「スポーティ」「プレミアム」「コンパクト」この3つの要素を満たすクルマはなかなかありません。しかしこれら全てを満たすだけでなく「由緒ある老舗ブランド」でもある一台がもうすぐラストを迎えようとしています。
復活したジュリアのヒット以降、スポーティなプレミアムブランドとして再び活気づきつつあるアルファロメオ。言わずと知れたこの老舗ブランドがリリースするコンパクトがここでクローズアップする一台です。
今回はアルファロメオのコンパクト、ミト(MITO)を紹介。日本未導入のグレードをはじめ、ベビーアルファの魅力に迫ります。後半では並行輸入の方法についても記載します。
この記事の目次
モデルの概要
ミトはアルファロメオのBセグメントに属するコンパクトカーです。プラットフォームは同じグループのフィアット プント(第2世代:デビュー当初はグランデプント)と共有しています。
アルファロメオのブランニューモデルとしてミトは2008年にデビューしました。名前の由来はデザインを行った「Millano(ミラノ)」と生産を行う「Torino(トリノ)」の頭文字を合わせたもので、デビュー当初から2017年のフェイスリフトまでは「MiTo」の表記で独特のデザインがされたロゴが使われていました。デビュー当初は全て4気筒エンジンのラインナップで、1.4L自然吸気とターボ、そして1.3Lディーゼルに全てトランスミッションはMTのみの組み合わせでした。
2010年のジュネーブモーターショーで発表された改良版では、従来型の1.4Lエンジンに変わって、次世代技術のマルチエアを採用した1.4LのMultiAirエンジンに変更されたのに加え、アルファロメオ初の2ペダルデュアルクラッチトランスミッションのアルファTCTが採用されました。2011年には新たにフィアットが開発したダウンサイジングターボエンジン、0.9L 直列2気筒のTwinAirエンジン(85PS)が新たに追加。ラインナップの拡充を図りました。2014年には内外装を小変更したほか、パワーユニットもハイパワー化、1.4L MultiAirターボは170PSになったのに加え、0.9L TwinAirユニットも105PSになりました。
現在販売されているモデルは2017年にフェイスリフトされたモデルです。この改良では同時期に復活したジュリアのテイストに合わせて内外装を改良したほか、ロゴもデビュー以降の「MiTo」から、ジュリアと同じ書体の「MITO」になりました。合わせてグレード体系も新生アルファロメオに準じたものに変更されています。
派生モデルとして、アルファロメオ伝統の「GTA」を冠したMiTo GTAコンセプトが2009年のジュネーブショーで参考出品されました。ノーマルモデルには設定のない240PSを出力する1750cc(1750TBi)ユニットを搭載したスペシャルモデルでしたが、残念ながら市販されることはありませんでした。
アルファロメオは2018年、このミトを2019年初頭に生産終了することを発表し、デビューから11年で幕を下ろすことになりました。新型モデルは用意されず、今後はステルヴィオよりも小型化された新型SUVに集約すると言われています。
日本市場には本国に遅れること1年、2009年に販売開始。当初は欧州仕様と同じくMTのみのラインナップでしたが、2010年にデュアルクラッチトランスミッションのアルファTCTを組み合わせたモデルが発表されると、いち早く導入されたほか、途中幾度か限定モデルが設定されました。一方、現在日本仕様にMTモデルはなく、最もハイパワーな1.4L MultiAirとアルファTCTを組み合わせたモデルがモノグレードで導入されています。
アルファロメオ ミト 紹介動画(約1分)
ハイライト
エクステリア
8Cコンペティツィオーネのエッセンスを取り込んだ印象的なデザイン
ボディタイプは3ドアハッチバックの1種類のみ。ベースとなるプントには設定される5ドアモデルはありません。
このクルマの魅力のひとつがデザイン。ミトと同じ時期に市販モデルがリリースされたスペシャルモデル「8Cコンペティツィオーネ」のデザインテイストをうまく取り込み消化しています。往年のレーシングモデルをオマージュした少しレトロなエッセンスを含む8Cの世界観がミトにも見て取れます。アルファ伝統の盾を中心に、前後共に丸型のランプと、ふくよかに丸みを帯びたデザイン処理は、懐かしさのなかに新しさも感じるどのコンパクトにも似ていない唯一のデザインと言えるでしょう。2016年にはフェイスリフトを行いましたが大きくデザインテイストを変えるような手の入れ方はせず、グリルの大型化、インテーク部の処理の変更をはじめ、新世代アルファのジュリアに通じるテイストも加味したものになりました。
ボディカラーは豊富な全9色。ベーシックなソリッドカラーをはじめ、メタリックペイント、マイカ塗装、そしてスポーティなマット塗装もラインナップされています。
足元を彩るアルミホイールも、ベーシックな16インチから迫力のある18インチまで、サイズに合わせてこちらも豊富な7種類が設定されています。
インテリア
イタリアの伊達さを大いに感じるインテリア
エクステリアに負けず劣らずインテリアも魅力的。有機的な曲線を描いたダッシュ周りのデザインに対して、インテリアトリムも豊富な設定がされています。ベーシックなファブリックをはじめ、フェイクレザーとのコンビ、フルレザー、さらにスポーティなファブリック/アルカンターラのコンビもあります。
このなかで特に魅力なのは、やはりフルレザー。パンッと張った仕立ての良いレザーシートは、高級家具を手がける伊ポルトーナフラウのもの。カラーだけでもブラック、タン、レッドが設定。どれも甲乙付け難く、小さいミトでも「イタリアの伊達さ」を大いに感じます。これはイタリアンな伊達さの代名詞とも言えるマセラティの妖艶さともまたひとあじ違う、アルファロメオならではの色気と言えるでしょう。
これに加え、ダッシュボードもインテリアトリムに応じてカーボンフィニッシュが施されたものも選択可能です。
これらインテリアのコーディネイトは、ミトがBセグメントのコンパクトであることを忘れてしまいそうです。しかし、ただプレミアムなだけが魅力ではありません。3ドアモデルのみですが、ラゲッジスペースは大きめに確保されており、使い勝手の良さを忘れておりません。
パワートレイン
日本未導入のTwinAirユニットが魅力
パワーユニットは、ガソリン、ディーゼルそれぞれ設定されています。(★印は日本市場にも導入されているユニット)
- 直列2気筒0.9L ターボ TwinAir 105PS
- 直列4気筒1.4L ターボ MultiAir 170PS(★)
- 直列4気筒1.3L ディーゼル JTDM2 95PS
ガソリンエンジンは2種類、日本にも導入されている1.4LターボのMultiAirと、0.9LのTwinAirです。ディーゼルは1.3LのJTDM2の1種類、同じ1.3Lディーゼルでも以前のモデルよりもハイパワーになっています。
そのなかでも注目はTwinAir。直列2気筒という近年はあまりお目にかかからないレイアウトを、ダウンサイジングのためにリバイバルしたフィアットの自信作。マルチエアテクノロジーを駆使し物理的なコンパクトさだけでなく、小排気量でも十分な出力を実現しています。エンジンオブザイヤーの1L以下部門を複数年連続受賞していることからも、このユニットの実力が伺えます。日本にもフィアット 500やパンダに搭載されて高い評判を得ていますが、ハイパワーな105PS仕様は導入されていません。
トランスミッションは5速MTがJTDM2に、6速MTがTwinAirに設定されています。2ペダルのデュアルクラッチトランスミッション、アルファTCTはハイパワーユニットのMultiAirのみに設定。その代わりにMultiAirにはMTの組み合わせがありません。
サスペンション
熟成を重ねてプレミアムコンパクトとして相応しいものに
サスペンションは、フロント:マクファーソンストラット、リア:トーションビームを採用。これはプラットフォームを共有するプントと同じ構成でコンベンショナルなもの。デビュー当初は足回りが固く、乗り味に対して懐疑的なインプレッションも散見されました。しかし、年数を掛けてこつこつと地道に改善を図った結果、しなやかな足回りとなり大幅に乗り味が改善。プレミアムコンパクトとして相応しいものになりました。
少しロールが大きめながらも4輪がきちんと路面を掴み、これをうまくいなしつつコーナーをクリアするドライビング感覚は、旧来のアルファロメオがもつスポーティさをしっかり受け継いでいます。
ほかにも走りに関する部分のトピックとして、アルファD.N.Aシステムがあります。これはエンジン、ブレーキ、ハンドリング、サスペンション、アクセルレスポンスなどを統合制御するシステムで全車に標準装備されます。シフト前にあるスイッチの切り替えで、時には各部のレスポンスを高めたスポーティなドライビングや、路面状況の悪い環境下では電子制御デバイスを駆使した安定感のある走りも提供可能です。
参考スペック
ALFAROMEO MITO 0.9 TwinAir 105hp Speciale
寸 法 ▶︎全長×全幅×全高=4,063×1,720×1,446mm
ホイールベース:2,511mm トレッド前/後 1,483 x 1,475mm
エンジン▶︎水冷ガソリンターボ 直列2気筒 フロント横置き
875cc 80.5mm x 86.0mm 10.0:1 105PS(77kW)/5,500rpm 145Nm(14.8kgm)/2,000rpm
駆動方式▶︎FF 6MT
懸架装置▶︎前:マクファーソン・ストラット
▶︎後:トーションビーム
ブレーキ▶︎前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
タイヤ ▶︎前:215/45R17 後:215/45R17
燃料容量▶︎45L 車両重量▶︎1,130kg 最高速度▶︎182km/h 0-100km/h加速▶︎11.4秒
燃 費 ▶︎23.8km/L(欧州複合基準)-km/L(JC08モード日本仕様参考値)
価 格 ▶︎17,955ポンド(イギリス仕様車)
※その他の仕様のスペック詳細はカタログ情報(リンク)をご覧ください
ライバルモデル
ミトのようにスポーティとプレミアムが両立するBセグメントコンパクトはなかなか少ないですが、ライバルとしてアウディ A1とDSオートモビルズ DS3を挙げます。
A1は誰しもプレミアムブランドとして思い浮かべるドイツのプレミアム御三家のひとつ、アウディのなかでも最もコンパクトなモデルです。かつてA2と呼ばれたオールアルミボディの革新的なコンパクトカーがありましたが、A1は直接的な後継車ではなく、フォルクスワーゲン ポロのプラットフォームを共有し、アウディのボトムレンジを担っています。ミトのような伊達な色気はありませんが、高い質感から醸し出す「いいモノ感」はアウディならではで、上級モデルにも通じるものです。スポーティなモデルとしてこのセグメントでは大きな2.0L TFSIターボユニットを搭載したS1や、ミトにない5ドアのスポーツバックがあるのも魅力です。
DS3は近年シトロエンから独立し、プレミアムブランドとしての認知度を高めつつあるDSオートモビルズのなかで最もコンパクトなモデルです。ベースはシトロエン C3(旧型)と共有し、独自の内外装を纏っています。DS3の魅力はシトロエンが持つアバンギャルドさにフレンチプレミアムのエッセンスを加えた独自の世界観。インテリアを見ても、独特なテクスチャが入った質の良いレザーシートや、マテリアルを巧みに組み合わせたインパネなど、ミトの色気とはまた違った妖艶さはDSオートモビルならではのものでしょう。2018年9月には小型SUVのDS3クロスバックが発表されたほか、日本でもハイパワーな限定車、パフォーマンスラインのファイナルエディションが導入されており、ミトと同じくそろそろラストオーダーになりそうです。
バイヤーズガイド
モデル構成は4種類、ベーシックな「MITO」をはじめ、エレガントな17インチアルミやパーキングセンサー、クルーズコントロールなど充実装備の「SUPER」、アルファロメオのスポーツモデルに共通するデザインの17インチアルミやフラットボトムステアリング、アルカンターラコンビのスポーツシートを装備したスポーティな「SPECIALE」、そして最もハイパワーなMultiAirエンジンにアルファTCTを組み合わせ、アクティブサスやブレンボ製ブレーキを装備したフラッグシップモデルは新生ジュリアに合わせて「VELOCE」になりました。
そのなかでもミトを選ぶなら、パワートレインにはコンパクトなTwinAirに6速MTの組み合わせが魅力的。これにスポーティさを重視するなら「SPECIALE」、プレミアムな方向を重視するなら「SUPER」をおすすめします。
もちろん日本にも導入されるハイパワーなMultiAirと2ペダルのアルファTCTの組み合わせも魅力ですし、アルファロメオのイメージからは、たった105PSの小さな2気筒エンジンは一見、不釣り合いのように見えるかも知れません。しかしTwinAirのパワーを6速MTを駆使して使い切るドライビングの楽しさは、アルファロメオの上級モデルがもつハイパワーなグランツーリスモとしての魅力と比べても、決して勝るとも劣らないものです。
そんなミトももうすぐこの市場からフェードアウトします。後継車種も開発されておらず、この小さな「ベビーアルファ」を新車で手に入れるのは最後のチャンス。熟成が進んだからこそ敢えてラストモデルを選ぶ意義は大いにあるのではないでしょうか。そのために残された時間は短いかも知れません。
モデルライフ末期のため、英国でも魅力的な価格オファーがある可能性もあります。気になる方はお気軽にお問い合わせください。
ミトのTwinAirモデルなど未導入モデルの日本導入の可能性
現在は最もハイパワーな1.4L MultiAirターボに2ペダルのアルファTCTの組み合わせのみが日本市場に導入されているミトですが、これ以外のTwinAirモデルなどが新たに導入される可能性は、モデル自体が末期なことや、FCAジャパンがTwinAirはAセグメントモデルに組み合わせる方針のようなため、残念ながら可能性は低そうです。
並行輸入という選択肢
日本市場に導入されていないミトのTwinAirモデルなども、並行輸入を行えば日本で所有することができます。
一例としてコアカーズを運営する並行輸入者販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したアルファロメオ ミト 0.9 TwinAir 105hp Specialeモデルの乗り出し価格を案内しています。下記表では最新の為替レートに基づいた価格を表示しています。
- 車名
- 2年保証付き
国内乗り出し価格目安
- 円
(税込・諸費用込)
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
カタログダウンロードページ
- アルファロメオ 英国 カタログ(要個人情報登録) (ALFAROMEO UK)
現地法人公式サイト・コンフィギュレーター
- アルファロメオ 英国 ミトのオフィシャルサイト (ALFAROMEO UK MITO)
- アルファロメオ 英国 ミトのコンフィグレーター (ALFAROMEO UK MITO CONFIGRATOR)
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※本記事は2019年6月19日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。