「欧州の生活を感じる一台」と言えば今回紹介するこの一台かも知れません。
フォード トランジット(Ford Transit)は欧州フォードが販売するフルサイズのバン型商用モデルです。欧州市場ではベストセラーを続けるフルサイズバンの代名詞とも呼ばれるようなモデルのため、どの街でも見かけるぐらい生活に密着しています。
このような商用車は残念ながら日本へ正規輸入車として輸入されていませんが、欧州フォードの並行輸入車を数多く扱ってきたYMワークスではプロ御用達モデルであるトランジットの右ハンドルモデルを中心に、イギリスから並行輸入しお届けします。
この記事の目次
プロが認めるフルサイズバン、フォード トランジットの特徴
フォードトランジットの歴史は、1953年に欧州フォードが西ドイツの工場で生産していた1ボックスバンのモデルに「トランジット」のバッチを付けたのがはじまりです。
初代モデルは当時の人気モデルであった「タウヌス」のサブネームとして付けられています。このタウヌス・トランジットは発売以降、欧州市場で非常に高い評価を受け、40年以上に渡りフルサイズバンのベストセラーを続けています。
そのため個人所有されるタイプの車種ではありませんが、働く車としてとても認知度は高く、イギリスの人気自動車番組トップギア(TopGear)では、「トランジットでニュルブルクリンク1周10分の壁に挑戦!」など、商用車を使ったチャレンジ企画に度々登場しています。
現行モデルは2013年にフルモデルチェンジした5代目モデルで、このモデルからフォードの本場である北米市場にも導入されて好評を得ています。
ホイールベース、ボディ形状、エンジンのチューニング、タイプ(貨物使用のパネルバンや乗用仕様のミニバス)などニーズに合わせてさまざまな組み合わせが可能ですので、詳細は各項目をご覧ください。
2012年にはフルサイズのトランジットに加え、少し小さいライトサイズ(Light commercial vehicle)のトランジット カスタム(Transit Custom)も追加されています。
フォード トランジット コンセプトPV動画(約1分)
直線基調ながらもフォードのデザイントレンドに沿ったエクステリア
エクステリアは直線基調ながらも、欧州フォード車のデザイントレンドであるモンデオやフォーカスなどにも共通性を感じる台形型グリルに切れ長のヘッドランプを採用しています。
前後バンパーから車体を一周する樹脂のラバーは、衝撃からボディパネルを守るだけでなく、ヨーロピアンテイストを感じさせるワンポイントのアクセントとして機能しています。このほかパネルバンの場合はサイドのスライドドア以降の大きなパネルは、お店や会社のロゴなどをアピールするキャンバスとして実力を発揮してくれるでしょう。
このエクステリアを見ても、日本のハイエースやNV350キャラバンなどとは一味違うヨーロピアンな雰囲気を感じられるのではないでしょうか。
積載能力・用途に応じて選択可能なボディタイプ、ホイールベースとルーフ
トランジットのボディサイズは「全長4863(~5680)mm×全幅1974mm×全高1989(~2330)mm」と、トヨタハイエースや日産NV350キャラバンより一回り大きい、トヨタ クイックデリバリーや、いすゞ ビギン(絶版モデル)に近いサイズです。詳しくは右の「寸法図」を拡大してご覧ください。
●ホイールベースは3種類(カスタムはミディアム、ロングの2種類)
・ミディアムホイールベース(Medium:L2)
・ロングホイールベース(Long:L3)
・超ロングホイールベース(Long Extended:L4)
●ルーフは2種類
・ミディアムルーフ(H2)
・ハイルーフ(H3)
●バンタイプは2種類
・パネルバン(1列シート2人乗り若しくは3人乗り)
・ダブルキャブインバン(2列シート6人若しくは7人乗り)
なお、メーカーでは、ホイールベースとルーフにLとHの識別コードを付けてタイプ呼称しています。例えばL2H2はミディアムホイールベースのミッドルーフ、L3H3はロングホイールベースのハイルーフといった具合です。
積載能力は、ミディアムホイールベース・ミディアムルーフのダブルキャブインバン7人乗りモデルで5.7立方メートル(最大積載量約880kg)から、超ロングホイールベース・ハイルーフのパネルバン2人乗りの15.1立方メートル(最大積載量約1900kg)となります。
これぞプロの仕事場。シンプルで使い勝手の良いインテリア
インテリアは豪華さとは無縁ですが、インパネの造詣は現行モデルのフォーカスなどにも似たフォードシンクシステム(Ford SYNC with AppLink)を中心としてまとめられたデザイン。
収納も豊富かつ多彩で、500mlのペットボトルが入るドリンクホルダーから、クリップ型のスマートフォンホルダーやノートパソコンまで入る大型コンソールボックスなど、シンプルながら使い勝手の良いインテリアはプロの仕事場として非常に考えられた造形と配置になっています。
エンジンは2.2Lデュラトルクターボディーゼル、用途に合わせた3つのチューン。
エンジンはフォードの環境対応クリーンディーゼルエンジンであるデュラトルク(Duratorq)の直列4気筒 2.2L インタークーラー付きターボエンジンです。ディーゼルならではのトルクにインタークーラー付きターボチャージャーを組み合わせて十分な動力性能を発揮します。
このエンジンは、排気量はそのままに、用途に合わせて100ps、125ps、155psと3つのチューニング仕様が設定されており、街中の走行がメイン、高速走行や長距離移動が多い、燃費は重要、パワーは妥協しないといった、ユーザーの使用用途や志向に応じた選択が可能です。
大柄サイズでも良好な燃費性能と環境性能
トランジットは、一番燃費性能的に厳しい4輪駆動モデルで欧州複合モードで10.3km/L(CO2排出量255g/km)から前輪駆動モデルの14.5km/L(同179g/km)というフルサイズバンでは良好な燃費性能と環境性能を実現しています。
耐久性のある足回りと選べる3つの駆動タイプ
トランジットのサスペンションは、フロントが独立のマクファーソン、リアはリジットとなっており、乗用車とは異なる、ヘビーデューティーな用途にも応えられる耐久性のある足回りです。
駆動方式は前輪駆動(FF)と、後輪駆動(FR)、4輪駆動(AWD)が設定されており、空荷時の安定性に優位な後輪駆動、スペース効率に優れた前輪駆動、雪道などの悪路に強い4輪駆動と、こちらもユーザーの用途に合わせた駆動方式を選択できます。これもトランジットの優位点の一つです。
ちなみに国産モデルでは、このような1つの車種、1つのプラットフォームで、全ての駆動方式が選べる商用フルサイズバンは存在しません。
トランジットの総評
トランジットはボディ形状、エンジンチューン、駆動方式など柔軟に対応が出来るのに加え、優れた燃費性能などの運用コストの安さ、ヘビーデューティーな用途に答える足回りのチューニングなど、フルサイズバンとして求められる要素を高いレベルで実現している一台です。
乗用モデルと違い、メディアやジャーナリストから積極的に取り上げられない車種ですが、実際長時間車と付き合うプロが認めた「プロ御用達」のモデルがこのトランジットなのです。
フォード トランジット テストPV動画(1)(約90秒)
トランジットのライバルと評価・評判
トランジットのライバルは、フルサイズバンとして各メーカーから多種がリリースされています。もちろん、それぞれがライバルモデルを研究して開発されており、どれがベスト、とは甲乙つけがたいところです。要は多種多様なユーザーの要望にどこまで対応できているかに尽きます。
・ルノー マスター(Renault Master)
※OEMに日産 NV400、ボクスホール/オペル モヴァノ(Vauxhall/Opel Movano)
・フォルクスワーゲン LT(VolksWagen LT)
※OEMにメルセデスベンツ スプリンター(Mercedes Benz Sprinter)
・フィアット デュカート(Fiat Ducato)
※OEMにプジョー ボクサー(Peugeot Boxer)、シトロエン ジャンパー(Citroen Jumper)
これらより少し小さいトランジット カスタムのサイズではシトロエン ジャンビー(Citroen Jumpy)※OEMにトヨタ プロエース(Toyota Proace)やフォルクスワーゲン T6(VolksWagen T6)などがライバルとなります。
この中に国産メーカーの車種もありますが、NV400はルノー マスター、トヨタ プロエースはシトロエン ジャンピーのOEMであり、事実上、国産メーカーにはライバル不在です。このようにライバルメーカーはOEM供給が多く、実際フルサイズバンの場合はフォード トランジット、ルノー マスター、フォルクスワーゲン LT、フィアット デュカートの四つ巴の状態です。
トランジットは、ダウンサイジングエンジンや耐久性に加え、長年プロが認めるブランドイメージなどを備えており、単一メーカーの販売でもベストセラーを続けていることは、市場で高く評価されていることの何よりの証明といえます。乗用車では大人しめのイメージのある欧州フォードですが、プロユースの現場ではかえって質実剛健さとして評価されているようです。
トランジットには各種オプションが選択できます。
トランジットにはベース(Base)グレードと、充実装備のトレンド(Trend)があります。トレンドにはパーキングセンサーやヒーテッドドアミラーやオートライト、オートワイパーなどが標準装備しています。
さらにオプションとして、安全装備のBosch reverse waring deviceと呼ばれるドイツボッシュ社のシステムで、バックギアと連動して後方障害物を検知するシステムや、前走車を検知して制御するアダプティブクルーズコントロール、そしてバックミラーに内蔵式のリアビューカメラや、Bluetoothオーディオ対応のオーディオシステムなど多種選択できます。
こんなバリエーションもあります。キャブトラックやミニバスなど
トランジットにはバン型モデルの他にも色々なバリエーションがあり、一例がキャブトラックやミニバスです。
キャブトラックはトランジットの運転席から後ろをトラックにしたセミボンネットタイプのトラックで国産トラックには無い前輪駆動が選べます。
ミニバスはトランジットの広さを生かした乗用タイプのミニバスです。四角四面の国産マイクロバスとは違いスタイリッシュなトランジットのミニバスは他社との違いをアピールできるでしょう。
LCV用途に向けた兄弟車、トランジット コネクトとトランジット クーリエ
トランジットやカスタムは、フルサイズバンゆえに2000mmに近い横幅など日本で普通に使うには少々大柄なのも事実。「さらに小さいモデルがあればなあ」というご要望には、トランジット コネクトやトランジット クーリエという兄弟モデルでお応えできます。
トランジット コネクトは、フォードの主力モデルであるフォーカスをベースとしたプロスペックのバンモデル、末弟となるトランジット クーリエは日本でも好評のフィエスタをベースとした小型バンモデルです。共にハンドリングやシャシー性能には定評のあるベースモデルの美点を受け継いだ、走れるバンとなっています。
特にクーリエは、フィエスタやB-MAX同様に、傑作エンジンの1.0L エコブーストなども選べ、カングー等のフレンチLCVとは一味違ったオススメモデルです。
ベストバイはあなた次第?用途に合わせたベストな選択を!
今回紹介したトランジットは、イチオシ、といった仕様はありません。ビジネススタイルが異なれば、お客様のニーズは千差万別。トランジットはご要望に合わせ、ホイールベース、ルーフの高さ、エンジンのチューン、駆動方式、貨客用途とフルカスタマイズが出来ます。貴方の用途に合ったタイプがベストバイになるからです。
日本のバンとは一味違った「欧州での生活を感じる一台」のフォードトランジットは、きっと仕事にも生活にもマッチした、頼れる相棒になることは請け合いです。
フォード トランジット テストPV動画(2)(約1分)
トランジットを日本に並行輸入した場合の乗り出し価格は?
プロ御用達のフルサイズバン、フォード トランジットのイギリスでの販売価格は、2.2L デュラトルクエンジンに6速MTを搭載したパネルバンベースグレード、ミディアムルーフ/ミディアムホイールベース/100ps/3人乗りFFモデルの標準仕様で21,145ポンドです。イギリスより並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
フォード トランジットはフォードジャパンでは正規輸入車として導入されていないので、入手するには並行輸入が現実的な方法です。メンテナンス等もお任せください。
既に生産終了、あるいは新型・後継モデルが発表済のモデルです。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。ご対応ができない場合もございます。
※輸入国からの輸送料、各種税金、検査費用、登録諸費、納車費用(大阪近郊)は全て含まれています。
※正式なお見積り、遠方への納車費用など、改めてご提示いたしますのでお問い合わせください。
スペック表
車名 | フォード トランジット / FORD Transit |
エンジン、サンプルグレード | PanelVan L2H2 ミディアムルーフ/ミディアムホイールベース/100馬力/3人乗りFFモデル |
英国販売価格 | £21,145 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 3 |
カラー | フローズンホワイト(標準色) レースレッド(標準色) ブラザーブルー(標準色) テクトニックシルバー(OP/MTL) ストラトスフィア(OP/MTL) ディープインパクトブルー(OP/MTL) マグネティック(OP/MTL) ムーンダストシルバー(OP/MTL) ルナースカイ(OP/MTL) パンサーブラック(OP/MTL) ※OP:有料オプション ※MTL:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 4863 × 1974 × 1989 mm |
ホイールベース | 3300 mm |
トレッド(前/後) | -/- |
車両重量(乾燥) | 1916kg |
乗車定員 | 3名 |
トランスミッション | 6速MT |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒DOHC16Vインタークーラー付きディーゼルターボ |
総排気量/内径x行程 | 2198cc/-×-mm |
圧縮比 | – |
最高出力 | 100ps/3500rpm |
最大トルク | 31.6kg-m/1300rpm |
燃料タンク容量 | 80L |
燃費 | 約20.4km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ドラム |
タイヤ/ホイール | 16インチホイール |
最高速度 | 148km/h |
0-100km/h加速 | -秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車名 | フォード トランジット / FORD Transit |
エンジン、サンプルグレード | DoubleCab-in-Van L4H3 ハイルーフ/超ロングホイールベース/125馬力/7人乗りFFモデル |
英国販売価格 | £29,595 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 5 |
カラー | フローズンホワイト(標準色) レースレッド(標準色) ブラザーブルー(標準色) テクトニックシルバー(OP/MTL) ストラトスフィア(OP/MTL) ディープインパクトブルー(OP/MTL) マグネティック(OP/MTL) ムーンダストシルバー(OP/MTL) ルナースカイ(OP/MTL) パンサーブラック(OP/MTL) ※OP:有料オプション ※MTL:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 5680 × 1974 × 2330 mm |
ホイールベース | 3750 mm |
トレッド(前/後) | -/- |
車両重量(乾燥) | 2010kg |
乗車定員 | 7名 |
トランスミッション | 6速MT |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒DOHC16Vインタークーラー付きディーゼルターボ |
総排気量/内径x行程 | 2198cc/-×-mm |
圧縮比 | – |
最高出力 | 125ps/3500rpm |
最大トルク | 33.6kg-m/1350rpm |
燃料タンク容量 | 80L |
燃費 | 約15.6km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ドラム |
タイヤ/ホイール | 16インチホイール |
最高速度 | 157km/h |
0-100km/h加速 | -秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
フォード トランジットをもっと知りたい方はこちら
・英国フォード オフィシャルサイト(FORD UK)
・英国フォード カタログダンロード(FORD UK 英語版)
※本記事は2015年12月13日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。