2017年のフランクフルトモーターショーは、地元ドイツのメーカー・サプライヤーがEV(電気自動車)や自動運転車のコンセプトカー、その技術に関する展示を積極的に行ったことが話題となりました。一方で市販される新型車の発表はSUVやホットハッチなど、エンジン=内燃機関の特性が活きるようなスポーツ色の濃いモデルが目立ちました。
その中でも注目度が高かった1台がルノー メガーヌR.S.(Renault Sport、ルノースポール)です。今回は新型メガーヌR.S.の詳細情報、ルノージャポンによる日本導入予想、そしてこだわりの仕様で手に入れたい場合の並行輸入に関する情報をお届けします。
この記事の目次
モデル概要
ルノー メガーヌR.S.は、ルノーの主力モデルであるCセグメントのメガーヌを、フランス北部のディエップに拠点を置きルーツをアルピーヌに持つルノースポールが仕上げたホットハッチで、2代目となるメガーヌ2からラインアップに追加されました。歴代のメガーヌR.S.はニュルブルクリンク北コースでFF車最速の座をホンダやフォルクスワーゲングループ(VW、セアト)と争い、メガハッチと呼ばれるジャンルを確立することになります。特にメガーヌ3 R.S.とシビック タイプR FK2の熾烈なタイム競争は大きな話題となりました。
ルノースポールの特色はF1をはじめとしたモータースポーツとの関係の深さや、開発時の徹底した走り込みにあります。その走り込みの場は欧州に止まらず、日本の公道やサーキットにも及んでいます。そんなルノースポールの2017年時点での最新作、メガーヌ4 R.S.はどのようなモデルに仕上がっているのでしょうか?
ハイライト
エクステリア
リアエンドは巨大なエグゾーストパイプが印象的
メガーヌ4は標準モデルでも、ローレンス・ヴァン・デン・アッカーによるアグレッシブなエクステリアを持ちます。しかしメガーヌ4 R.S.は、標準モデルに比べて更に獰猛なルックスを手に入れました。
フロントスポイラーの形状はF1のウィングを連想させる造詣に、フォグランプはチェッカーフラッグを思わせる3段構成です。ともすればやりすぎ感のあるような演出ですが、これはF1での活動を積極的に続けるルノーだからこその成り立つものです。後述するサスペンションのノーマルモデルに対する設計変更により前後フェンダーは拡大され、フロントフェンダー後部にはスリットが入ります。リアは側面まで回り込むようなスポイラー、スリットの入ったリアバンパーが採用されていますが、何より目を引くのは中央に台形で1本出しされる巨大なエグゾーストパイプです。これらによりメガーヌ4 R.S.は前後左右どこから見ても、それと分かる存在感を手に入れています。
ボディ形状が5ドアのみとなったことも特筆されます。これはベースモデルで3ドアが廃止されたことに伴うものです。また5ドアのメガーヌ R.S.としては初代に相当するメガーヌ2 R.S.以来の復活となります。歴代の3ドアメガーヌは3ドアクーペと呼びたくなるようなスペシャリティ感があり、これが失われたことは惜しまれますが、一方で5ドアゆえの実用性の高さを手に入れました。このような実用性はホットハッチの魅力のひとつと言えるでしょう。
エクステリア
赤いアクセントの専用トリム&スポーツシート
インテリアのデザインはベースモデルに準じますが、ダッシュボードやメーターナセルの外縁、ドア内側のトリム、そしてシートやステアリングのセンターマーカーなどは全て赤で彩られています。これは先行してラインアップされ、やはりルノースポールが手掛けているメガーヌGTが青で彩られているのと対照的で、それぞれのモデルの性格を端的に体現しています。
センタークラスターにオーディオやエアコン、車両設定の操作・表示機能を持たせた大型の縦長タッチスクリーンを擁するレイアウトは、米テスラがモデルSで採用して以来、世界的に採用が広がっているものです。ルノーはこのレイアウトをメガーヌに先立ってエスパスやタリスマンで採用してきましたが、ルノーの場合は他社の同様のディスプレイに対してエアコンの温度調整ダイヤルを物理スイッチとして残していることが特徴として挙げられます。ダイヤルはブラインドタッチでの操作性に優れており、スポーツ走行の機会が多いメガーヌ R.S.のようなモデルにおいては特に相性の良いレイアウトと言えます。
シートは先代同様にルノースポールが足回りと一緒に開発を行っていると言われているオリジナルの肉厚なスポーツシートが標準装備され、そしてオプションでレカロのセミバケットシートも選択が可能になることが見込まれます。
パワートレイン
新世代1.8L直噴ターボエンジンを搭載
歴代のメガーヌ R.S.はF4Rtと呼ばれるポート噴射式の直列4気筒2.0Lのターボエンジンを採用してきました。ベースとなる自然吸気仕様のF4Rは1999年から生産されているもので、豪快かつ鷹揚なフィーリングが魅力と評価されてきましたが、ライバルに対して基本設計の古さは否めませんでした。今回はじめてエンジンが刷新され、M5Ptと呼ばれる新世代の直列4気筒1.8L直噴ターボエンジンが新たに採用されています。
M5Ptは2017年のジュネーブショーで発表されたアルピーヌ A110(新生モデル)にも搭載されていますが、最高出力はA110の252hpに対しメガーヌ4 R.S.では280psと、モデルの性格にあわせてよりパワフルなチューニングが行われています。同時にこの最高出力は先代最終モデルであるメガーヌ R.S. 273(273馬力)をも上回ります。排気量1,000cc当たり150psを上回る苛烈なチューニングを可能にするため、シリンダーヘッドの設計にはF1エンジン設計チームが協力を行なったと言われています。さらにレブリミットも先代を上回る7,000回転に達します。今後追加されるトロフィー(Trophy)仕様ではよりパワフルなチューニングが施され、遂に300psの大台に到達しました。
トランスミッションは歴代同様の3ペダルの6MTに加えて、2ペダルのデュアルクラッチトランスミッション”EDC”が新たに選択可能になりました。
足回り
四輪操舵システム “4CONTROL”を新採用
メガーヌ4 R.S.のサスペンションはフロントがDASS(ダブルアクシス・ストラットシステム)、リアがトーションビームで、この構成は先代のメガーヌ3 R.S.を踏襲しています。DASSはキングピンオフセットを最小化する構造で、特にハイパワーFF車で問題になるトルクステアの発生を抑えるものです。またDASSの採用に伴いフロントトレッドは60mm拡大、これにあわせてリアのトレッドも45mm拡大されており、これが上述したオーバーフェンダーの採用に繋がっています。
またメガーヌ4 R.S.には4CONTROLと呼ばれる4WS(4輪操舵機構)が、メガーヌ4 GTに続いて採用されました。これは電磁アクチュエーターにより後輪を操舵させる機構で、メガーヌ4 R.S.は50km/hを境に同相と逆相が切り替わり、安定したドライビングを実現します。さらに走行モードで”RACE”を選ぶと、より高い速度域まで逆相での後輪操舵が行われます。
ホイールは先代よりも一回り大きな18インチが標準となりました。オプションで19インチも用意されています。
また公道走行を含めてあらゆる状況でバランスの良い走りが楽しめるシャシー・スポールと、より硬派でサーキット走行に適したシャシー・カップの2種類が用意されるのは先代同様です。
ライバルモデル
メガーヌ R.S.のライバルとして真っ先に名前が上がるのはホンダ シビック タイプRでしょう。各々先代に相当するメガーヌ3 R.S.とシビック タイプR FK2のニュルブルクリンク北コースでのFF最速を競うタイムアタックは熾烈を極め、最終的にルノースポールはタイムアタック専用モデル的な立ち位置のメガーヌR.S.275トロフィーRをリリースして、この熾烈な競争に一旦勝利しました。しかしFK2の後継であるFK8のタイムはこの275トロフィーRを上回っている7分43秒を叩き出し、再度メガーヌ4 R.S.との間で熾烈な競争が繰り広げられることが予想されます。
ちなみにこのFF最速競争に参戦しているのはルノーとホンダだけではありません。フォルクスワーゲングループは傘下のセアト レオンのハイパフォーマンスモデルであるクプラでメガーヌ3 R.S.を追い抜き、また2016年にはゴルフ GTI クラブスポーツSが、やはり後席を搭載しないなど特殊な構成ながら一度はFK8のタイムを抜くなど、非常に積極的な開発姿勢を見せています。とはいえフォルクスワーゲンには4WDのゴルフRの存在もあり、一般にはこちらの方がメガハッチのライバルとして名前が挙がるかもしれません。
この4WDという構成に視点を広げるとフォード フォーカスRS MK3やアウディ RS3、メルセデス・ベンツ A45 AMG 4MATICといったモデルもライバルとして数えられることになります。
バイヤーズガイド
まず、セグメントを問わずルノースポールが好きだという方、ルノーのホットハッチを楽しみたいという方にとってはメガーヌ4 R.S.は絶対におすすめのモデルです。クラス下のクリオ4 R.S.も魅力的な1台ですが、たとえばDASSが廃止されてしまったことや2ペダルしか選択肢がないことから、ややマイルドな構成となっている点も否めません。その点メガーヌ4 R.S.は、ルノースポールが使えるものを全て注ぎ込んだことが伺える内容で、濃厚なルノースポールの世界に浸れること請け合いです。また、メガーヌ2 R.S.の5ドアにお乗りだった方の代替にも適しているかもしれません。
一方でメーカーを問わず何かしらメガハッチが欲しいという向きには、メガーヌ4 R.S.は特に4WSの4CONTROLを採用した点で賛否両論が生まれるモデルかもしれません。Cセグメントでの4WSの採用例は近年は世界的に存在せず、増してそれをメガハッチと組み合わせることによる効用に関してはほぼ未知数だからです。
特に日本ではバブル期の日本車がこぞって4WSを採用し、これらが悉く長続きしなかったことから4WSは今ひとつ良い印象を持たれない側面があることが否めません。たとえばCセグメントではパッシブ4WSという特殊な例ですがニシボリック・サスペンションを採用した3代目いすゞ ジェミニの例があり、またより小型のモデルですがダイハツ ミラ TR-XX アバンツァート4WSといった事例も存在しましたが、いずれも一世代限りで終わってしまっています。(ジェミニに至ってはいすゞ自身が乗用車事業から撤退してしまいました)
一方で4WSは近年欧州車では特に高性能モデルで有効なシステムとして注目されており、たとえばポルシェ911(991型)のターボやGT3が4WSを採用したことは大きな注目を集めました。その中でルノーは2007年登場のラグナ3でいち早く4WSを採用するなど、そのトレンドを牽引してきた立場でしたから、メガーヌ4 R.S.での4WS採用もメガハッチとして高みを目指すならば、むしろ自然なことと言えるかもしれません。そんなルノーの積極性に共感を覚える方ならば、メガーヌ4 R.S.は相性の良いモデルだと言えるでしょう。
2017年現在のメガーヌ4 R.S.の日本導入見込み
2000年以来日本でのルノー各車種の正規輸入・販売はルノー・ジャポンが行っていますが、ルノー・ジャポンはフルラインアップを展開するという発足当初の販売姿勢から転換し、導入車種を絞る一方で2010年頃からは特にルノースポール関連車種に力を入れるようになりました。ルーテシア3(クリオ3)後期型やメガーヌ3でノーマルモデルが既に欧州で販売されていたにも関わらず、敢えて最後発のR.S.から導入を開始し、認知度を高めた上でラインアップを拡大する方針を取ったことは、その販売戦略を体現するエピソードです。このような取り組みにより日本はルノー全体での販売台数が欧州に比べて著しく少ないにも関わらず、ルノースポールの販売台数で世界有数の地域に成長しました。
そんなわけでメガーヌ4 R.S.の日本導入はほぼ確実であることが見込まれます。但しその導入時期は過去の例を踏まえても2018年以降となることが予想されます。
メガーヌ4 R.S.を並行輸入するという選択肢
上述の通り日本での正規輸入販売の可能性が濃厚なメガーヌ4 R.S.ですが、欧州同様のフルラインアップで展開されるかとなると、やや期待薄かもしれません。過去のルノースポール各車種は日本で需要が高いと考えられる構成に絞られるのが通例で、たとえばメガーヌ3 R.S.では導入当初シャシーカップとレカロシートの組み合わせを標準とし、ルノースポール純正シートやシャシースポールの組み合わせは僅か30台の限定車「メガーヌ ルノースポール モナコ」での導入に限られました。
今回のメガーヌ4 R.S.ではトランスミッションが2種類に増えることもあり、日本仕様から溢れてしまう組み合わせが生まれてしまうケースも十分に考えられます。メガーヌ4 R.S.の日本仕様が求めていた仕様と差異があり、それに妥協したくないという場合は、並行輸入でこだわりの1台を手に入れるのも選択肢のひとつです。
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また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
現地法人公式サイト・コンフィギュレーター
- ルノー 英国 メガーヌ4 RSのオフィシャルサイト (RENAULT UK MEGANE4 RS)
※本記事は2017年10月18日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。