かれこれ15年程前のこと、「トヨタが作った欧州車」というキャッチコピーを掲げた新型車が日本でデビューしました。その名はトヨタ アベンシス。キャッチコピーの通り、英国で生産され日本へ「逆輸入」されたアベンシスは、玄人好みなモデルとしてファンを獲得しました。
現在も販売されているアベンシスですが、日本に導入されていない現地仕様車がまだあるのです。今回はトヨタ アベンシスのセダンやディーゼルモデルにスポットを当てて解説、並行輸入の情報についても掲載しています。
この記事の目次
モデルの概要
アベンシスはトヨタのDセグメント級のモデルで、欧州市場ではトヨタブランドのフラッグシップの役割も担っています。
初代モデルのデビューは1997年。欧州市場で販売されていたカリーナE(日本では10代目:T190型コロナ)の後継車種としてデビューしました。ボディタイプは、セダン、リフトバック(5ドアハッチバック)、ステーションワゴンの3種類で、英国トヨタ(TMUK)で生産されました。日本ではコロナの後継車種としてコロナ・プレミオがデビューしたこともあり、初代アベンシスは導入されませんでしたが、アベンシスのステーションワゴンに近いモデルが日本でカルディナ(2代目)として販売されました。
初代モデルの途中で、派生モデルの7シーターミニバン、アベンシス ヴァーソが追加されました。日本では2代目イプサムとして販売されたモデルです。現在ではアベンシスから独立して、ヴァーソの名前で販売されています。
2代目モデルは、2002年のボローニャモーターショーで発表され、2003年から欧州市場で販売されました。初代モデル同様、ボディタイプはセダン、リフトバック、ステーションワゴンの3つです。2代目モデルは冒頭の通り日本へも導入されましたが、ビスタ/ビスタアルデオ(ステーションワゴン)の実質的な後継車種としても役割も担っており、セダンとステーションワゴンの両方が用意されました。リアには「MADE IN EUROPE」のステッカーが貼られるなど、英国生産の輸入車として積極的にアピールしていました。
現行型となる3代目モデルは、2008年のパリモーターショーでデビュー。ボディタイプはセダンとステーションワゴンのみとなり、リフトバックは廃止されました。3代目も同じく生産は英国トヨタのバーナストン工場で行われ、現地ではカタログなどにも「Build in Britain」と打ち出し、英国生産モデルであることを積極的にアピールしています。2012年には最初のフェイスリフト、2015年には2度目のフェイスリフトが行われ、その際にパワートレインも一新しています。
日本市場では、2代目モデルが2008年に生産終了になって以降、3代目モデルの導入は、発売当初見送られました。しかし、クラウンエステート、マークIIブリッド、カルディナとトヨタのステーションワゴンが次々と廃止されたこともり、2011年に期間限定で輸入再開されました。3代目モデルはワゴンモデルのみのラインナップで、セダンは見送られています。
日本でコロナの後継は、コロナプレミオからプレミオと進化しましたが、アベンシスは欧州で独自の進化を遂げました。しかし、アベンシスが一貫して、かつてのコロナと同じくT+3桁の数字の型番を採用していることからも、アベンシスがコロナをルーツとした系統であることが伺われます。
トヨタ アベンシス CM動画(約30秒)
ハイライト
エクステリア
フェイスリフトで一気にデザインコンシャスに
アベンシスのボディタイプはセダンとステーションワゴンの2タイプで、日本に導入されているステーションワゴンはツーリングスポーツと呼ばれています。どちらのモデルもフロントからリアに掛けてなだらかなラインを描き、ワンモーションフォルムのような塊感のあるシルエットです。
初代以降、3代目のはじめまでは、トヨタの真面目さを表したかのようなコンサバティブなデザインでしたが、フェイスリフトの際にキーンルックを採用し印象が一変しました。オーリスやヴァーソなどでも取り入れられたこのデザインは、アベンシスを一気にデザインコンシャスなエクステリアに変身させています。
設定されるボディカラーは、このクラスでは多い9色が設定されています。さらにホイールはベーシックな16インチのスチールから、スポーティな18インチのアルミまで、10タイプが設定されています。
インテリア
欧州トヨタのフラッグシップとして十分な質感とユーティリティ
2度目のフェイスリフトの際に、インテリアも徹底的に見直されました。その結果、質感・装備共に欧州トヨタのフラッグシップに相応しいものになっています。
室内の広さもアベンシスの美点です。シートも大振りで膝下や頭上にも余裕があり、5人フル乗車でも窮屈さは感じません。ラゲッジ容量は、ツーリングスポーツはもちろん、セダンモデルでも十分な容量を誇ります。
シートはベーシックなファブリックをはじめ、グレードによってスポーティなレザー/アルカンターラコンビシートや、フルレザーシートも設定されています。
パワートレイン
新投入されたBMW製ディーゼルが魅力
パワーユニットはガソリンのほかに、日本未導入のディーゼルが設定されています。
ガソリン
- 直列4気筒1.8L Dual-VVTiバルブマチック 2ZR-FAE 147PS
ガソリンは欧州でヴァーソなどに積まれる2ZRエンジン1種類のみの設定です。自然吸気ならではの自然なフィールが魅力のバルブマチック付きユニットで、日本ではプレミオ/アリオンに積まれています。なお日本に導入されている2.0Lガソリンは英国仕様には設定されていません。
ディーゼル
- 直列4気筒1.6L D4-Dクリーンディーゼル 1WW 112PS
- 直列4気筒2.0L D4-Dクリーンディーゼル 2WW 143PS
1WW/2WWエンジンは、どちらも2015年のフェイスリフトの際に搭載されたBMW製のユニットです。フィーリング・燃費ともに評判がよく、BMWならではのユニットと言えるでしょう。2.0Lの2WWは日本に導入されるBMW 320dのエンジンに近いものと言われています。
トランスミッションは6速MTが基本となり、1.8LのガソリンモデルのみCVTが設定されています。
サスペンション
再セッティングされたサスペンション
サスペンションは、フロント:マクファーソンストラット、リア:ダブルウィッシュボーンです。フェイスリフトの際にサスペンションにも手が入れられ、当たりは柔らかく、しなやかになり、欧州仕様としてイメージされがちな硬めのものとは一線を画しています。
とはいえアベンシスが退屈なモデルなわけではありません。日本では落ち着いたイメージもありますが、イギリスでは古くから人気のあるツーリングカー選手権「BTCC」にも参戦しており、フォーカスSTやシビック タイプRなどの名だたる強豪と熾烈なバトルを繰り広げ、2017年の開幕戦ではアベンシスが表彰台を制しています。
トヨタ アベンシス BTCCレース仕様紹介動画(約2分30秒)
参考スペック
TOYOTA AVENSIS TOURING SPORTS 1.6 D4-D Business Edition Manual
寸 法 ▶︎全長×全幅×全高=4,820×1,810×1,480mm
ホイールベース:2,700mm トレッド前/後 1,550 x 1,540mm
エンジン▶︎水冷ディーゼル 直列4気筒 DOHCターボ フロント横置
1,598cc 78.0mm x 83.6mm 16.5:1 82kW/4000rpm 270Nm/2250rpm
駆動方式▶︎FF 6速MT
懸架装置▶︎前:マクファーソン
▶︎後:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ▶︎前:ベンチレーテッド・ディスク 後 ディスク
タイヤ ▶︎前:-/- R- 後:-/- R-
燃料容量▶︎60L 車両重量▶︎1,430kg 最高速度▶︎184km/h 0-100km/h加速▶︎11.7秒
燃 費 ▶︎25.0km/L(欧州複合基準)-m/L(JC08モード日本仕様参考値)
価 格 ▶︎19,245ポンド(イギリス仕様車)
※その他の仕様のスペック詳細はカタログ情報(リンク)をご覧ください
ライバルモデル
欧州Dセグメントに属するアベンシスのライバルとして、ボクスホール インシグニア、シュコダ シュパーブ、フォード モンデオの3車種を挙げます。
インシグニアはボクスホールのフラッグシップモデルです。スタイリッシュなエクステリアデザインや質感向上により、ボクスホールの潮流を変えた一台として話題になったモデルです。2017年にフルモデルチェンジした二代目モデルは美しいボディラインに磨きを掛けて登場。アベンシスでは廃止されてしまった5ドアモデルもインシグニア グランドスポーツとして設定されています。
シュパーブは東欧チェコの自動車メーカー、シュコダのフラッグシップモデルです。同じグループのフォルクスワーゲンパサートとプラットフォームを共有化しつつも、近年はフォルクスワーゲンを飛び越し、アウディに迫るほど質感を向上させています。シュパーブも5ドアモデルをラインナップしていますが、一見セダンのように見える2段階で開くハッチバックを採用しており、便利さとフォーマルさを両立しているのが特徴です。
欧州フォードのフラッグシップモデルがモンデオです。フォードならではの優れた運動性能はもちろんのこと、たった1.0Lの排気量でも十分なパフォーマンスと低燃費を実現するEcoBoostエンジンの存在もライバルにはないものです。そしてプレミアムモデルであるヴィニャーレの存在も魅力のひとつと言えます。
バイヤーズガイド
グレード構成はベーシックなActive、充実装備のBusiness Edition、プレミアムなDesignの3つをベースラインにし、Business EditionをベースにLEDヘッドライトや17インチアルミホイールなど装備を充実させたBusiness Edition PLUSと、さらに18インチアルミホイールや、パノラマルーフなどを装備したExcelがあります。
アベンシスを選ぶなら、ツーリングスポーツ(ワゴン)のBusiness Editionグレードに、1.6Lディーゼルと6MTの組み合わせは如何でしょうか。日本では選択できないディーゼルと6MTの組み合わせは、ドライビングを楽しめるのはもちろんのこと、低燃費×軽油の安さによるランニングコストの低さも魅力です。
なおグレード名にBusinessとありますが、営業車という意味合いではありません。欧州ではこのクラスのモデルはカンパニーカーとして導入されることが多く、ビジネスマンも満足する装備の充実したグレードという意味合いで用いられています。
日本に導入されていないスポーティさとフォーマルさが両立したセダンモデルや、さらにハイパワーな2.0Lディーゼルも選択可能です。
アベンシスは、欧州車らしいドライバーオリエンテッドなモデルです。目を見張るようなズバ抜けたスペックはありませんが、基本性能を高い次元でバランスさせている点が魅力といえます。
トヨタ アベンシス プロモーション動画(約1分45秒)
2017年現在のアベンシスセダンやディーゼルモデルの日本導入の可能性
日本仕様の現行モデルは2.0Lガソリン+CVTのステーションワゴンのみで、ディーゼルエンジンやセダンは今のところ導入されていません。ディーゼルについては、トヨタは日本市場での展開に積極的でないことに加え、日本市場においてセダン自体が縮小傾向にあるため、どちらも導入される可能性は低いものと思われます。
並行輸入という選択肢
日本市場では販売されていないモデルもあるアベンシスですが、並行輸入を行えば日本で所有することができます。
一例としてコアカーズを運営する並行輸入者販売店のYMワークスでは、最新の為替レートを反映したアベンシス ツーリングスポーツ 1.6 D4-D Business Edition Manualモデルの乗り出し価格を案内しています。下記表では最新の為替レートに基づいた価格を表示しています。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
また並行輸入に関しては、関連記事も併せてご覧ください。
車両詳細画像ギャラリー
関連リンク
カタログダウンロードページ
- トヨタ 英国 アベンシス カタログ (TOYOTA UK AURIS)
現地法人公式サイト・コンフィギュレーター
- トヨタ 英国 アベンシスのオフィシャルサイト (TOYOTA UK AVENSIS)
- トヨタ 英国 アベンシスのコンフィグレーター (TOYOTA UK AURIS TOURING SPORTS CONFIGRATOR)
※本記事は2017年12月9日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。