今回は、ポルシェ914について紹介します。
ポルシェ914は、フォルクスワーゲン(VW)との共同開発により誕生した2シーターのミッドシップ・スポーツカーです。ポルシェを代表する911より大幅に開発コストを削減しながらも高い走行性能を誇り、北米地域を注視に高い人気を博しました。
1976年に製造完了してから半世紀近くが経ちますが、今でもポルシェのエントリーモデル的位置を占めるレアな旧車として、多くの熱狂的なマニアがいます。
ポルシェとVWとの関係や排ガス規制などに振り回され数奇な運命をたどった914ですが、自動車史上エポックメイキング的な存在として今なお語り継がれています。914がどんな車だったのかを、様々な側面から詳しく見ていきましょう。
この記事の目次
モデル概要
ポルシェ914は、VW製のエンジン・サスペンションとポルシェのボディワークにより誕生した2シーターのミッドシップ・スポーツカーです。
戦後におけるポルシェ356の大ヒットを受け、ポルシェは新しいスポーツカーとして、系譜が現代まで続く911を開発しました。911自体は356と同様のヒット作となりますが、356と比べ車両価格が非常に高くなってしまいました。急場しのぎで廉価版の912を発売するものの、エントリーモデルの開発が求められたポルシェは、VWとの共同開発を模索するようになりました。
その結果、VW製パーツの流用によりコストダウンを図るとともに、随所にポルシェならではの高いこだわりがちりばめられた914が1960年代後半に開発され、1970年に販売開始されたのです。その成り立ちから「ワーゲン・ポルシェ」という呼び名でも知られています。
914には記念モデルを含め、何種類かのエンジンが搭載されていましたが、いずれも空冷式の水平対応エンジンという点が共通していました。これをミッドシップにレイアウトし、5速MTを介して後輪を駆動しています。廉価なモデルながらスポーツカーとして走行性能にこだわる点が、ポルシェのエントリーモデルとしての高い評価につながっています。
914は初年度1万629台・1971年2万1440台が生産され、主に北米市場を中心として好調なセールスを記録していました。しかし1971年にVW会長に就任したルドルフ・ライディングがVW-ポルシェ販売会社を解消したため、結局北米ではポルシェ914として、ヨーロッパではVWポルシェ914として販売されました。
さらに通称マスキー法の施行による排ガス規制の強化や、第4次中東戦争を機に始まったオイルショックなど様々な要素がからみ、914は1976年に生産を終了しました。
時代の波に翻弄された914ですが、914ならではの特徴は数多くあります。エクステリアやエンジン・走行性能など様々な角度から、ポルシェ914のもつ個性を掘り下げていきましょう。
ハイライト
14のエクステリア
デザイン性よりも走りを追求したエクステリア
914は低コストで高性能なスポーツカーとして開発された経緯があり、そのエクステリアではあまりデザイン性は追求されていません。実際、914のデザインについては『スタイル・オート』の編集長マリオ・ディナリッチにより酷評されたり、デザイナーが次々とモーターショーに自作のデザインを発表したりと、お世辞にも美しいとはいえないスタイリングです。
914がもつエクステリア上の特徴は、可能な限りタイヤを4隅に配置したワイドトレッドや、ロングホイールベースをもつシャシーを採用している点です。このことが、現代でも十分に評価できる操縦性と安定性をもたらしています。
加えて短いオーバーハング、グラスファイバー強化プラスチック製の着脱式ルーフセンターパネル、そしてワイドなセーフティバーなども外観上の特徴です。さらに914には、ポップアップヘッドライトも装備されました。
また914は基本的にタルガトップ式のルーフを採用し、後ろ側は着脱式のトップを収納可能なトランクが装備されています。
モデルライフ後半ではいわゆる5マイルバンパーが装備されるのを初め若干の差はあるものの、914のエクステリアは、一貫して走行性能や実用性を追求したものになっています。
914のバリエーションのひとつに、希少性の高いモデルとして914/6があります。他のグレードと違い6気筒エンジンを搭載している点が大きな違いですが、外観で見分ける方法もあります。914/6だけ5穴ホイールなのに対し、他のグレードは4穴ホイールを採用しているため、ホイールで違いを見分けることもできます。
914に搭載されるパワートレイン
空冷式水平対応エンジンにこだわったエンジンバリエーション
ポルシェ914に搭載されたエンジンは何種類かありますが、いずれにも空冷式の水平対応エンジンという点が共通しています。大きく分けてVW製とポルシェ製の2つがあり、そのうちVW製エンジンは排気量の異なる3種類が用意されていました。
1970年~1973年に販売されていた初期モデルには、VW タイプ4(411E)用を流用した1,679cc4気筒エンジン(最高出力59kW(79PS))が搭載されていました。1974年以降はタイプ4のマイナーチェンジ版、412S用の1,795ccエンジン63kW(85PS)を搭載していましたが、この時期の914は、日本国内には正規輸入されていません。
また1973年に発売された914 2.0には、411E用のエンジンを1,971ccに拡大したものが搭載され、74kW(100PS)という最高出力を発揮しています。
上記3種類のエンジンはVW製ですが、1970年~1972年に発売された914/6には、ポルシェ 911T用の6気筒1,991ccエンジンを搭載しており、最高出力は81kW(110PS)を誇りました。
その他にも、911用の2.4L~2.7Lエンジンを搭載し11台のみ試験的に作られた916や、水平対向8気筒3Lエンジン(最高出力221kW・300PS)を搭載し2台のみ作られた911/8なども存在しましたが、一般には市販されていません。
914の走行性能
走行性能と低コストを両立させたポルシェとVWのコラボレーション
既述のとおり、914は開発コストの削減と高い走行性能の両立が追求されたモデルです。ボディ全長に対して極めて長めに設定されたホイールベースや短いオーバーハング、ワイドなセーフティバーなどの特徴が、操縦性を追求していることを示しています。
914のエンジンレイアウトは、他のスポーツカーと同様、ミッドシップ方式がとられています。ミッドシップの優れた点としては高い旋回性能があり、低重心が特徴の水平対応エンジンと相まって、優れた操作性・軽快な走りが楽しめるようになっており、そのレベルは現代でも決して見劣りしていません。
サスペンション型式は、フロントにストラット式、リアにはトレーリングアーム式が採用されています。スポーツカーとしては平凡な方式かもしれませんが、そこはポルシェ製のスポーツカー、走行性能は犠牲になっていません。
いずれもシンプルな構造のためコスト面で有利という点がメリットです。特にポルシェ車では、それまでトーションバースプリングのみが搭載されていたところ、初めてコイルスプリングが採用された点も特徴のひとつです。
前述のとおり、北米市場で914はVWの名を冠さずポルシェブランドで販売されていました。1.7L及び1.8Lエンジン搭載版の動力性能こそ911に及ばないとはいえ、ポルシェのエントリーモデルとして高い人気を博しました。
またポルシェ製の6気筒エンジンを搭載する914/6では、911のエンジン・ギアボックスが前後逆に搭載されています。5穴となっているホイールは、より大きなトルクにも耐えうる構造になっています。
総評
ポルシェ914に対する評価は様々で、ポルシェの失敗作とみる意見もありますが、6年間トータルで11万5597台を売り上げた実績は、小型2シーターカーとしては成功したといえるでしょう。特に高いユーティリティやハンドリングは、半世紀近く経った今でも高い評価を受けています。
ポルシェのエントリーモデルの系譜は914の製造完了でいったん途絶えますが、1996年に登場したボクスターにも哲学は脈々と受け継がれています。
エントリーポルシェのルーツとしてその魅力を味わうのに、914は最適なモデルです。実車を目にする機会はなかなかないかもしれませんが、運良く巡り会えた人は、じっくりとその走りを堪能してみてはいかがでしょうか。そして914の魅力にとりつかれたドライバーは、並行輸入を手がける会社を通じてオーナーになるのも一興でしょう。
参考スペック
車名 |
Porsche 914 |
搭載エンジン、サンプルグレード |
1,991cc水平対応6気筒 914/6 |
国内販売価格(オプション無) |
- |
型式 |
- |
ハンドル位置 |
左 |
ドア数 |
2 |
乗車定員 |
2名 |
全長x全幅x全高 |
3,985mm×1,650mm×1,220mm |
ホイールベース |
2,450mm |
車両重量 |
985kg |
最小回転半径 |
- |
最高出力 |
81kW(110PS)/5800rpm |
最大トルク |
157Nm(16.0kgm)/4200rpm |
トランスミッション |
5速MT |
914のライバルとなる車種はどんなものがあるのか
914が発売されていた1970年代には、空前のスーパーカーブームが巻き起こりました。914もその範疇に入っていましたが、一般的なスーパーカーと比べると、どうしても性能的に見劣りしてしまいます。そういったモデルが、914のライバル車といえそうです。
ポルシェ912は、911と共通のボディを特徴としますが、エンジンは356に搭載されていたものをデチューンしたもので、控え目なパワーでした。
ロータスエラン+2も、スーパーカーとして扱うのはためらいが感じられるモデルです。+2の名が示すとおりリアに2シーターが追加されているのですが、その中途半端な立ち位置や不格好なリトラクタブルライトなど、純粋なスーパーカーとはいえないでしょう。
フィアットX1/9も、このカテゴリーに入る1台でしょう。ミッドシップのエンジンレイアウトやリトラクタブルライト、2シーターなど、スーパーカーの定義は一応満たしています。しかし搭載されたエンジンはフィアット128用の乗用エンジンで、気軽なライトウェイトスポーツカー的な立ち位置にとどまります。
バイヤーズガイド
ポルシェ914は1976年と45年近く前に生産を終了したモデルです。中古車でしか購入できないのはもちろんですが、その中古車ですら希少な存在となっています。
2020年11月17日時点において、国内に流通しているポルシェ914の中古車台数は、中古車情報サイトで10台前後しかありません。新車で輸入されたものが中古車として販売されているものに加え、中古車の状態で並行輸入されたものも存在します。
中古車価格については、400万円~500万円前後のプライスタグがついているものもありますが、多くは応談となっています。応談になっているのはいくつか理由がありますが、冷やかし客を防ぐためや価格相場が崩れるのを防ぐためなど、本当に914が欲しいユーザーに行き渡る工夫がされています。
中古車の台数が少ないため参考程度にしかなりませんが、モデルライフ末期の中古車が若干多い印象です。排気量は2.0Lのものが多く、914のラインアップ中高い人気を博した914/6の中古車は、残念ながら探せませんでした。
旧車は全般的に中古車市場に出回ることが少ない傾向がありますが、914も同様に、一部の熱狂的ファンの間で密かに取引されているのかもしれません。
914の新車がほとんど北米市場で販売されていたという点に着目して、個人輸入を兼用するという選択肢もあります。人気の高い旧車としてレストアが施されたものもあり、中古車でも国内での新規登録であれば、次回車検は3年後です。
しかし個人で輸入手続きを全て行うこと・日本国内の保安基準に適合させるのはなかなか難しいところです。並行輸入に対応している業者を通して購入すれば、より手軽に914オーナーになることができます。
現代における914の評価について
登場から50年以上が経過するポルシェ914ですが、当初は様々な意見があったものの、現代では1970年代におけるポルシェのエントリーモデルとして、また自動車史に残る一台として、高い評価を受けています。さらに希少性の高さも手伝って、歴代ポルシェの中でも高い人気を誇る1台です。
今はもちろん、914の中古車は買えません。購入できるのは必然的に中古車となりますが、いわゆる旧車のジャンルに入るため、通常の中古車以上に選び方が難しいモデルです。また買っておしまいではなく、購入後の定期的なメンテナンスやトラブル発生時の対応なども求められます。
これを通常の販売店や整備工場に求めるのは、正直かなり難しいところです。旧車に関する豊富な知識と高い整備技術をもつ販売会社からの購入であれば、その点の心配は最小限で済みます。
並行輸入という選択肢
日本市場に正規輸入されていないモデルでも、並行輸入を行えば日本で所有できます。
一例としてコアカーズを運営する並行輸入車販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したポルシェ914の乗り出し価格を案内しています。下記表では最新の為替レートに基づいた価格を表示していますので、参考にしてください。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
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※本記事は2020年11月29日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。