セダンやハッチバックといった乗用車のプラットフォームをベースとしたクロスオーバーSUVは、日本のみならず世界的に人気のカテゴリです。それだけにあらゆるメーカーが様々な特色を持った車種をラインナップしており、シェア獲得のためしのぎを削っています。今回はその中からフォード クーガをご紹介します。
ヨーロッパで生まれたフォード クーガは、ハッチバックやワゴンなど数種類のボディタイプを持つフォーカスをベースとしたSUVです。かつては日本でもフォード・ジャパンによって販売され多くのファンを獲得しました。2016年末、2代目クーガは大幅なフェイスリフトを受けて一層魅力を増しましたが、フォード・ジャパンの撤退もあり、残念ながらこの2017年モデルは日本に導入されることはありませんでした。
今回は、フォードの世界戦略車として高い評価を得ているフォーカスをベースに、フェイスリフトによってさらに磨きをかけたクーガを徹底解説します。魅力的なクロスオーバーSUV、フォード クーガのイギリス仕様右ハンドル車を並行輸入してみませんか?
この記事の目次
フォード クーガの特徴
2008年にデビューした初代フォード クーガは、2010年から日本に正規輸入されました。2013年には2代目にモデルチェンジし、2017年にフェイスリフト(マイナーチェンジ)を実施。現行型はこの2代目後期型に当たります。日本には初代と2代目前期モデルが正規輸入されており、エッジの効いたデザインや使い勝手の良さから多くのファンを獲得しました。
初代から一貫して欧州フォードによって開発されてきたクーガは、その洗練されたデザインと絶妙なサイズ感によってヨーロッパで高い評価を獲得してきました。北米とオセアニアでは「Escape(エスケープ)」という名称で販売されていますが、今後は全世界でクーガの名称に統一される予定です。
2017年モデルのクーガには4つのグレードが設定されています。エントリーモデルのゼテック、ラグジュアリーモデルのタイタニアム、スポーティモデルのST-Line、最上級グレードのヴィニャーレです。次項からそれぞれの違いも踏まえてご紹介します。
エクステリア
グレードによって異なるデザインを採用
2017年モデルのクーガは、フォードの新しい統一デザインである六角形のグリル(Trapezoidal Grille)が与えられ、前期型と比べると一層シャープな顔つきとなりました。グリルの変更に伴いヘッドライトとフロントバンパーの形状が一新され、フロントセクションはフルモデルチェンジと見紛うほどの変貌を遂げています。一方のリアセクションはテールランプのデザイン変更程度に留まりました。その他、アルミホイールのデザインにも変更が加えられ、押し出しの強さと都会的なイメージをうまく融合した、印象に残るエクステリアに仕上がっています。
グレードによってもエクステリアに違いがあります。例えばゼテックとタイタニアムでは、17インチアルミホイールのデザインが異なりますし、ST-Lineはボディ下部の樹脂部分がボディ同色となり、リアアンダーカバーがディフューザー形状となるほか、ルーフレールの追加、フロントグリルとヘッドライトベゼルのブラックペイント、スポーティなデザインの18インチホイールに変更されている点が異なります。さらにヴィニャーレは、フロントグリルがルーバーからメッシュへ変更されており、フロントマスクが大きく異なります。
インテリア
他のフォード車と共通するレイアウト
クーガのダッシュボード周りはフォーカスなどと同様のレイアウトが採用され、フォードの乗用車から乗り換えても違和感のない操作性を確保しています。ダッシュボード中央部からセンターコンソールにかけ、オーディオとエアコンのスイッチ類がシンプルにまとめられています。タイタニアム、ST-Line、ヴィニャーレは、ダッシュボード中央部に8インチのタッチスクリーンを採用。メーターと同じ高さにビルドインされているため走行中の視線移動が少なく済みます。電動パーキングブレーキの採用でサイドブレーキノブがないのもこれら3つのグレードの特徴です。
シートの表皮はグレードによって異なり、ゼテックはファブリック、タイタニアムはファブリックとレザーのコンビ、ST-Lineは同じくレザーコンビですがファブリック部分がスエード調になっています。なお最上級のヴィニャーレは、六角形のキルティングが特徴の柔らかな本革シートが標準で装備され、運転席は10wayパワーシートとなります。ダッシュボードやドアトリムにもステッチが施されたレザー調の素材が使われ、上品で贅沢な空間を演出しています。
パワートレイン
3種類のエンジンと2種類のトランスミッション
フォード クーガには、1.5Lのガソリン、1.5Lと2.0Lのディーゼルと3種類のエンジンが用意されています。トランスミッションは6MT、6AT、PS(パワーシフトの略で6速セミオートマ)の3種類、駆動方式はFF(前輪駆動)と4WDがあります。
1.5Lガソリンエンジンは出力の違いで120ps・150ps・182psの3種類があり、トルクはすべて240Nmとなります。120ps仕様は6MT・FF、150ps仕様も同じく6MT・FF、182ps仕様は6AT・4WDとなっています。
1.5Lディーゼルエンジンは120psで、6MTはトルク270Nm、PSは300Nmとトルクの違いがあり、いずれもFFです。2.0Lディーゼルは150ps/370Nmと180ps/400Nmの2種類。150ps仕様の6MTにはFF・4WDの両方が設定され、PSは4WDのみです。180ps仕様は6MTとPSが用意され、いずれも4WDとなります。
1.5Lガソリンエンジンのうち182ps仕様は、以前日本に正規輸入されていた「クーガ トレンド」と同じエンジンです。また、同じく日本仕様の「タイタニウム」に設定されていた2.0Lガソリンの242ps仕様は廃盤となっています。イギリス仕様のクーガはグレードによって選べるエンジンなどに若干の違いがあるので、ここでまとめてご紹介します。
ゼテックは、1.5Lガソリンが120ps/6MT/FF、150ps/6MT/FF、182ps/6AT/4WD、1.5Lディーゼルが120ps/6MT/FFと120ps/PS/FF、2.0Lディーゼルが150ps/6MT/4WDと150ps/PS/4WDと7種類から選べます。
タイタニアムは1.5Lガソリンが150ps/6MT/FF、182ps/6AT/4WD、1.5Lディーゼルが120ps/6MT/FFと120ps/PS/FF、2.0Lディーゼルが150ps/6MT/FF、180ps/6MT/4WD、180ps/PS/4WDと同じく7種類ですが、こちらは2.0Lディーゼルのハイパワー版が選べます。
ST-Lineはタイタニアムと同じ構成です。ヴィニャーレは1.5Lガソリンが182ps/6AT/4WD、1.5Lディーゼルが120ps/6MT/FFと120ps/PS/FF、2.0Lディーゼルが150ps/6MT/FF、180ps/6MT/4WD、180ps/PS/4WDと6種類が用意されています。
足回り
重心の高さを感じさせない優れた基本性能
フォード クーガのサスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リアにはマルチリンクを採用しています。また、ST-Lineのみサスペンション形式は同じながらスポーティな味付けになっています。フォーカスと同じC1プラットフォームの改良版を採用していることもあって、シャシーの基本性能が高く、乗用車のような乗り心地は重心の高いSUVであることを忘れそうになるほどです。
ホイールは前述の通り標準ではゼテックとタイタニアムが17インチ、St-Lineとヴィニャーレが18インチとなり、タイタニアムとST-Line、ヴィニャーレの3グレードはオプションで19インチの選択が可能です。駆動方式についてはパワートレインの項でも触れましたがFF(前輪駆動)と4WDがあり、4WDは走行状況に応じて4輪それぞれに最適なトルクを配分するトルクベクタリングコントロールを標準装備して、安全で快適な走りに貢献しています。
経済性
最高で22.7km/Lの低燃費を誇る
経済性を検討するうえで重要な目安となるフォード クーガの燃費についてご紹介します。182ps仕様の1.5Lガソリンエンジンで、4WD/6ATの場合、カタログ燃費は約13.3km/Lとなっています。このエンジンはすべてのグレードで選択可能です。また、180ps仕様の2.0Lディーゼルエンジンで、4WD/パワーシフトの場合は約19.2km/Lです。こちらのエンジンはゼテック以外のグレードで選ぶことができます。
最も燃費のよい仕様は、120ps仕様の1.5Lディーゼルで、FF/6MTで約22.7km/Lです。このエンジンが選べるグレードはゼテックのみとなります。その次に燃費が良いのは150ps仕様の2.0Lディーゼル、FF/6MTで約21.3km/Lとなります。このエンジンはゼテック以外のグレードに設定されています。
主な装備とオプション
ベーシックなグレードでも装備は充実
フォード クーガの主な装備やオプションについてご紹介します。
全車標準装備となるものに、プッシュ式エンジンスターター、クルーズコントロール、ヒルスタートアシスト、タイヤプレッシャーモニター、60:40分割可倒式リアシート、12Vアクセサリーソケット、トノカバーなどがあります。エアコンも全車標準装備で、ゼテックはマニュアルエアコン、その他のグレードはデュアルゾーンオートエアコンになります。
オーディオは、全車リモートコントロール、ボイスコントロール、ハンズフリーフォン、ブルートゥース、USBコネクタを装備。ゼテックのみ4.2インチTFTモニタで、CDとラジオ、その他のグレードはナビ付きの8インチモニタを装備しています。
ヘッドライトはゼテックがハロゲン&デイライト、タイタニアムとST-LineはハロゲンにLEDデイライト、ヴィニャーレはバイキセノンにLEDデイライトを装備しています。
パーキングセンサーについては、ゼテックはリアセンサーがオプション、タイタニアムは標準、ST-Lineとヴィニャーレはフロント、リアともに標準装備。バックからの駐車や縦列駐車を車がサポートしてくれるアクティブパークアシストは、ゼテックとタイタニアムがオプション、ST-Lineとヴィニャーレは標準で装備します。
おすすめのオプションとして、まずアクティブシティストップがあります。これは約50km/h以下で走行中に働く自動ブレーキで、レーンキープアシストやオートハイビームなどとセットでオプション設定されています。また、リアバンパー下につま先をかざすと自動で開くハンズフリーテールゲートも便利です。こちらはヴィニャーレに標準装備され、その他のグレードではオプションです。
解放感を求める方にはパノラマルーフ(ゼテック以外の3グレードで選択可能)、トレーラーなどの牽引を予定する方には電動リトラクタブルトウバー(ヒッチメンバー)もおすすめのオプションとなります。
総評
スタイリッシュなデザインと高い実用性が魅力
これまでご紹介してきたように、2017年モデルのフォード クーガは、エッジの効いたスタイリッシュなデザインと実用性を兼ね備えたSUVです。
高いアイポイントとストレスを感じさせないエンジンパワーで、普段使いから長距離まで楽にこなし、快適な居住性を持つ前後シートやロールを適度に抑えた足回りで、同乗者も大満足の快適な乗り心地を実現しています。さらに通常時456L、リアシートをたためば最大1,653Lの荷室スペースは買い物からレジャーまでそつなくこなしてくれるはずです。
さらに、トルクベクタリングコントロールを備える4WDは、過酷な路面コンディションでも4輪それぞれに最適なトルクを配分し、先進のESC(エレクトリックスタビリティコントロール)と相まって高い操縦安定性を実現しています。どんなときも頼りになるパートナー、それがフォード クーガなのです。
フォード クーガのライバルは?
SUVは日本に限らず欧州でも大人気のカテゴリです。様々なメーカーが特色ある車種を投入していますが、フォード クーガのライバルとして、今回はセアト アテカ、マツダ CX-5、スバル フォレスターを挙げてみます。
セアトはVWグループに属するスペインのメーカーで、アテカは2016年後半に新たに登場したSUVです。セアトを象徴する特徴的なヘッドライト、大きな開口部を持つグリルとバンパーなど、スポーティさと都会的な落ち着きをうまく融合させたエクステリアを持っています。インテリアはベース車のレオンと同じく質実剛健といった印象で、奇をてらった部分はありません。
VWグループのMQBプラットフォームを採用した走りは、同価格帯のSUVの中でも高く評価されています。エンジンは1.0Lと1.4Lのガソリン、1.6Lと2.0Lのディーゼルと4種類が用意されています。フォード クーガと比べて全長が約160mm短く、ひと回りコンパクトな印象ですが、荷室はFFモデルで通常時510L(4WDは485L)と大容量を誇ります。また、エントリーモデル(1.0Lガソリン/FF/6MT)が£17,990からと買い求めやすい設定となっているのも魅力です。
マツダ CX-5は、2016年12月に2代目へのフルモデルチェンジが発表され、日本では2017年の2月から販売が開始されました。日本では先代モデルと同じく3種類のエンジン(2.0Lと2.5Lのガソリン、2.2Lのクリーンディーゼルターボ)から選択可能です。また先代を踏襲したエクステリアデザインとボディサイズは賛否両論ありますが、質感は確実に向上しています。またインテリアに至っては、2クラス上の車格の車と肩を並べると言われるほどの仕上がりを見せています。
マツダが2代目CX-5に投入した新技術、G-ベクタリングコントロール(GVC)は、カナダ自動車ジャーナリスト協会の「2017ベストイノベーションテクノロジー賞」を受賞するなど革新的なもの。これまでは横方向と縦方向にかかる加速度(G)は別々に制御されていましたが、これを統合的にコントロールすることで安定感のある効率的な挙動を生み出す世界初の技術です。このGVCは全車に標準装備されます。日本での人気ぶりは発売から1か月で月間販売目標台数の7倍近い16,000台以上を受注したことからもよく分かります。
1997年に初代が登場したスバル フォレスターは、現在4代目のモデル末期に当たります。スバルのアイデンティティである「水平対向+AWD」の組み合わせは、クロスオーバーSUVであるフォレスターのような車にはまさにうってつけと言えるでしょう。日本では2.0LガソリンのNAとターボエンジンのみのラインナップですが、海外では2.5Lガソリンと2.0Lディーゼルエンジンも用意されています。
フォレスターの特徴は、シンメトリカルAWDやX-MODEに裏打ちされた走りです。重心が低く前後左右の重量バランスにも優れるため、路面コンディションが悪くても安心感があります。ロングツーリングでは安定した走りを見せ、コーナーでは優れたハンドリングによる軽快な走りが楽しめるなどまさにオールマイティ。アイサイト搭載車は予防安全性も非常に高いと好評です。2017年にも5代目へとモデルチェンジするのではと噂されており、期待が高まります。
以上3車種のほか、ドイツ勢の代表格であるメルセデスベンツ GLC、BMW X3、アウディ Q3、VW ティグアンなどもライバルとなります。このように、SUVというカテゴリは各メーカーが非常に力を入れており選択肢も数多くあります。その中からこれぞという1台を選ぶ基準も十人十色でしょう。
フォード クーガの魅力はスタイリッシュさと力強さを兼ね備えたデザインや、日常の使い勝手の良さにあります。トルクベクタリングコントロールによる操縦安定性や、アクティブシティストップといった安全性能ももちろん魅力的です。無理難題も涼しい顔で聞いてくれる頼れるパートナーのような存在、それがフォード クーガという車なのです。
フォード クーガのベストバイは?
グレードによる装備の違い、エンジンや駆動方式など複雑なフォード クーガですが、おすすめはタイタニアムの1.5Lガソリンエンジン、182ps仕様の4WD/6ATです。主要な装備は標準となりますので、必要に応じてオプションをお選びいただき、自分だけのクーガに仕立てていただければと思います。
はじめからフル装備の豪華仕様を求める方には、ヴィニャーレの2.0Lディーゼル、180psの4WD/パワーシフトをおすすめします。特別な本革仕様の内装、バイキセノンヘッドライトやハンズフリーテールゲート、ひと目で分かるフロントグリルの違いなど、満足度は非常に高いでしょう。また経済性を重視する方にはゼテックの1.5Lガソリン、120psのFF/6MTが魅力的です。マニュアルならではのダイレクト感溢れる走りも楽しめます。
グレードやエンジン、装備などでお悩みの場合はお気軽にご相談いただければぴったりのフォード クーガをご案内いたします。
フォード クーガの新車を並行輸入した場合の乗り出し価格は?
フォード クーガ タイタニアム 1.5L EcoBoost 182PS 6AT AWD 仕様の英国での販売価格は£28,645です。並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
2017年4月現在クーガは日本で販売されていないため、確実に入手するには並行輸入が現実的な方法です。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
車両詳細画像ギャラリー
KUGA MorningCruiseについて
惜しくも正規輸入は途絶えたクーガですが、日本国内ではクーガの愛好家のオフ会が開催されており、オーナー同士の親交が深められています。このオフ会はKUGA MorningCruiseと呼ばれており、自動車好きのSNS”みんカラ”のオーナー限定コミュニティ、FORD KUGA Morning Cruse Groupの参加者が参加対象とされています。
KUGA MorningCruiseの参加実績/予定は以下の通りです。
- 2016年5月29日
- 2016年10月23日
- 2017年5月21日(開催予定)
2017年4月現在は、みんカラを通して参加者の募集が行われています。
イベント情報:KUGA Morning Cruise 3rd at Yamanaka-Lake
※イベントの詳細は主催者にお問い合わせください
※コアカーズでの取材を調整中です
フォード クーガのカタログダウンロード
・フォード クーガのカタログ(FORD UK KUGA)
フォード クーガの現地法人・ディーラーリンク
・英国フォード クーガのオフィシャルサイト(FORD UK KUGA)
・英国フォード クーガのコンフィグレーター(FORD UK KUGA CONFIGURATOR)
※本記事は2017年4月13日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。