「ホットハッチ」という言葉は、クルマ好きならきっとワクワクするモノではないでしょうか?欧州メーカーでは各社がラインナップしており、熾烈な争いを繰り広げているジャンルですが、では「ニッポンのホットハッチ」にはどんなクルマがあるでしょうか?
今回は、トヨタでいま最も愉しいホットハッチかもしれない一台、トヨタ ヤリスGRMNを徹底解説します。まだ発売予告のみを公式発表したヤリスGRMNですが、予約受付を開始します。トヨタがもうすぐリリースする、ニッポン発のホットハッチをいち早く手に入れてみませんか?
この記事の目次
トヨタ ヤリスGRMNの特徴
ヤリスGRMNは、トヨタのBセグメントコンパクト「ヤリス」をベースとしたスポーツモデルです。日本市場でヤリスは「ヴィッツ」の名前で販売されています。ここでは歴代のヴィッツを含めたスポーツモデルを中心に振り返ってみましょう。
ヴィッツ(ヤリス)の初代モデルは1999年の発売です。日本ではトヨタのボトムレンジを担うスターレットと、ターセル/コルサ/カローラ2三兄弟の後継車種としてデビューしました。1997年の東京モーターショーで参考出品されたコンセプトモデルの「ファンタイム」や、1998年のジュネーブモーターショーで参考出品された「ヤリスコンセプト」がモチーフになっています。このヤリスの名前は欧州仕様の名称に採用され、ヴィッツと同年に販売開始されています。本格的に欧州市場を主戦場とするモデルとして開発されたヴィッツは、欧州車のような合理性と使い勝手の良さからたちまち人気となり、日本のコンパクトカーのレベルを底上げした一台となりました。
その後ヴィッツは、2005年発売の2代目、2010年発売の3代目とモデルチェンジし、どの世代のモデルも日本/欧州市場ともに人気を得てきました。現在販売されているのは2017年にマイナーチェンジされたモデルで、欧州市場のみで販売されていたハイブリッドも追加されています。このモデルチェンジでは、ED2と呼ばれるフランスのデザインスタジオのデザイン案がはじめて採用されました。また、走りや乗り心地、静粛性の向上のため、パワートレインや足回りをはじめとする数多くの部品が改良され、コンパクトカーとしての資質を向上させています。
スポーツモデルは、1999年に初代モデルに設定されたユーロスポーツエディションが最初です。エンジンにこそ手は入っていませんが、欧州仕様のヤリスと同じサスペンションに、日本仕様に装着されていなかったフロントスタビライザーも装備し、走りの質を上げたモデルでした。これは最近、スズキ スイフトがRSグレードで採用している方法と似ています。なお、このモデルはインターネットのみの限定販売でした。まだ個人向けには黎明期であったインターネットのみの販売方法は、当時としてはめずらしいものでした。
2000年にはヴィッツRSが発売されました。RSは通常モデルよりもパワフルな1.5Lエンジンを搭載したスポーツモデル初のカタログモデルで、その後も3代目途中まで設定されました。RSはヴィッツのスポーツモデルとしてだけでなく、以降に限定販売されたスポーツモデルのベースにもなっています。欧州市場では「ヤリス T Sport」の名前で導入されました。
2003年には、トヨタの架装ブランドであるトヨタモデリスタインターナショナルから、RSの1.5Lエンジンにターボチャージャーを組み合わせた「RSターボ」が販売されました。これは開発をトヨタのモータースポーツ部門「TRD」が行ったスペシャルモデルで、専用のターボチャージャーをはじめ、インタークーラーや専用のサスペンションが装備されており、初代ヴィッツでもっともスポーティーなモデルに仕上がっています。
2代目モデルでは、2008年に「TRDターボM」が販売されています。このモデルは初代のRSターボと同じくトヨタモデリスタインターナショナルが販売するカスタマイズカーで、RSをベースに専用のIHI製ターボチャージャーや、スポーツサスペンション、専用ECUなどが装備されています。TRDターボMのMは、モデリスタの頭文字から取られています。
3代目モデルは、RSをベースにしたG’sブランドのコンバージョン車として「RS G’s」が販売されています。G’sは「G Sport」の略で、以前のTRDターボMなどと違い過給機は装備されず、RSをベースに専用のシャーシセッティングや、エアロパーツを装備してます。ほかにもコンビネーション素材のスポーツシートや、ステッチの入ったステアリングなど、RSよりもスポーティかつ上質なプレミアムモデルという位置づけです。RS G’sがトランスミッションにMTだけでなくCVTを選べることからも、このモデルのコンセプトが伺えます。
このほかに、2013年に限定販売された「ヴィッツGRMNターボ」があります。Gazoo Racingが開発したこのモデルは、インターネット販売のみの200台限定でした。「ピュアスポーツ2BOX」のコンセプトのもとに、RS G’sよりもスポーツ性能を追求したモデルとなっているのが特徴で、歴代ヴィッツのスペシャルモデルと同様、1.5Lエンジンに専用のターボチャージャーを装備し、ブレーキもフロントに4ピストンのキャリパーが奢られるなど強化されています。足回りは専用のチューニングが施され、インテリアにも手が加えられています。これらのスペシャルな装備は、GRMNの名前に恥じないものに仕上がっています。限定の200台がすぐ完売するほどの人気で、今回紹介するヤリスGRMNは、このモデルの後継と言われています。このGazoo RacingとGRMNについては別項目で詳しく紹介します。
2017年の東京オートサロンでは、コンセプトモデルとして「ヴィッツTGRコンセプト」が参考出品されました。2017年にマイナーチェンジしたモデルが早速ベースになっており、一見ヤリスGRMNの日本仕様のようにも見えますが、実際にはそうではなく、ヴィッツRS G’sの後継としてG’sよりもスポーティなモデルというような役割であるとメーカーは発表しています。
ヤリスGRMNは2017年のジュネーブモーターショーでコンセプトモデルが参考出品されました。マイナーチェンジ前のヴィッツGRMNターボ同様、Gazoo Racingが手掛けるスペシャルモデルですが、内容はヴィッツGRMNを上回る過激な仕上がりになっているようです。生産は欧州仕様のヤリス同様フランスで行われます。
現時点でトヨタは、ヤリスGRMNを「欧州市場のみで販売予定」とアナウンスしています。欧州市場に導入されるのはWRCなどラリー競技が盛んな市場であることが理由です。そのため日本国内の導入や、新型ヴィッツGRMNとしてのデビューは未定です。
トヨタ ヤリス ジュネーブモーターショー紹介動画(約30秒)
Gazoo Racing/GRMNとは?
ヤリスGRMNを開発したGazoo Racingは、トヨタのモータースポーツ活動に取り組むスペシャリティ集団です。かつては「Toyota Racing」「Lexus Racing」「Gazoo Racing」と別々に活動していたものを、2015年以降は「Gazoo Racing」に一本化しています。
モータースポーツ活動は、ニュルブルクリンク24時間耐久レースや、ルマン24時間レース、そして最近では18年ぶりにFIA世界ラリー選手権(WRC)にヤリスWRCで復帰し、復帰2戦目のスウェディッシュラリーで優勝する快挙を成し遂げ、近年モータースポーツ参戦に積極的なトヨタの強味を示すことになりました。
このGazoo Racingがリリースするコンプリートカーのなかでも、GRMNはクルマ好きに向けて「クルマの夢」「クルマの楽しさ」を提案した特別なモデルです。この名前は「Toyota Gazoo Racing Meister of Nürburgring」の略で、ドイツ・ニュルブルクリンクを舞台に開発し、モータースポーツ活動を通して得た、言葉通り「ニュルブルクリンクマイスター」のノウハウが詰め込まれています。
GRMNは、2009年に限定販売されたiQ GRMNをはじめ、86 GRMN、マークX GRMN、ヴィッツGRMNターボ、iQ GRMNスーパーチャージャーとリリースされて来ました。どのモデルも走る楽しさを最大限に引き出したモデルとなっており、なかにはマークX GRMNのように、ベース車に存在しないMTモデルを専用で作り上げた例もあります。
エクステリア
和のココロを感じさせるエクステリア
ヤリスGRMNのボディタイプは3ドアハッチバックのみです。現在、日本で販売されているヴィッツに3ドアモデルは存在しませんが、以前販売されたヴィッツ GRMNターボも3ドアで導入されました。GRMNモデルが3ドアである理由は、5ドアに比べてボディの開口部が少ないためボディ剛性を確保しやすいことが考えられます。ボディ剛性の対策はこれだけでなく、フロントに専用のタワーバーが装備されるのに加えて、ボディ自体にも補強が加えられています。
通常モデルのヤリスと異なり、フロント/リアのバンパーが専用品になるほか、リアウィングも装備されています。これらは空力特性を意識してのものです。また、専用チューニングが施されたエクゾーストはセンター出しになっており、ヤリスGRMNが「タダモノではない」ことを静かに主張しています。
ボディカラーはホワイト1色のみですが、ボディやサイド部分には赤黒のグラデーションが差し色として入れられています。メーカー自身はこれをヤリスWRCに通じるディテールであると発表していますが、どことなく凛々しい隈取(くまどり:歌舞伎の化粧)を彷彿とさせるものでもあり、「ジャパニーズホットハッチ」としての「和のココロ」を表現しているようにも感じられます。
インテリア
スポーツマインドを掻き立てる専用装備
インテリアの造形は基本的に標準モデルのヤリスに準じますが、走る楽しさを演出するために、数々の専用装備が奢られています。
具体的にはGazoo Racingロゴ入りスポーツシートや、GRMNロゴが入ったレザーステアリング、コンビネーションメーター、スポーツアルミペダルなどが挙げられます。これらの装備により、ドライバーのスポーツマインドはより一層掻き立てられるでしょう。
パワートレイン
ロータスへ提供しているパワーユニットを搭載
エンジンの形式や詳細なスペックは現時点で発表されていないものの、直列4気筒1.8Lエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせた、210PS以上を絞り出すハイパワーユニットであることは明かされています。
このパワーユニットのECUや吸排気系のチューニングはヤリスGRMN専用ですが、エンジンとスーパーチャージャーは、トヨタがイギリスの名門ロータスに供給しているものをベースにしており、恐らくエリーゼSに搭載されている2ZR-FEエンジンではないかと言われています。
このZRエンジンは、かつてヤマハが開発したスポーツユニットもラインナップされていた「ZZエンジン」の後継にあたるもので、2ZR-FEは1.8Lの排気量です。搭載する車種は、トヨタ オーリス、アリオン、プレミオなどがありますが、2012年より2ZZ-GEユニットの後継としてロータス エリーゼSに採用されています。トヨタはエンジン自体をロータスに供給していますが、エリーゼSへの搭載にあたり、スーパーチャージャーの装着やチューニングをロータスが行い、ノーマルエンジンとは別物とも言えるユニットに仕上がっています。これが今回ヤリスGRMNに逆採用され、さらにGazooRacingがチューニングを施すようです。このユニットが選ばれた理由は、ヴィッツGRMNターボのターボチャージャーに比べてスーパーチャージャーの方がコンパクトに抑えられ、さらにレスポンスにも優れるためのようです。
トランスミッションは、このハイパワーユニットの出力に耐えうる専用設計の6MTが装備されています
足回り
走りの愉しさのための専用チューニング
サスペンションには専用設計のザックス製スポーツサスペンションが装備されています。足回りのチューニングは歴代GRMNモデルと同様、ニュルブルクリンク仕込みのマイスターがセッティングしており、トヨタが積極的に参戦しているニュルブルクリンク24時間レースや、ヤリスWRCのノウハウも詰め込まれています。
サスペンションだけでなく、専用のトルセン式LSDも装備しています。タイヤは17インチタイヤを履きこなし、ホイールにはBBS製の専用品が奢られています。これら専用設計のアイテムや、マイスターのチューニングは、すべて「走りの愉しさ」のために惜しげもなくつぎ込まれています。
装備とオプション
装備やオプションの情報は入り次第更新します
グレードやオプションについては正式に発表されていませんが、おそらくボディカラーは1色、パワートレインも1種類のモノグレードになると予想されています。オプションについては新しい情報が入り次第、随時お知らせ致します。
総評
ニュルブルクリンクを舞台にトヨタが本気で攻める一台
ヤリスGRMNは、内外装、エンジン、足回りまで、全てに対して徹底的に手を入れた一台です。かつてのヴィッツGRMNターボと比べ、エンジン自体もベース車両にないものを選択していることからも、今回のヤリスGRMNに掛けるトヨタの気合いが伺えます。
トヨタはこのヤリスGRMN発表にあたり「スピードだけでなく、走る楽しさを提案する」と断言しています。この目標を実現するために、ニュルブルクリンクを熟知するマイスターを中心として、トヨタの持つノウハウとリソースを惜しげもなく投入した贅沢なモデルに仕上がっています。
ニュルブルクリンクは、欧州メーカーを中心に世界中のメーカーがシノギを削ってスポーツモデルを開発する、言わば「ホットハッチの聖地」でもあり、そのぶん、ここで開発されたモデルは欧州市場でライバルとして多数存在します。その中にトヨタが本気で攻め入る「ニッポン発のホットハッチ」がヤリスGRMNなのです。
トヨタ ヤリスGRMNのライバルは?
前述の通り、ニュルブルクリンクを舞台に開発されたスポーツモデルが欧州には多数あります。そのなかでもBセグメントのホットハッチとして、フォード フィエスタSTと、ルノー クリオRS220トロフィーを挙げます。
フィエスタSTはコアカーズを御覧の方ならお馴染みの、欧州フォードのBセグメントモデル、フィエスタのもっとも過激なモデルです。昨年フルモデルチェンジし、ヤリスGRMNと同じ2017年のジュネーブモーターショーでデビューしました。新型フィエスタSTは、旧モデルのST220の後継モデルとなります。ダウンサイジングされた直列3気筒1.5Lにターボチャージャーを装備したEcoBoostユニットは、200PSを叩き出します。旧モデルよりもパフォーマンスを上げつつ、ヤリスGRMNを迎え撃つ好敵手となりそうです。
クリオ RS220トロフィーは、ルノーのBセグメントモデルであるクリオのもっとも過激なモデルで、日本ではルーテシアR.Sトロフィーとして販売されています。デビュ-時期はヤリスやフィエスタよりも前になるものの、直列4気筒1.6Lにターボチャージャーを組み合わせ、最高出力は220PSとライバルよりもハイパワーです。絶妙なセッティングのシャーシによる、優れたコーナリング特性が評判です。トランスミッションはデュアルクラッチトランスミッションのEDCのみで、MTモデルは用意されていません。ハイパフォーマンスをイージーに操れるメリットもあるぶん、変速タイミングなどに不満を感じるユーザーも居るようです。
ほかにも、欧州にはボクスホール コルサVXRや、ミニ JCWなど、数多くのホットハッチがあります。これらも並行輸入できますので、気になるモデルがありましたらお気軽にお問合せください。
トヨタ ヤリスGRMNのベストバイは?
ヤリスGRMNは、前述の通りモノグレードになる可能性が高く、あまり多くの組み合わせはないでしょう。このクルマに「ビビッ!」と来たら、そのまま一択で指名買いというチョイスになりそうです。
先に左ハンドルのモデルが発売になる予定で、右ハンドルの英国仕様については発売が未定です。このモデルをいち早くお届けするために予約受付を開始しますので、気になる方はお気軽にお問合せください。
新しい情報が入り次第、このページで随時お知らせ致します。
トヨタ ヤリスGRMNを並行輸入した場合の乗り出し価格は?
ヤリスGRMNの価格は、まだ正式に発表されていませんが、新しい情報が入り次第こちらでお伝えします。デリバリー開始は2018年と予想されていますが、欧州市場での発注開始にすぐに対応できるよう予約受付を承ります。お気軽にご相談ください。
2017年4月現在、ヤリスGRMNは日本で販売される予定がないため、確実に入手するには並行輸入が現実的な方法です。お気軽にご相談ください。
車両詳細画像ギャラリー
トヨタ ヤリスGRMNのカタログダウンロード
現在カタログ情報は公開されておりません。公開され次第更新致します
トヨタ ヤリスGRMNの現地法人・ディーラーリンク
・英国トヨタ ヤリスGRMN紹介ページ(TOYOTA UK TOYOTA MEDIA SITE)
おすすめ関連グッズ
今回のおすすめグッズは、Gazoo Racingオフィシャルのチームキャップです。ヤリスGRMNと同じくGazoo Racingのイメージカラーの赤と黒を配置しており、Gazoo Racingのロゴが入っています。モータースポーツシーンで活躍するトヨタチームを、これをつけて応援に行ってみるのも如何でしょうか?
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