かつて日産が販売していたコンパクトカー、パルサー。日本では2000年に終売となった懐かしいパルサーの名前が、近年海外で復活していることをご存知でしょうか?
2016年現在、パルサーの名前はオセアニア、タイ、ヨーロッパの3つの市場で復活していますが、今回はそのうちヨーロッパで販売されているパルサーを徹底解説します。また、これまでにパルサーがどのようにヨーロッパで販売されてきたかの歴史についても解説します。最新の実用ハッチバックとして生まれ変わったパルサーを並行輸入で楽しんでみませんか?
この記事の目次
日産 パルサーの歴史と特徴
歴代のパルサーはヨーロッパでの販売を前提に開発されてきました。しかし意外にもパルサーという名前のモデルがヨーロッパで販売されるのは、今回が初めてのことです。
パルサーの前身となるチェリーは、日産初の量産前輪駆動モデルとして1970年に発売されました。チェリーは元々は1966年に日産と合併したプリンス自動車が開発していたもので、合併以降もプリンス自動車の流れを汲む荻窪事業所が開発を継続して完成させたのでした。
チェリーはヨーロッパではダットサンブランドから販売され、個性的なデザインで存在感を発揮しました。1974年には2代目に移行、そして1978年には日本市場ではパルサーに名前を変えますが、ヨーロッパではチェリーの名前が継承されました。ただし1982年のモデルチェンジでは、世界的なダットサンのブランド廃止方針に伴い、日産ブランドに変更されています。この4代目となるチェリー(N12型)にはアルファロメオから兄弟車として、現在でも珍車として語り継がれるアルナが販売されたというエピソードもあります。
開発が荻窪事業所から日産本体に移行して迎えた1986年のモデルチェンジでは、ヨーロッパ仕様のパルサーの名前はややこしいことに サニーに変更されました。1990年のモデルチェンジでもサニーの名前が継承されましたが、1995年のモデルチェンジでは、まったく新しいアルメーラという名前が与えられています。日本でパルサーが廃止された2000年に アルメーラは2代目に移行、2006年まで販売されましたが、後継車が設定されないまま終売となりました。
一連のネーミングの迷走や開発拠点の推移には、日産系とプリンス系の技術者同士の確執など、社内政治的事情が背景に存在したと言われています。このような状況は日産の業績低下や経営危機の遠因となり、ルノーとの合併に繋がりました。ルノーは1990年代以降、ヨーロッパのCセグメント市場にメガーヌを投入し成功を収めており、日産がアルメーラの後継車を販売する必要性は、いったんはなくなったように見えました。
しかしその後、ヨーロッパの自動車市場はセグメントを問わず、付加価値を高めたプレミアムな路線と、コストパフォーマンスを重視したシンプルな路線に徐々に2極化しはじめました。そのなかでルノーブランドはプレミアム路線への追従に舵を切ったのです。シンプルな路線の需要を満たすために、消滅していた日産のCセグメントモデルの復活は必至であり、そして与えられた名前がヨーロッパから遠く離れた日本市場で長く親しまれてきたパルサーだったのです。
日産 パルサーのコマーシャルフィルム(31秒)
十分な車高が特徴的なエクステリア
同じグループのルノー メガーヌが非常に個性的なデザインを提案しているのに対して、パルサーのデザインは保守的にまとめられています。逆台形のフロントグリルやくさび形のテールランプは、日産 キャシュカイなどとも共通したイメージですが、パルサーはキャシュカイと比べてより大人しい雰囲気です。
近年このクラスで流行のワイド&ローなルックスとは異なり、パルサーの全高は1,520mmに達します。これは現行の日産ノートとほぼ同じ高さで、居住性を優先していることが伺えます。また、最近のクルマとしてはホイールアーチの大きさは控えめで、Cピラーに小窓を持つ6ライトウィンドウとあわせて、押し出しの強さよりも端正な印象を与えます。
大人4人が快適に過ごせるインテリア
インテリアもまた、巨大なタッチパネルを採用したメガーヌに対して、徹底して保守的なデザインが採用されています。コンパクトなセンタークラスターに、上から順に空調ダクト、オーディオ/ナビ、空調操作パネルを並べた、1990年代半ばに完成された古典的レイアウトは、今となってはディスプレイの大きさが小さくも感じますが、老若男女、誰が見てもレクチャーなしですぐに親しめるのではないでしょうか。
特筆すべきは後席の居住性で、2,700mmというクラス最長級のホイールベースの恩恵もあり、レッグルーム(座面の一番後ろから、前席シートバックまでの距離)は692mmに達すると謳われています。Cピラーの小窓や、十分な室内高もあり、後席の居住性と開放感はクロスオーバーではないハッチバックとしてはかなり高い部類に入ります。
パワフルなユニットも用意されたエンジン
パルサーには2種類のガソリンエンジンと、1種類のディーゼルエンジンが用意されています。
ガソリンエンジンは日産とルノーが共同開発したもので、キャシュカイと同じく 1.2LのHR12DDTと1.6LのMR16DDTの2種類の直噴ターボから選べますが、特にMR16DDTは出力重視型で、190PSと240Nmを発揮します。このスペックは日本仕様のジューク16GTと同じものです。
いっぽうディーゼルエンジンはルノー製の1.5LのK9Kが採用されています。ルノー クリオやカングー、日産 キャシュカイ、メルセデス・ベンツ A/B/CLA各クラスにも採用されている定番エンジンで、パルサーではパワフルな110PS仕様のみの設定となっています。
トランスミッションはすべてのエンジンで6MTを基本とし、1.2Lガソリンに限りエクストロニックと呼ばれるCVTの選択が可能です。このCVTはジヤトコ製の副変速機付きで、7.3という幅広いギア比が実燃費の良さに貢献します。
高い経済性のパルサーは、スポーツモデルでも低燃費
パルサーは高い経済性を誇ります。特に熟成の進んだディーゼルエンジン仕様は、欧州複合モード燃費で27.8km/Lという数値に達します。
ガソリン仕様はディーゼルにこそ及びませんが、1.2Lならば6MT仕様で20km/Lに達します。CVT仕様での燃費低下も僅かに抑えられており、こちらは19.6km/Lです。パワフルな1.6Lモデルも17.5km/Lで、Cセグメントのスポーツモデルとしては優秀な成績です。
グレードによって味付けの異なる足回り
こちらも非常に保守的な設計となっています。フロントサスペンションはマクファーソンストラット、リアサスペンションはトーションビームと、同じグループのルノー メガーヌに近い構成で、それぞれにスタビライザーが装備されています。
ハンドリングなどドライバビリティは、パワフルな1.6Lのガソリンモデルとそれ以外でキャラクターが異なります。1.6Lモデルでは、パワーステアリングの剛性強化やサスペンションの見直しなどにより、高い車高の割にロール量は少なく軽快な身のこなしを披露します。
対してスタンダードなモデルの場合は、エキサイティングな刺激をドライバーに提供するというよりも、状況を問わず確実に目的地に到達するという実用車的な側面を重視したコンセプトとなっています。ただしディーゼルエンジンの場合、パルサーに限ったことではありませんが、鼻先の重量がネックになることを指摘される場合があります。
総評:1990年代の欧州車を懐かしむ方に知って欲しいモデル
パルサーの細部を見ていけば、とにかく設計が執拗なまでに保守的であることが伺えます。とはいえ同じルノー日産グループの低価格ブランド、ダチアのように質感などまで割りきってしまうということはなく、ルノーやプジョー、フォードなどと比べても不満のない水準は確保されています。また後席の居住性の高さは、近年、室内を圧迫してまでスタイリングや空力向上を優先しているライバルに比べると、見逃せないポイントです。
とはいえ、古典的にヨーロッパでCセグメントというのはパーソナルユースが前提で買われることの多いクラスでした。1990年代から徐々に 2ドアよりも4ドアが、3ドアよりも5ドアが主体となり、車体も大きくなったことからファミリーカー的な要素が強まりましたが、そういった需要が各種クロスオーバーで対応できるようになった今、近年のダウンサイズは一種の先祖返りとも言える状況です。
そうして考えると、パルサーはなかなか面白い立ち位置にいるのではないでしょうか。特に並行輸入で乗る前提で考えるとニッチなモデルであることは否めませんし、一概におすすめできるものではありませんが、各社の最新Cセグメントの室内の開放感の低さや、先進的なデザインや機能の煩雑さに抵抗を感じられている方、かといってクロスオーバーは趣味に合わないという方にとって、1990年代のバランスの取れた万能型のCセグメントの設計思想を受け継ぐパルサーは、絶妙な選択肢となるかもしれません。
もちろん、懐かしいパルサーの名前を理由に選んでも良いでしょう。かつての荻窪事業所はもはやなく、昔のパルサーと比べていろいろと感じられる方もいるかもしれませんが、日産がCセグメントのハッチバックを日本で販売しなくなった今、あえてこのモデルを日本で乗ることは密かな満足感を味わえるかもしれません。
日産 パルサーのライバルは?
激戦区のCセグメントで販売されている日産 パルサーのライバルとしてはたくさんの車種が挙げられますが、いくつかの代表的な車種と比べてみましょう。
まずは同じルノー日産が販売しているルノー メガーヌとの比較ですが、特徴の項でも触れたとおり、とくに最新のメガーヌは執拗なまでにデザインの独自性を持たせたり、最先端のインターフェイスを採用したりと、パルサーとは対極にある存在です。価格も構成の近いパルサーに対して相応に高価です。保守的なパルサーがあるからメガーヌで冒険できるという側面もあり、コインの裏表のような関係だと言えるでしょう。
パルサーのような保守的な設計といえば、ボクスホール/オペル アストラの存在も思い当たります。代々のモデルは事実上ヨーロッパ専売に近いものも多く、内外装のデザインについて自らカタログで”クラシカルだ”と表現することもあるボクスホール/オペルですが、2015年に登場した最新のアストラKは、ビュイックブランドでの展開も前提とした世界戦略車としてプレミアム色を強めてきています。メカニズム面でも先進性を強めており、パルサーは少し対応する需要が異なってきたようにも感じられます。
設計の狙いが近いモデルとしては、フォード フォーカスの存在は見逃せないでしょう。1990年代にエスコートから刷新されて登場したフォーカスは、大人4人が乗る実用的なCセグメントハッチバックとして、フォルクスワーゲン ゴルフと並ぶベンチマークとなりました。優秀なハンドリングや足回り、エントリーモデルでもパワフルなエンジンなど、パルサーに比べてフォーカスが秀でている点が多いことは否めません。一方で、アグレッシブな内外装のデザインには好みが分かれるところで、その部分ではパルサーの魅力が光ります。
日産 パルサーのプロモーションビデオ(40秒)
装備とオプション
パルサーはVISIA、ACENTA、N-CONNECTA、TEKNAの4グレードが設定されていますが、LEDヘッドライトやバックカメラなど N-CONNECTA以上のグレードではとくに装備が充実しています。最上級のTEKNAでは本革シートとなるので、好みでN-CONNECTAかTEKNAを選ぶと良いでしょう。
オプションとしては、外装を彩るデザインパックやスポーツパックが設定されています。個性的な外見を目指しても良いかもしれません。
おすすめはN-CONNECTA、DIG-T 190
パルサーを日本で乗るならば、1.6Lガソリンエンジン搭載車をおすすめします。190PSを発生するパワフルなエンジンながら、前述したように低燃費も両立されています。また、このエンジンは最上級という位置づけですが、N-CONNECTAに限ってはディーゼルモデルと同一の戦略的な価格設定となっています。コストパフォーマンスの高さが光る、イチオシの仕様です。
日産パルサーを日本に並行輸入した場合の乗り出し価格は?
日産 パルサーのイギリスでの販売価格は、おすすめのグレード、N-CONNECTAにDIG-T 190エンジンの組み合わせで 21,095ポンドです。イギリスより並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
既に生産終了、あるいは新型・後継モデルが発表済のモデルです。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。ご対応ができない場合もございます。
※輸入国からの輸送料、各種税金、検査費用、登録諸費、納車費用(大阪近郊)は全て含まれています。
※正式なお見積り、遠方への納車費用など、改めてご提示いたしますのでお問い合わせください。
金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスしてください。
日産パルサーの中古車
日産パルサーの現地中古車をお探しすることも可能です。走行距離が少ない高年式中古車(新古車)が出回ってますのでまずは予算と合わせてご相談ください。
スペック表
日産 パルサーのスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | 日産 パルサー/ NISSAN PULSAR |
サンプルモデル | DIG-T 190 N-CONNECTA |
英国販売価格 | £21,095 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 5 |
カラー | フレームレッド アラバスターホワイト メタリックブラック(OP/MTL) ブロンズ(OP/MTL) アズール(OP/MTL) トワイライトグレー(OP/MTL) スターバーストシルバー(OP/MTL) フォースレッド(OP/MTL) ストームホワイト(OP/PAL) ※OP:有料オプション ※MTL:メタリック塗装 ※PAL:パール塗装 |
全長x全幅x全高 | 4385 × 1768 × 1520 mm |
ホイールベース | 2700 mm |
トレッド(前/後) | 1530mm / 1530mm |
車両重量(乾燥) | 1330kg |
乗車定員 | 5名 |
トランスミッション | 6速マニュアルトランスミッション |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒ターボ |
総排気量/内径x行程 | 1618cc/79.7×81.1mm |
圧縮比 | 10.5 |
最高出力 | 140kW(190ps)/5600rpm |
最大トルク | 240Nm/1600-5200rpm |
燃料タンク容量46L | 46L |
燃費 | 約17.5km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク / ディスク |
タイヤ/ホイール | 205/50R17 |
最高速度 | 217km/h |
0-100km/h加速 | 7.7秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
日産 パルサーをもっと知りたい方はこちら
・英国日産 オフィシャルサイト(NISSAN UK)
・英国日産 コンフィグレーションサイト(NISSAN UK)
・英国日産 カタログダウンロード(NISSAN UK)
※本記事は2016年3月6日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。