスより並行輸入した場合の日本国内の乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
現在日本にはセアトの正規ディーラーがありませんので、入手するには並行輸入が現実的な方法です。
※輸入国からの輸送料、各種税金、検査費用、登録諸費、納車費用(大阪近郊)は全て含まれています。
※正式なお見積り、遠方への納車費用など、改めてご提示いたしますのでお問い合わせください。
セアト イビサ クプラ プロモーションビデオ(約1分30秒)
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スペック表
セアト イビサ クプラのスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | セアト・イビサ/SEAT IBIZA |
エンジン、サンプルグレード | クプラ 1.8 TSI/CUPRA 1.8 TSI |
英国販売価格 | £18,100 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 3 |
カラー | エモーションレッド(標準色) ネバダホワイト(OP/MTL) アイスシルバー(OP/MTL) モンスーングレイ(OP/MTL) ミッドナイトブラック(OP/MTL) ダイナミックグレイ(OP/MTL) ※OP:有料オプション ※MTL:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 4,055 x 1,693 x 1,420 mm |
ホイールベース | 2,469mm |
トレッド(前/後) | 1,465mm / 1,457mm |
車両重量 | 1,260kg(参考値) |
乗車定員 | 5名 |
トランスミッション | 6速マニュアルトランスミッション |
エンジンタイプ | 直列4気筒直噴ターボ |
総排気量/内径x行程 | 1,798cc / 82.5 x 84.2mm |
圧縮比 | 9.6(参考値) |
最高出力 | 192ps / 4,300-6,200rpm |
最大トルク | 320Nm / 1,450-4,200rpm |
燃料タンク容量 | 45L |
燃費 | 約19.4km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ディスク |
タイヤ/ホイール | 215/40R17 (参考データ) |
最高速度 | 約235km/h |
0-100km/h加速 | 6.7秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
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※本記事は2016年5月5日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。