英国ボクスホールがリリースする、走りを磨いたスペシャルモデル「VXRレンジ」。コアカーズでも以前から注目し、コルサ VXRやアストラ VXRなどのホットハッチや、スポーツセダン/ワゴンのインシグニアVXRなどを紹介してきました。
どのモデルも乗る者の走りのマインドを呼び起こす数々のチューニングが施されており、クルマ好きならきっと心躍るものだと思います。
そんなVXRレンジのなかでも、頂点として君臨するのはどんなモデルでしょうか?
今回は、ボクスホールのVXRレンジで頂点に君臨するVXR8 GTSを徹底解説します。右ハンドルで乗れるマッスルカー、圧倒的なパフォーマンスを誇るVXR8 GTSを並行輸入してみませんか?
この記事の目次
ボクスホール VXR8 GTSの特徴
ボクスホール VXR8 GTSは、英国ボクスホールのスペシャルモデルとしてラインナップされるVXRレンジのフラッグシップモデルです。
VXR8 GTSは、ほかのVXRレンジのモデルと少し生い立ちが違います。
コルサ VXRやアストラ VXRなど、ボクスホールのモデルは基本的にドイツ・オペルのモデルをベースにしています。しかし、VXR8 GTSに該当するベース車がオペルにはありません。VXR8 GTSは、オーストラリアのホールデンがラインナップするセダンモデル「VFコモドア」をベースにし、HSV(ホールデン スペシャル ビークルズ)がチューニングした「HSV GEN-F2 GTS」をボクスホールがローカライズしたモデルなのです。
ホールデンは、ボクスホールやオペルと同じくGM系の自動車メーカーです。ボクスホールと同じく、オーストラリアでアストラなどオペルをベースにしたモデルを販売しており、ボクスホールとは親戚関係のような存在です。
広大な国土を誇るオーストラリアでは、ヨーロッパよりも大きくハイパワーな車の需要があるため、オペルをベースにした車両を販売しつつも、GMの本場であるアメリカ本国モデルのエンジンやコンポーネントを使った、大排気量で大きなサイズのクルマを以前からラインナップしていました。
そして、オーストラリアは右ハンドルの国のため、イギリスや日本などでVXR8 GTSのようなハイパフォーマンスカーや、サイズの大きい車両が必要な際、最小限のローカライズで導入がしやすかった経緯があるようです。
ちなみに、似たような事例として1970年代に日本でも大型高級車をラインナップに持たなかった自動車メーカーが、比較的容易に右ハンドルの大型車をラインナップできることから、同じくホールデンのモデルをベースにした「マツダ ロードペーサーAP」や「いすゞ ステーツマン・デ・ビル」などをラインナップした例がありました。特にロードペーサーはホールデンのV8エンジンの代わりにマツダ自製のロータリーエンジン(13B)に換装するなど手を入れましたが、純国産大型車のトヨタ センチュリーや日産 プレジデントの牙城を崩すには至りませんでした。
VXR8 GTSのベースとなるVFコモドアのルーツは、1970年代のオペル レコルトをベースに直列6気筒やV8エンジンを載せるためにホールデンが独自にカスタマイズした4ドアセダンです。どの世代もオーストラリアではフォード ファルコンと共にベストセラーのモデルとして君臨してきました。現在販売されているモデルは4代目モデルで、2013年のマイナーチェンジでVFコモドアになりました。このモデルがVXR8 GTSのオーストラリア仕様となるGEN-F2 GTSのベースになります。
GEN-F2を手掛けたHSVは、1987年に立ち上げられたホールデンのスペシャルモデルを手掛ける専門部門であり、BMWのMや、メルセデスベンツのAMGのようなポジションです。このHSVがチューンしたGEN-F2は、オーストラリアで最もハイパフォーマンスなモデルという称号を得ています
ボクスホールではVXR8 GTS以外にも、これをベースにしたハイパフォーマンスピックアップトラックである、Maloo R8 LSAもラインナップされています。これはHSV Maloo R8 LSAのボクスホール版ですが、税制の関係で昔からスポーツピックアップの文化があるオーストラリアならではのモデルで、めずらしいジャンルの一台です。
なお、ボクスホールのVXRレンジは、オペルのOPCレンジのモデルと共通するモデルが多いですが、このVXR8 GTSとMaloo R8 LSAはオペルにはラインナップされていません。これは恐らく、ベースとなるホールデンのモデルに左ハンドル仕様がないことが理由でしょう。
ボクスホールや、ホールデンは現在日本に正規輸入のインポーターが不在のため、今のところVXR8 GTSが日本市場へ正規輸入される可能性は低そうです。
ボクスホール VXR8 GTS コンセプト紹介動画(約1分50秒)
エクステリア
走りを予感させる迫力あるエクステリア
VXR8 GTSには、4ドアセダンのみがラインナップされています。
比較的大人しめなベースのVFコモドアに対して、専用のエアロやフロントスポイラー、大きめのスーパーフローパフォーマンスリアスポイラーなどのボディパーツ、さらに大型エアインテークや、4本出しのエキゾーストなどを装着した、迫力のある佇まいに仕上がっています。
ほかにも、フロントにデイタイムLEDライトや、リアにスポーツLEDリアライトを装備するなど、アグレッシブなだけでなく、シャープな雰囲気も取り入れています。
全長4,988mm×全幅1,899mm×全高1,457mmという大柄なボディは、ボクスホール全てのモデルで最も大きく、メルセデスベンツのEクラスや、BMW5シリーズよりも大きいサイズで、国産車ではレクサス GSよりも大きくLSにほぼ近いサイズです。この大きい体躯と迫力のあるエクステリアデザインは、アメリカンマッスルカーに通じるものを感じさせます。
インテリア
EDIを中心としたスポーティなインテリア
ボディサイズが大きいこともあり、室内は広く快適です。インテリアの組み付けなど工作精度は高く、ボクスホールのプレミアムモデルとして相応しい印象を受けます。
インテリアはブラックを基調としたスポーティな雰囲気にまとまっています。インパネには、8インチタッチスクリーンのEDIを中心としたデザインで、中央にはVXR8 GTSの専用ロゴのエンブレムが装着されオーナーの所有欲を満たしてくれます。
このEDIとはEnhanced Drivers Interfaceの略で、タッチスクリーンにGコントロールなどの車両情報や、ラップライムを図れるストップウォッチを表示させるほかに、エクゾーストやサスペンションなど走りに関わる各種設定も行えます。さらに取得した各種情報は、インパネサイドに備え付けられたUSB端子より、データログを取得できるようになっています。取得したデータはパソコンなどで確認が可能です。
シートは、専用設計のオニキスレザーを使用した8ウェイ電動バケットシートが標準装備されます。このシートはスポーツドライビング時のホールド性と、高級さを両立しています。
パワートレイン
怒涛のパワーを叩き出すV8 6.2L LSAエンジン
パワーユニットは、このVXR8 GTSいちばんのハイライトと言っても過言ではありません。
「LSA」と呼ばれるGM製のV型8気筒6.2Lエンジンは、スーパーチャージャーが装備され最高出力 585PS、最大トルク740Nmという怒涛のパワーを叩き出します。
このLSAエンジンは、VXR8 GTS/GEN-F2以外にも、アメリカではシボレー カマロの最強モデル「ZL1」や、キャディラックのハイパフォーマンスモデル「CTS-V」にも搭載されるハイパフォーマンスユニットです。
過給機にターボではなく、敢えて選択されたスーパーチャージャーは専用設計のもの。これに加えて専用チューンのコンピューター、大容量インタークーラーを装備し、徹底的に武装したこのパワーユニットはVXR8 GTSの誇りであり、リアに輝く「SUPERCHARGED LSA」のエンブレムがこの存在をはっきりと主張しています。
トランスミッションは、走りをストイックに楽しむトレメック製6速MTだけでなく、イージードライビングが可能なトルクコンバーター式6速ATもオプションで選択可能です。
この6速ATは、パドルシフトを備えるのに加えて、専用の冷却装置も装備され、LSAエンジンが発するとてつもないパワーを受け止められるミッションに仕上がっています。メーカー自身もこのハードな要求に答えられるこのミッションを「ヘビーデューティーオートマチック」と名付けています。
大排気量のV8エンジンはマッスルカーにとって必須のアイテムであり、VXR8 GTSはこのツボをしっかり押さえています。
足回り
大パワーに負けない足回り。
駆動方式についても、VXR8 GTSの性格がよく表れています。最近のハイパフォーマンスサルーンは、大パワーを効率的に路面に伝えるためにAWDを採用することが多いですが、VXR8 GTSは伝統的なマッスルカーの定義に則るが如くFRのみしか設定していません。
サスペンションは、フロントにインディペンデントストラット、リアにマルチリンクを採用しています。ローンチコントロールや、スタビリティコントロール、電子制御ダンパーなどは装備していますが、ライバルと比べると電子制御デバイスの介入は少なめです。そのため、走りのメカニズムは良い意味で単純明快。豪快な加速と合わせて、ドライバーが自在に操れるのりしろの大きさは、きっと腕が鳴るはずです。
このほかにも、ドライブモードセレクター(ドライバー プレファレンス ダイヤル)と呼ばれるダイアルがシフトノブの近くに装備されており、パフォーマンス/ツーリング/スポーツなどの各種モードに加え、サーキット走行に向けた各種パフォーマンスを限界まで高める禁断のトラックモードも装備されています。
ハンドリングはライバルと比べてとても自然です。これはコンベンショナルなFRレイアウトならではの美点ではないでしょうか。
ブレーキについても、大パワーのVXR8 GTSを確実に止める性能を持った、強力なブレーキが装備されています。赤くペイントされたアルミ素材のキャリパーは、フロントは390mmの6ピストン、リアは372mmの4ピストンの、それぞれ専用設計のものが奢られています。タイヤも同じく、大パワーに応えられるよう、275/35/R20のウルトラロープロファイルにアルミホイールの組み合わせが標準装備されています。
リアを沈み込ませて豪快に加速する姿は、今では希少な「背徳感のある快感」のようにも感じます。しかしVXR8 GTSはただ直線番長なだけではありません。コントローラブルで自然なハンドリングは、きっとドライバーのスポーツマインドを大いに刺激することでしょう。
装備とオプション
モノグレードだが装備は充実
VXR8 GTSのバリエーションは、基本的にモノグレードで、トランスミッションは6速MTと6速ATから選べるようになっています。
装備は価格に対して充実しており、左右独立オートエアコンや、本革のスポーツシート、各種車両情報が出力できるヘッドアップディスプレイなどがあり、オーディオには、Bluetoothストリーミングや、iPhone接続時のSiri対応がされたBOSEプレミアムサウンドシステムがインストールされています。
さらにオプションでは、スポーツエクゾーストシステムやサテングラファイトの20インチアルミホイールなども用意されています。
総評
厚切りステーキのような豪快でスタミナ感のある一台
今回のVXR8 GTSに対して、やはりキーワードとなるのが「マッスルカー」。マッスルカーと言うとアメリカンなモデルを想像しがちですが、決してアメリカ車だけのものではありません。
最近ではダウンサイジングが大流行の自動車業界ですが、馬力を上げるのにもっとも確実な方法は排気量を上げることです。環境問題に厳しい昨今では相反するアプローチであり、このような愉しみを味わえるチャンスはそろそろ最後かもしれません。
VXR8 GTSは、敢えて電子制御デバイスを少な目にして、大排気量のV8エンジンのパワーを素直に味わえるコンベンショナルなFRレイアウトを採用しています。これはまるで、良い素材をたっぷり使ってシンプルな味付けで勝負した料理のよう。例えるなら、ガッツリと厚切りにしたオージービーフを塩コショウのみで仕上げて豪快に味わうステーキのようなスタミナ感です。
そんな新車で買えるマッスルカーを、右ハンドルで乗れるというのが、他では得がたいVXR8 GTSならではの魅力です。
ボクスホール VXR8 GTSのベストバイは?
VXR8 GTSを選ぶなら、MTモデルにオプションのスポーツエクゾーストシステムの選択をおすすめします。大パワーのFRをダイナミックに味わうなら、やはりMTモデルの方が楽しめますし、スポーツエクゾーストシステムは最近ではなかなか体感できないV8サウンドをより堪能するためにぜひ選びたいオプションです。
もちろん、大パワーのV8フルサイズマシンをイージーに乗りこなしたい方には、ヘビーデューティーATの6ATモデルも選択できますのでお気軽にお問い合わせください。
新車で味わえるのは、もうそろそろ最後かもしれないV8マッスルカーというジャンル。大排気量、大パワーのまさに「羊の革を被った狼」ならぬ「狼そのもの」なVXR8 GTSと一緒に暮してみませんか?
ボクスホール VXR8 GTSのライバルは?
右ハンドルで乗れるマッスルカーとしてのVXR8 GTSにライバルとして該当するクルマは少なく、唯一無二の存在と言えるでしょう。
ハイパフォーマンスセダンとしてのライバルとして強いてライバルを挙げるなら、メルセデスベンツE63AMG 4MATICを挙げます。
2016年にフルモデルチェンジしたEクラスですが、ハイパフォーマンスモデルとなるE63 4MATICが2017年に発売予定です。大きさは若干VXR8 GTSより小さいですが、AMGがチューニングした4.0L V8ツインターボターボエンジンは、最高出力612PS、最大トルク800NmとVXR8 GTSをも凌ぐパフォーマンスを誇ります。この大パワーを受け止めるために駆動系は4MATIC+と呼ばれるAWDシステムで細かく制御されています。トランスミッションには2ペダルの9速デュアルクラッチミッションを採用した、メルセデスベンツが誇るスーパーセダンです。しかし、VXR8 GTSと比べると電子制御の介入が多く、クルマとの対話を楽しみたいオーナーにとって、E63AMGは少し方向性が違うように感じます。そして新型の価格は未定ですが、先代モデルでも75,000ポンドと、VXR8 GTSよりも20,000ポンド以上も高価な点も見逃せません。
価格については、もう1セグメント小さいC63AMGもありますが、これと比べるとパフォーマンスはVXR8 GTSの方が大分有利になるようです。
ほかにもBMW M5/M3やアルファロメオ ジュリア クワドリフォリオなどハイパフォーマンスなセダンは欧州に各種ありますが、VXR8 GTSはこれらのヨーロピアン・ハイパフォーマンスセダンとはまた違った独自の世界観を持っているように感じます。
注目の並行輸入、ボクスホール VXR8 GTSの乗り出し価格は?
ボクスホール VXR8 GTSの英国での販売価格は、おすすめとなる6MTグレードで53,625ポンドです。日本に並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
ボクスホールは日本でのインポーターが不在のため、入手するには並行輸入が現実的な方法です。お気軽にご相談ください。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
スペック表
ボクスホール VXR8 GTSのサイズやカラーなどスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | VAUXHALL VXR8 GTS |
エンジン、サンプルグレード | 6.2i V8 Supercharged MT |
英国販売価格 | £53,625 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 4 |
カラー | ヘロンホワイト ストリングレッド スリップストリームブルーM ナイトラートシルバーM ファントムブラックM プルシアンスチールM リーガルピーコックM ジャングルグリーンM サムライクイットホットM ※M:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 4,988 x 1,899 x 1,457 mm |
ホイールベース | 2,915mm |
トレッド(前/後) | 1,616mm / 1,590mm |
車両重量 | 1,834kg |
乗車定員 | 5名 |
トランスミッション | 6速MT |
エンジンタイプ | V型8気筒スーパーチャージャー |
総排気量/内径x行程 | 6,162cc / 103.9 x 92.0 mm |
圧縮比 | – |
最高出力 | 585ps / 6150rpm |
最大トルク | 740Nm / 3,850rpm |
燃料タンク容量 | -L |
燃費 | 約6.5km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク |
タイヤ/ホイール | 275/30 R20 |
最高速度 | 約248km/h |
0-100km/h加速 | 約4.2秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
ボクスホール VXR8 GTSのカタログダウンロード
・ボクスホール VXRレンジ総合カタログ(VAUXHALL UK VXR RANGE)
ボクスホール VXR8 GTSの現地法人・ディーラーリンク
・ボクスホール 英国 VXR8 GTSのオフィシャルサイト(VAUXHALL UK VXR8 GTS)
・ボクスホール 英国 VXR8 GTSのコンフィグレーター(VAUXHALL UK VXR8 GTS CONFIGURATOR)
おすすめ関連グッズ
今回紹介するのは、書籍VAUXHALL A HISTORYです。こちらは洋書ですが、日本では紹介される機会が少ないボクスホールの歴史について書かれた貴重な一冊です。興味のある方は、英語ですが少しづつ読み解いてみてはいかがでしょうか。
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