「トヨタのエントリーモデル」と一括りに言っても、仕向地により市場要求やトヨタ自身のイメージ戦略などが違うことから、それぞれ異なるモデルが担っています。そのなかでも欧州向けモデルを掘り下げると、市場の要求やトヨタのイメージ戦略が色濃く反映され、日本向けのモデルとはまた違った魅力をもっていることがよく分かりました。
今回は欧州トヨタのエントリーモデル、アイゴの2018年にマイナーチェンジされたモデルを紹介します。合わせて後半では並行輸入の方法についても紹介します。
この記事の目次
モデルの概要
アイゴは、Aセグメントクラスに属するトヨタの欧州市場向けエントリーモデルです。これはトヨタ独自開発のモデルではなく、PSAグループのジョイントベンチャーで開発されたもの。プジョーには108、シトロエンにはC1として販売される兄弟車があります。
初代モデルのデビューは2005年。これに先駆け2002年、チェコを本拠地に立ち上げられたトヨタとPSAのジョイントベンチャー「トヨタ・プジョー・シトロエン・オートモビル社(TPCA)」が手がけた最初のモデルとなりました。アイゴの名前は「I go」が由来とされています。兄弟車としてプジョーでは107、シトロエンではC1として販売。生産技術や管理を全面的にトヨタが担当したこともあり、品質の高さやこのクラスではめずらしい5ドアモデルの使い勝手の良さなどが評価され、兄弟モデル共々欧州市場で人気を博しました。実際に初代モデルの生産台数はアイゴだけでも76万台以上と言われています。
2代目モデルのデビューは2014年。初代と比べてトヨタ、プジョー、シトロエンそれぞれの個性がより色濃く反映されたモデルになりました。アイゴの開発コンセプトは「J-PLAY DESIGN」、これは日本のイメージを具体化するというもの。以前より海外から、おもてなしの心や品質の良いものづくりのイメージを持たれることの多い日本ですが、近年では若者を中心にクールジャパンと呼ばれる、アニメーションやポップカルチャーなど新たなイメージが構築されつつあります。トヨタはアイゴのターゲットとする若年ユーザーが抱く、これらの新たな日本のイメージ及びカルチャーを積極的に取り入れました。そのなかでチーフエンジニアは「ロボットヒーローのようなクルマを作りたかった」と語ったと言われています。実際、マイナーチェンジ前のモデルでは漫画仕立てのプロモーションを行ったぐらいです。初代同様、市場では人気を博し欧州で最も販売台数の多いトヨタ車と言われています。
登場から4年が経過した2018年にはマイナーチェンジを敢行。マイナーチェンジモデルは同年のジュネーブモーターショーで発表され、英国仕様もデリバリー開始されました。
日本への導入は、初代モデルから一貫してPSAの兄弟車も含めて行われていません。これは日本市場のエントリーモデルを担うパッソと車格やターゲットが重複ことが要因でしょう。
トヨタ アイゴ コマーシャル動画(約30秒)
ハイライト
エクステリア
より個性が増したエクステリア
ボディタイプは2種類。3ドアと、初代から引き続き使い勝手のよい5ドアが設定されています。サイズは、全長:3,465mm×全幅:1,615mm×全高:1,460mmと日本の軽自動車と比べて全幅だけ僅かながら大きいぐらいのコンパクトさのため、古の建築物がひしめく欧州の旧市街地はもとより、日本の裏路地ドライビングにもぴったりなサイズです。
デザインは、正面/背面共に「X字」をイメージしたアグレッシブなコンセプトをマイナーチェンジ前から引き継いでいます。今回はフロントマスクの変更に加え、ヘッドライト下部分の処理をグリルのように変更したり、LEDデイライトをヘッドライト周りに移設するなどの結果、X字がより強調され、個性が増したものに仕上がっています。一見アグレッシブすぎるようなデザイン処理にも感じますが、若者向けカルチャーに向かって、このテイストにマッチしたユーザーを積極的に獲得していく方針の現れです。全般的に万人向けするものを良しとしてきたトヨタ車の中で、これは新しいアプローチであることを感じます。
今回のマイナーチェンジでは新たなカラーリングが施され、選択できる外装色も増えています。欧州市場で人気のバイトーンルーフや、ピンポイントで差し色が入った仕様は、さながら歌舞伎の隈取(くまどり)のようなまさに「日本」を表現したものになっています。
ホイールの選択肢が多いのもアイゴの魅力のひとつですが、今回のマイナーチェンジではさらに4種類ラインナップが拡充されています。
インテリア
静粛性が向上した快適なインテリア
インテリアのトピックのひとつとして、マイナーチェンジで遮音材が増えた結果、静粛性が向上しました。そもそも2代目のデビュー時点で初代モデルと比べて静粛性が上がったと評判でしたが、今回はさらに磨きがかかりました。これにより今まで以上にタウンユースから高速走行まで快適なドライビングが可能です。
インパネデザインは、基本的にマイナーチェンジ前のものを踏襲。そして兄弟車のプジョー108やシトロエンC1と基本的に共通です。使い勝手がよくポップな雰囲気のインパネデザインは、ほかのトヨタ車とは少し異なり欧州小型車の雰囲気が色濃いです。
インテリアトリムは4種類が設定。ベーシックなファブリックから、上級グレードモデル向けにハーフレザーシートまで用意されています。
パワートレイン
改良を加えさらに熟成が進んだパワートレイン
パワートレインは、ガソリンが1種類。ディーゼルの設定はありません。
- 直列3気筒1.0Lガソリン VVT-i 1KR-FE 71PS
初代モデルから設定される1KR-FEと呼ばれる可変バルブタイミング VVT-i付き1.0Lエンジンは、日本でもパッソやiQで導入実績のあるユニットです。今回のマイナーチェンジでは先立って欧州仕様のヤリスに追加された1.5Lエンジンと同じく、クールドEGRシステムの採用のほか、燃料噴射システムの改良、高圧縮比化、フリクション低減、バランサーシャフト改善による低振動化など様々な改良が施され、さらなる熟成が進みました。マイナーチェンジ前のユニットと比べて2PS出力が向上。スペック上は僅かなパワーアップのように感じますがフィーリングが大幅に向上しています。
駆動方式はFFのみ。組み合わされるトランスミッションは、5速マニュアルを標準とし、2ペダルのシングルクラッチ5速AMT、「x-shift」が設定されています。x-shiftはAMTですが、クリープ現象を備えているため、渋滞時や車庫入れ時もスムーズなコントロールが可能です。
サスペンション
欧州コンパクトとしてしっかり走れる足回り
サスペンションはフロント:マクファーソンストラット、リア:トーションビームとこのクラスではコンベンショナルな組み合わせです。しかし、そのなかでもスタビライザーの強化や、ダンパーのセッティングにより、エントリーモデルのアイゴでも、欧州コンパクトとして市街地走行はしなやかに、高速走行では節度をもったしっかり走れるものに仕上がっています。乗り味としては、フランス車に近いと言われていますが、これはPSAとの提携の効果と言えるでしょう。
参考スペック
TOYOTA AIGO 1.0 x-clusiv 5door HatchBack automatic
寸 法 ▶︎全長×全幅×全高=3,465×1,615×1,460mm
ホイールベース:2,340mm トレッド前/後 1,430 x 1,420mm
エンジン▶︎水冷ガソリン 直列3気筒VVT-i フロント横置き
998cc 71.0mm x 84.0mm 11.8:1 72PS(53kW)/6,000rpm 93Nm(9.4kgm)/4,400rpm
駆動方式▶︎FF 5AMT
懸架装置▶︎前:マクファーソン・ストラット
▶︎後:トーションビーム
ブレーキ▶︎前:ディスク 後:ドラム
タイヤ ▶︎前:- 後:-
燃料容量▶︎-L 車両重量▶︎-kg 最高速度▶︎158km/h 0-100km/h加速▶︎15.2秒
燃 費 ▶︎28.5km/L(欧州複合基準)-km/L(JC08モード日本仕様参考値)
価 格 ▶︎14,595ポンド(イギリス仕様車)
※その他の仕様のスペック詳細はカタログ情報(リンク)をご覧ください
ライバルモデル
コンパクトなトヨタ アイゴのライバルとして、身内の兄弟車となるプジョー 108やシトロエン C1以外にフォルクスワーゲン Up!と、ルノー トゥインゴを挙げます。
108とC1は前述の通り、アイゴの兄弟車です。現在販売されているモデルはパワートレインをアイゴと同じものに一本化されています。そのぶん、エクステリアは108、C1、アイゴそれぞれが独自のキャラクターをもっており、108は308をそのまま小さくしたようなものに、C1はヘッドライト周りをC3エアクロスなどにも通じるものになっています。違いとしてはアイゴは3ドアモデルをベーシックグレードのみの設定にしているのに対して、108とC1はベーシックグレード以外にも3ドアが設定されています。そのため、これら兄弟モデルはブランドやデザイン、ボディタイプの希望に合わせて選んでもよさそうです。
Up!は、かつてのルポの流れを組むフォルクスワーゲンのエントリーモデルです。ボディタイプに3ドアと5ドアがあるのはアイゴと同様ですが、「いかにもフォルクスワーゲン」と言える剛性感の高いボディはドイツのイメージ車そのもの。ほかにもアイゴにはない1.0LターボユニットのTSIやスポーティグレードのGTIが設定されているのも魅力です。
トゥインゴはルノーのエントリーモデルです。ボディタイプはライバルと比べて5ドアのみの設定です。現在販売されている3代目モデルはスマートの兄弟車となり、はじめてRRレイアウトになったことが大きく話題になりました。このRR化により広い室内空間と驚くべき小回りの良さを手に入れています。ほかにも0.9LターボユニットのEnergy TCeやスポーティグレードとなるGTの設定に加え、2ペダルモデルはトランスミッションがデュアルクラッチの7速EDCのため素早く細やかな変速が魅力的です。
ほかにも、フィアット 500や、ボクスホール/オペル アダム、フォード Ka+など欧州市場には多くのライバルが存在します。
バイヤーズガイド
マイナーチェンジしたアイゴのグレード体系は6種類。全て「X」をモチーフにしたネーミングです。
- 唯一3ドアが設定されるベーシックな「X」
- x-touchマルチメディアシステムやバックカメラなど充実装備の「x-play」
- ピンポイントの差し色のカラーアクセントやブラックのアルミホイールが印象的な「x-press」
- カーナビ標準装備の「x-plore」
- マゼンタフィズをイメージカラーにした専用内装をもつ「x-cite」
- バイトーンルーフやハーフレザーシート、ダブルスポークアルミを装備した上級モデルの「x-clusiv」
アイゴを選ぶなら、5ドアx-clusivのx-shiftの組み合わせは如何でしょうか。これは小さいながらも少し高級なのに加え、誰でもキビキビ走れる2ペダルAMTというもの。これはかつて存在したiQのような「ちょっぴり知的なシティコミューター」としてのチョイスです。
一方、キビキビ走るのを希望の方なら、x-pressのMTモデル、ボディカラーはホワイトにレッドのカラーアクセントは如何でしょう?キビキビ走れるMTにブラックとレッドのカラーアクセントは、まるで小さなヤリスGRMNという雰囲気です。
安全装備が気になる方には「x-play」、「x-press」、「x-plore」、「x-cite」において「Toyota Safety Sense」が付属するモデルが用意されています。最上級の「x-clusiv」には標準装備です。
日本市場でトヨタのエントリーモデルと言えばパッソ。アイゴと同じ1.0Lエンジンを積むこのコンパクトカーは、日本の軽自動車の使い勝手を持ちつつワンサイズゆとりを持たせたもの。燃費がよくユーティリティもよいなか、駆動系は敢えて黒子に徹した性格の誰にも優しい存在のこのモデルは、日本のエントリーユーザーの要望をよく考えられた一台です。一方、アイゴは小さくでもキビキビ走り、近所のお買い物から高い速度域でのドライビングまでガンガン走れる設計。デザインは媚びることなくアグレッシブな性格は、欧州ユーザーの使い方にあった要望と、トヨタが欧州で展開したいイメージ戦略と合致しています。
どちらも各仕向地のエントリーモデルとしてしっかり分析がなされてます。そのなかで、日本でも小さくキビキビと走れる欧州市場に近いものを求めるユーザーには、アイゴはきっと満足してくれる一台になることでしょう。
新型アイゴの日本導入の可能性
アイゴは、初代モデルから兄弟車も含めて日本市場に導入された実績はありません。前述の通りトヨタは日本市場のエントリーモデルの役目をパッソに任せており車格も重複するため、今後もアイゴが導入される可能性は低いでしょう。
並行輸入という選択肢
日本市場に導入されていない新型アイゴも、並行輸入を行えば日本で所有することができます。
一例としてコアカーズを運営する並行輸入者販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したトヨタ アイゴ 1.0 x-clusiv 5door HatchBack automaticモデルの乗り出し価格を案内しています。下記表では最新の為替レートに基づいた価格を表示しています。
- 車名
- 2年保証付き
国内乗り出し価格目安
- 円
(税込・諸費用込)
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
カタログダウンロードページ
- トヨタ 英国 新型アイゴ カタログ (TOYOTA UK NEW AYGO)
現地法人公式サイト・コンフィギュレーター
- トヨタ 英国 新型アイゴのオフィシャルサイト (TOYOTA UK NEW AYGO)
- トヨタ 英国 新型アイゴのコンフィグレーター (TOYOTA UK NEW AYGO CONFIGRATOR)
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※本記事は2019年6月19日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。