ミドルサイズのピックアップトラック、フォード レンジャー(Ford Ranger)をご存知でしょうか?
フォードといえばアメリカ車、アメリカ車といえばフルサイズのピックアップトラックという印象を持たれる方も多いかもしれません。実際に北米ではフォード F150などに代表される、全長6メートルを超えるフルサイズのピックアップが人気です。
一方、北米以外の地域、例えばヨーロッパでは、ミドルサイズのピックアップの人気も高くなっています。ヨーロッパの都市部と道路事情が近い日本でも、フルサイズは大き過ぎて持て余してしまうため、ミドルサイズが人気なのです。ただしミドルサイズとはいえ、その全長は5〜5.5m程度。トヨタのランドクルーザーの全長がほぼ5mなので、その大きさはなかなかの迫力があります。そしてレンジャーも、このミドルサイズのピックアップトラック市場に投入されているモデルなのです。
そんなフォード レンジャーの最新モデルは2011年に登場、2015年にはフェイスリフトを受け、フェイスリフトでフロントマスクを中心にガラッとイメージが変わり、装備もより充実しました。今回はそんなフォード レンジャー、通称レンジャー T6について徹底解説します。魅力的な外観と充実した装備のフォード レンジャー T6を、英国仕様の右ハンドルを、お好みの1台に仕上げて並行輸入してみませんか?
この記事の目次
グローバルモデル、フォード レンジャー”T6″の特徴
フォード レンジャーの特徴は、ピックアップトラック=北米市場主体のクルマというかつての常識を覆すように、グローバルモデルとして開発されている点です。レンジャーが販売されているのは実に世界180の市場に及びます。これは”One Ford”と呼ばれる世界戦略に基づくもので、近年見られるフォード マスタング(Ford Mustang)の全世界での展開や、フォーカス RS Mk.3の北米進出とも共通したものです。開発はオーストラリアで行われ、生産はタイ、南アフリカ、そしてアルゼンチンなど、こちらも大陸をまたにかけたスケールで展開されています。
ただし、グローバルモデルのレンジャーは意外にもアメリカ合衆国やカナダなど、ピックアップトラックの本場とも言うべき北米市場では販売されていません。これは北米で人気のフルサイズモデル、F-150と価格が近くなってしまうために、ラインアップするのが難しいという事情があるようです。
とはいえ元来レンジャーは北米発祥の車種でした。1982年に北米で初代が登場したフォード レンジャーは、1993年には当時提携関係にあったマツダ Bシリーズ(日本ではプロシードとして知られています)をベースとしたモデルとして2代目に移行、その後も細部のアップデートを重ねながら北米でのフォードのピックアップトラックのボトムレンジを担うモデルとして販売されてきましたが、2012年にその長いモデルライフに幕を下ろしました。現在の北米市場では、レンジャーの抜けた穴はF-150のショートホイールベースモデルが補完しています。
グローバルモデルのレンジャーの登場当時、北米のレンジャーはモデル末期ながら生産が続けられていました。そこで区別のために新しいレンジャーには”T6″を併記するケースが多く、それが北米でのレンジャー販売終了後も続いています。このT6はフォルクスワーゲン T6のような第6世代を示すものではなく、開発時のコードネームに由来するものです。
こうして北米から離れたモデルとなったレンジャー T6は、世界的なトレンドや環境への配慮のためにエンジンのダウンサイズが行われており、エンジンはガソリン4気筒、ディーゼル4気筒と5気筒と、直列エンジンのみをラインアップしていますが、仕向地によってラインアップは異なり、例えばイギリスではディーゼルエンジンに限られます。またF-150にラインアップされている排気量5.0LのV型8気筒といった、大排気量マルチシリンダーの設定は、どの地域にもありません。
英国仕様のレンジャー T6には、レギュラーキャブ、スーパーキャブ、ダブルキャブの3つのボディタイプ、XL、XLT、リミテッド、ワイルドトラックの4つのグレードが設定されています。ユーザーはこれらのボディタイプ、グレード、そしてエンジンについて、好みの組み合わせを選ぶことができます。実際にはボディタイプやグレード、エンジンはある程度紐付けられており、何もかも自由に組み合わせることはできないのですが、さまざまな需要に対応するように工夫されたラインアップが設定されています。
それでは、その細部について詳しく見ていきましょう。
フォード レンジャー ワイルドトラック PR動画(約1分)
3つのボディタイプが選べるフォード レンジャー T6
上で触れたとおり、フォード レンジャー T6はレギュラーキャブ、スーパーキャブ、ダブルキャブの3つのボディタイプが選べます。ホイールベースは全てのボディタイプで3,220mmですが、レギュラーキャブのみ全長が5,277mmと少し短く、スーパーキャブとダブルキャブでは5,362mmとなります。それぞれ性格が異なるので、レンジャー T6を購入する場合、まずはこのボディタイプを真っ先に選ぶことになるのではないでしょうか。
レギュラーキャブは、いわゆるシングルキャブで、運転席と助手席だけのキャビンを持ち、荷台に広い面積を確保した仕様となります。全長が少し短いとはいえ、荷室長は2,317mmともっとも長く、積載性ではレンジャー T6の中でも随一です。その高い実用性から業務用途にも適していて、イギリス仕様のカタログでは農場でワラを積み降ろししている様子が描かれています。またその性格からグレードはボトムレンジのXLに限られていますが、シンプルな雰囲気に趣味の用途でも惹かれる方も多いかもしれません。最大積載量は1,269kgです。
スーパーキャブはキャビンを延長し、観音開きのリアドアを追加することで2+2としたモデルです。リアスペースはやや狭めですが、雨に濡れないトランクスペースとして活用することも想定されています。荷室長は1,840mmとなっています。例えばバイクなど、趣味のトランスポーターとしての用途が想定されており、大きな荷物や汚れるものは荷台に、濡らしたくない道具や小物はキャビン内のトランクに積むといった使い分けが可能です。また休憩のときにフロントシートを大きく後ろに倒せるのもレギュラーキャブに対する優位性ですし、もちろんいざとなれば5人乗れる安心感があります。グレードはXLに加えて、中間グレードのXLT、上級グレードのリミテッドが選べます。最大積載量は1,230kgです。
ダブルキャブはキャビンを最大限延長して、定員を5名としたモデルです。荷室長は1,549mmと短くなりますが、常時5名乗れるので、ファミリーカーとして使ったり仲間と一緒に出かけたりと、色々な可能性が生まれます。XL、XLT、リミテッドの基本3グレードに加えて、加飾を抑えてワイルドなルックスを持つワイルドトラックの全てが選べるのは、このボディタイプのみとなります。最大積載量は1,199kgです。
いずれのボディタイプでも最大1,560mm、ホイールアーチ部1,139mmの荷室幅、511mmの荷室深さは共通です。
フェイスリフトで一新されたフォード レンジャー T6のエクステリア
2015年にフェイスリフトを受けたフォード レンジャー T6。これが本当の”フェイスリフト”だと言わんばかりに、フロント回りは新型車と思えるほど大胆に生まれ変わっています。丸みを帯びたシンプルな印象から、シャープで迫力のある顔つきになり、知らない人が見ればフルモデルチェンジとも思えるほどの変更を受けました。
バンパーまで食い込むようなデザインのフロントグリルと、横に細長くなったヘッドライトは、ワイルドな雰囲気作りに大きく寄与しています。大きく張り出した前後のフェンダーも頼もしい印象を与えます。
エクステリアはグレードによって差別化されています。
XLはメッキなどを使わず質実剛健とした雰囲気を持ちます。キャビンの後ろにある鳥居も、トラックらしい雰囲気を引き立てます。足元は16インチのスチールホイールです。
XLTはXLに対して、フロントグリルやドアミラー、ドアノブなどにメッキ加飾が増え、またサイドステップやフォグランプも追加されることで、やや乗用車的な雰囲気が強まります。ホイールは16インチですがアルミホイールへと変わります。
リミテッド(Limited)はXLTに加えてフロントにアンダーガードを、リアバンパーにもメッキ加飾を追加、また鳥居に代えて、メッキのスポーツバー(荷台中ほどからルーフに斜めにかかるチューブ状のパーツ)が装備されます。ピックアップトラックといえば、このスポーツバーを連想される方もいらっしゃるのではないでしょうか。ホイールのデザインはXLTに近いですが、17インチにインチアップされています。
ワイルドトラック(Wildtrak)は事実上の最上級モデルですが、XLTとは異なるコンセプトを持ちます。メッキ加飾のほとんどを廃し、前後バンパーをブラックに変更することで、XLと比べてもワイルドなルックスが演出されています。ルーフにはアルミニウム製のルーフバーが加わり、スポーツバーはスポーティーな印象を持つエアロタイプとなります。
上質なインテリアと充実した快適装備
フォード レンジャーのインテリアは、ピックアップトラックとは思えない上質さです。レイアウトは基本的にフォード フォーカスやフォード モンデオと同じで、一般的な乗用車から乗り換えても違和感を感じたり、特別に気を遣う部分はありません。
スピードメーターはXLとXLTではスピードメーターとタコメーターを左右に配した2眼メーターで、中央には情報ディスプレイが据えられています。一方リミテッドとワイルドトラックではスピードメーターを中央に配し、左右フルカラーの大型情報ディスプレイを配置しています。例えばどちらかのディスプレイに、任意にアナログの仮想タコメーターを表示するなど、状況に応じた幅広い使い方が可能です。
またXLではインテリアの加飾は抑えられていますが、XLT以上のグレードでは空調の吹き出し口がクロームに縁取られて高級感が演出され、XLTとリミテッドではステアリングがシルバーで加飾されています。ワイルドトラックでは敢えて雰囲気を重視して、ステアリングは黒1色とされています。
またワイルドトラックではダッシュボードも革張りとなり、これもまたワイルドトラック専用のオレンジのシートに合わせて、随所にオレンジのステッチが施されており、高級感に遊び心も加えています。
居住性については、ボディの大きさから想像できるように広々として快適です。ダブルキャブのリアシートはヘッドクリアランスを975mm、レッグスペース(座面後端から前席背面まで)を902mm確保、十分なスペースを持ち、また乗降性ともに問題ありません。
2種類、3仕様のディーゼルエンジン
レンジャー T6の英国仕様には、2.2Lの直列4気筒と3.2Lの直列5気筒、2つの排気量のディーゼルエンジンが用意されています。いずれもDuratorq TDCiと呼ばれる直列4気筒ターボディーゼルエンジンで、2017年モデルからはユーロ6に対応しています。
2.2Lという排気量のディーゼルエンジンはフォードのラインアップではよく見かけるものですが、実は2種類あり、”Puma”と呼ばれるフォード自製のZSD型エンジンと、PSAが開発して”HDi”の名前で知られているDW型エンジンの2.2L仕様であるDW12をベースとしたものが、いずれもDuratorqとして販売されています。レンジャー T6で採用されているのはPumaで、ワイルドトラック以外の全てのグレードで160ps、385Nm仕様を選択できます。また、2017年モデルから追加されたレギュラーキャブのFR仕様のために130PS仕様も用意されています。
3.2Lも同じ”Puma”エンジンで、同シリーズ唯一の直列5気筒、そして最大の排気量を持ちます。最高出力は200PSと排気量の割には控え目に感じられますが、470Nmのトルクは圧巻です。この3.2Lエンジンは、ダブルキャブかつリミテッド以上のグレード専用となっています。特にワイルドトラックを選ぶと、必ずエンジンは3.2Lとなります。
いずれも2トンを超える巨体を軽々と前に押し出すのに十分なパワーとなっています。ピックアップトラックという車の性格上、スポーツカーのような加速や最高速は想定していませんが、とはいえ100km/hまでの到達時間は2.2LのMTで11.8秒、3.2LのATで10.6秒と、コンパクトカーは置いていけるだけの性能は持っています。低回転から最大トルクを発揮するディーゼル特有のエンジン特性の恩恵です。
トランスミッションは6MTを基本として、ダブルキャブのリミテッド以上のグレードでは6ATを選択できます。
我慢の必要はない良好な経済性
ピックアップトラックはガソリンの安い北米の乗り物だから、燃費の悪さは諦めなければいけないという考えも、グローバルモデルであるレンジャー T6にとっては古いものです。仕様によっては2トンを下回る重量と、マルチシリンダー大排気量エンジンからの決別は、レンジャー T6の経済性に一役買っています。重量の軽さは、装備が充実した上級モデルでもキャビンは2列分しかなく、荷台部分が軽量に仕上げられているというピックアップトラックゆえの持ち味でもあります。
もっとも燃費の良いスーパーキャブの6MT仕様は、欧州複合モード燃費で15km/Lを上回ります。また、その排気量から燃費については悲観的になりそうなダブルキャブの3.2L、6AT仕様でさえも同モードで約11.2km/Lのカタログデータを持ちます。
もちろんピックアップトラックらしい大排気量エンジンは、これはまた独特な魅力があるので一概に燃費だけで優劣を語ることはできません。しかしレンジャー T6の経済性は、ガソリン代を気にしてちょっとしたドライブを我慢する必要もありませんし、普段使いも十分に現実的です。
ちなみに燃料タンクは80Lと、ここはしっかりと確保。ガソリンスタンドなどがない山間に入り込んでも、燃料の残りを気にする必要はありません。
どんな道にも対応する走破性と耐久性、最新電子制御
レンジャー T6は頑強なラダーフレームを採用。悪路に踏み込むことにも躊躇せずに済む、高い強度を持っています。近年ピックアップトラックによっては乗用車のようなモノコックフレームの採用例も増えており、こちらもより軽量化を狙ったり、乗用車ライクな走りを求めたりという点では優位性がありますが、世界中で販売されるレンジャー T6がラダーフレームを採用しているのは理に適った設計だと言えます。
サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン、リアはリジッドを採用。マルチリンクを採用するライバルもいますが、レンジャー T6ではオフロードでの実用や走破性を重視しています。とはいえフロントは独立懸架なので、たとえば前後リジッドとしてオフロードに特化したクロスカントリーモデルに比べれば、舗装路での快適性も確保されています。しかしやはり、レンジャー T6がその真価を発揮するのは、普通乗用車が乗り入れることさえ不可能な悪路です。
アプローチアングル、デパーチャーアングルはともに28度。最低地上高は229mmあるので、相当な段差も越えることが可能です。また、横方向は最大35度の傾きでも真っすぐに走れます。駆動方式はフルタイム4WDではなく低μ路で真価を発揮するパートタイム4WDが採用されています。パートタイム4WDは全後輪が直結するので、舗装路ではタイトコーナーブレーキング現象を起こし4WDが常用できないという欠点がありますが代わりに空転を起こしにくく、レンジャー T6は悪路でスタックした場合などの脱出性を優先しています。もちろんトランスファーボックスは電子制御で、車外に出ることなくシフトノブ横のスイッチひとつで後輪駆動と4WDを選べます。また4WDモードの場合、副変速機のローレンジも選択できます。
なお、レンジャー T6には経済性を重視した後輪駆動モデルも設定されていますが、2016年モデルまでのスーパーキャブへの設定に代わり、2017年モデルからはレギュラーキャブに変更されています。
卓越した牽引性能もレンジャー T6の魅力です。強固なラダーフレームを活かして最大で3.5トンの牽引能力を持ち、重量級のキャンピングトレーラーにも対応します。また近年の欧州車では純正トウバーを装着した場合、ESC(横滑り防止装置)の拡張機能としてトレーラー牽引時のプログラムが用意されるケースが増えていますが、レンジャー T6ではより本格的なマネージメントシステムとして、「トレーラー・スウェイ・コントロール」と呼ばれるプログラムを標準実装。高速コーナーなどでトレーラー起こす蛇行を強力に抑制します。
他にもレンジャー T6はESCの拡張機能として、積載荷重に応じてESCの制御を最適化するLAC(Load Adaptive Control)、微低速走行時に車輪の空転を強力に抑制するトラクションコントロール、強力なトルクに対して車体がバランスを失い横転するような危険な運転を警告して体制を立て直すロールオーバー・ミティゲーション、オフロードの下り坂で最適なブレーキ制御で速度を一定に保ちハンドル操作に集中できるヒルディセントコントロール、フル積載時でも上り坂での後退を確実に抑制するヒルスタートアシスト、巨体を確実に停止させるEBA(Emergency Brake Assit)など、多数の運転支援システムを持ちます。もちろんこれらの拡張機能が活きるのは、強固なレンジャー T6のシャシーがあってこそです。
なお、渡河性能は800mm。日本でも大雨の際に道路が冠水して、車が立ち往生してしまう光景を見かけますが、レンジャー T6で運転中にそのような状況に巻き込まれても、脱出できる可能性も高くなります。
フォード レンジャー 紹介動画(約3分)
まとめ:フォード レンジャーはOne Fordを体現している
2000年代以降のグローバリズムの進展によって、自動車メーカーに限らず色々な分野で世界規模での商品開発が進むようになりました。しかしその商品開発アプローチは、各仕向地でそれぞれ異なる商品を展開する場合と、全世界で通用する万能型の商品を開発する場合とに分かれています。
自動車においては、トヨタやホンダ、ルノー・日産連合が、各地域に向けて商品の作り分けを行っていることが知られています。たとえばホンダ シビックや日産 パルサーなど、かつては日本でも馴染みの深かったモデルは、今は事実上の欧州車になりました。
一方、フォードが取っているのは冒頭でも触れた”One Ford”という戦略で、世界でどの地域でも基本的には同じモデルを展開するという戦略です。これは仕向地の流行などに対応することができないのでキャラクターが立ちにくく、また日本のきめ細やかな商品の作り分けに馴染んでいると、ともすれば手抜きのようにも感じられることもありますが、全てのリソースをひとつに注ぎ込まれた成果は、一見しただけでは分からない骨太な商品として成熟し、深みのある魅力を放ちます。
今回のフォード レンジャー T6も、世界のどこでも通用する”One Ford”の象徴とも言うべき存在です。と言いつつも、ピックアップトラックの本場であるアメリカで販売されておらず、これがまさに難解さを際立たせているのですが、細部を見るとピックアップトラックに求められる耐久性や走破性などを基本設計のレベルで全て満たし、その上でフォード最新の電子制御やドライビング環境を用意することで、まさに世界中で通用する万能車として仕上げられているのです。
またピックアップトラックというジャンル自体も近年は日本で馴染みが薄くなっていますが、かつてはトヨタ ハイラックスが相当な人気を博し、また2014年に限定販売されたランドクルーザーのピックアップ仕様が注目を浴びるなど、日本でもピックアップトラック特有のワイルドな雰囲気、そして雰囲気だけに留まらない使い勝手の良さを知る方も少なくありません。
ピックアップトラックは、アウトドアスポーツのトランスポーターとして活用できるのはもちろん、急な用事で大きな荷物を運んだり、はたまた着脱可能な居住スペースである”ピックアップキャビン”を搭載して、トラックキャンパー(いわゆるトラキャン)として使ったりと、あらゆる可能性を秘めています。
万能のピックアップトラックと、世界のどこでも通用する”One Ford”の相性はまさにベストマッチ。ピックアップトラックのファンの方にはもちろん、今まで興味がなかったという方にも注目してただきたいモデルです。
フォード レンジャー T6のライバルは?
ミドルサイズのピックアップトラックで、フォード レンジャー T6とよく比較されるのはフォルクスワーゲン アマロックやトヨタ ハイラックス、日産 ナバラ NP300などです。
アマロックは、ややプレミアム色の強いモデルとして展開されています。特に最上級グレードであるアタカマは、VWが考える高級感に溢れたピックアップトラックらしからぬ装備が魅力です。ヘッドライトを凹の字に囲むLEDデイライト付きバイキセノンヘッドライトが目を引きますが、フルレザーのシートは後席の座面を3分割で背もたれ側にたたむことができ、室内にも高さのある荷物を置くことができるなど、ユーティリティ性にも優れます。エンジンは2リッターのディーゼルツインターボ。180PS/420Nmのパワーを8速ATを介して19インチアルミの4輪に伝えますが、こちらは条件を問わず使えるフルタイム4WDが採用されています(MTではパートタイム4WD)。最上級仕様の価格は£35,931、これはレンジャー T6のワイルドトラックを上回る価格で、ピックアップトラックの高級車と呼んでも良い内容です。
ハイラックスは1968年から50年近くに渡って世界中で愛されており、2016年5月には8代目にモデルチェンジしました。新型はフロントフェイスが一新され、より洗練された印象に。新開発のフレームを採用し、ボディ剛性が先代より20%アップしています。インテリアも最新のトヨタ車らしい未来的なデザインとなっています。フルLEDのヘッドライトなど先進装備も充実。英国仕様の2.4Lディーゼルエンジンは204PS/400Nmを発揮。最上級グレードのInvincible Xは、6速ATで£35,265となっており、こちらもアマロックの向こうを張るプレミアム色の強いモデルを揃えて展開されています。
ナバラ NP300は、もっともレンジャー T6と比較されるモデルかもしれません。NPとはNissan PickUpを意味しており、NV400などと同様に、日産の商用車レンジの命名法に従った車名を持ちます。価格はライバル勢よりもやや抑えられており、またラダーフレームを持ちながらもマルチリンクサスを採用するなど、オンロードでの走行性能も重視されています。
他にもライバルとしてはいすゞ D~MAXや三菱 L200と、そのOEMであるフィアット フルバック(Fiat Fullback)などが挙げられます。
レンジャー T6をライバルと比べると、パートタイム4WD、リジッドサスなど、オフロードカーとしても使える基本的な構成要素を持ち、ヘビーデューティーに使い倒せること、それでいてライバルに引けを取らない装備の充実度や快適性を併せ持ち、価格設定も若干割安な点に強みがあります。
フォード レンジャー T6の主な装備とオプション
レンジャー T6の装備やオプションのほとんどは、基本的にグレードによって決定されます。
唯一レギュラーキャブの設定があるボトムグレードのXLは、ラジオ、Bluetooth、USB、AUX入力に対応したシンプルなオーディオを装備。他グレードでは標準となるクルーズコントロールやタイヤプレッシャーモニタリングシステム、サイドステップなどはオプションとなります。またエアコンも唯一非装備のグレードですが、こちらも4WDモデルならばマニュアルエアコンをオプションで追加できます。
XLTでは、マニュアルエアコンなどXLでオプション扱いだった装備をあらかじめ標準装備。オーディオもCD再生機能やボイスコントロール機能がついた、4.2インチのタッチパネル対応ディスプレイオーディオであるFord SYNCにアップグレードされます。また、さらに上級モデルに搭載されているオートエアコンや、上級ディスプレイオーディオのFord SYNC2もオプションで対応できます。ステアリングは革巻きとなります。
リミテッドではオートエアコンやFord SYNC2が標準装備されます。SYNC2のタッチパネルは8インチに拡大され、後席からも良好な視認性を持ちます。またSYNC2はカーナビゲーション機能やリアビューカメラにも対応しますが、これはオプション扱いです。シートはフルレザーとなり、高級感も加わります。クロームのリアバンパーはステップとしての機能も持ち、後退のときに重宝するパーキングセンサーも備わります。
ワイルドトラックはSYNC2のカーナビゲーション機能やリアビューカメラも最初から搭載されています。またレザー仕上げのダッシュボードや、機能性の高いツートンカラーのハーフレザーシートで彩られた車内を、7色から任意に選択できるアンビエントライトが彩ります。
そのほか、全てのダブルキャブ仕様でフロントセンターコンソールの冷風送風機能が、またリミテッド以上のダブルキャブで、フロントパワーシートが装備されています。
色々な用途に使えるように、電源も豊富です。フロントには12Vソケットを2つ装備、またスーパーキャブとダブルキャブではリアにも12Vの電源を用意しているほか、オプションのパワージェネレーターを選べば230V、50Hzの電源をエンジンから取り出すことができます。これはウィンチを搭載したり、小型クレーンを搭載した場合の電源として利用することが想定されています。
レンジャー T6には他にも色々なオプションがありますが、特にパックオプションが2つ設定されている点が目を引きます。オフロードパックは4WDの全仕様で選択可能で、エンジンやトランスファー、燃料タンクにプロテクターが追加され、さらに不整地での走行性能をさらに盤石なものとするリアデフロック機構も追加されるという内容です。ドライバーアシスタンスパックはリミテッドとワイルドトラックで選択可能なオプションで、ACC(前車追従クルーズコントロール)や追突防止自動ブレーキ、道路標識自動認識機能、そしてハイビームの自動制御をセットとしたものです。
ピックアップトラックならではのオプションも注目です。荷台をカバーして荷”室”として使うための多数のオプションが用意されており、オーソドックスな巻取り式のトノカバーを筆頭に、アルミ製のローラーシャッター、荷物の積み下ろし時にカバー全体を上にヒンジで持ち上げられるハードトノカバー、耐久性を重視した強固なアルミトノカバーなどがあります。ローラーシャッターとアルミトノカバーは両側にバーがありルーフレールのように使うことができるので、ここにキャリアをつければ、自転車などを搭載・固定することも可能です。さらに荷台を汚れや傷から防ぐライナーや、荷台の上につけてステーションワゴンのように使えるハードトップの設定もあります。
なお、ハードトップはレギュラーキャブ非対応、またハードトノカバーとアルミトノカバーはダブルキャブ専用となっています。
レンジャー T6の用途別おすすめグレード
レンジャー T6は、ヨーロッパでは上級グレードが好まれており、英AUTOCARによれば販売台数の95%がリミテッドかワイルドトラックだとされています。ワイルドトラックはダブルキャブ専用グレードですが、リミテッドにしてもダブルキャブが主に売れていることは想像に難くありません。
実際に3人以上が日常的に乗ったり、SUV的な使い方をするならば、この売れ筋グレードのいずれかがおすすめです。予算や維持費に大きな制約が無いならば、ワイルドトラックのメッキを廃したエクステリアは、フルサイズピックアップトラック的な価値観とは異なる新しい提案がなされており、その点も魅力です。
しかしピックアップトラックは色々な可能性を秘めていますし、また折角日本へ並行輸入するのですから、他の可能性も考えてみたいところです。
まずトラックとしての使い勝手を最優先するならば、レギュラーキャブの広い荷台が魅力的です。レンジャー T6で20,000ポンドを下回るのも、レギュラーキャブだけです。しかしエアコンが装備できないのは日本では多くの状況で辛いので、4WDにオプションでエアコンを追加すると良いでしょう。
一方居住性も重視するならば、スーパーキャブも魅力的です。ちょっとした荷物ならキャビン内に積め、またいざとなれば後ろにも人を乗せられる安心感と空間の余裕、一方でそれほど車内がダブルキャブよりも狭いために生まれる良い意味での囲まれ感は、日常的には2人までしか乗らないならばベストバランスかもしれません。
カスタムベースとして楽しむならば、レギュラーキャブかスーパーキャブかは大いに悩ましいところですが、確実に長い荷室が必要な場合などを除けばスーパーキャブの方が後悔のない選択となるかもしれません。いずれにしても全長5.3m前後で基本2人乗りというのは贅沢なものですが、欧州の小型車でも4人乗り5人乗りを前提としたモデルが増えていく中で、大きなパーソナルモビリティに乗るというのも乙なものですし、レンジャー T6は後ろめたさを感じずに済む程度に、環境負荷も大きくありません。
フォード レンジャー T6の日本での乗り出し価格は?
フォード レンジャーのイギリス仕様の日本国内乗り出し価格は下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。これ以外の仕様や左ハンドルの輸入なども承りますので、お気軽にご相談ください。
レギュラーキャブ
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
スーパーキャブ
ダブルキャブ
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
スペック表
フォード レンジャーのサイズやカラーなどスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | フォード レンジャー ダブルキャブ / FORD RANGER Double Cab |
エンジン、サンプルグレード | Limited 2.2TDCi 160PS 6 Speed Auto |
英国販売価格 | £31,354.64 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 4 |
カラー | コロラドレッド(標準色) フローズンホワイト(標準色) ムーンダストシルバー(OP/MTL) オイスターグレー(OP/MTL) シーグレー(OP/MTL) パンサーブラック(OP/MTL) パフォーマンスブルー(OP/MTL) オーシャン(OP/MTL) カッパーレッド(OP/MTL) プライドオレンジ(OP/MTL) ※OP:£480の有料オプション ※MTL:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 5,362 x 1,860 x 1,815 mm(参考値) |
ホイールベース | 3,220mm |
トレッド(前/後) | 1,560mm / 1,560mm |
車両重量 | 2,119kg(参考値) |
乗車定員 | 5名 |
トランスミッション | 6速AT |
エンジンタイプ | 直列4気筒ターボディーゼル |
総排気量/内径x行程 | 2,184cc / – x – mm |
圧縮比 | – |
最高出力 | 160ps / 3,700rpm |
最大トルク | 385Nm / 1,500-2,500rpm |
燃料タンク容量 | 80L |
燃費 | 12.5km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク / ドラム |
タイヤ/ホイール | 265/65 R17 |
最高速度 | 約175km/h |
0-100km/h加速 | 約12.9秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車名 | フォード レンジャー ダブルキャブ / FORD RANGER Double Cab |
エンジン、サンプルグレード | Wildtrak 3.2TDCi 200PS 6 Speed Auto |
英国販売価格 | £32,794.64 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 4 |
カラー | フローズンホワイト(標準色) ムーンダストシルバー(OP/MTL) シーグレー(OP/MTL) パンサーブラック(OP/MTL) プライドオレンジ(OP/MTL) ※OP:£480の有料オプション ※MTL:メタリック塗装 |
全長x全幅x全高 | 5,362 x 1,860 x 1,848 mm |
ホイールベース | 3,220mm |
トレッド(前/後) | 1,560mm / 1,560mm |
車両重量 | 2,193kg(参考値) |
乗車定員 | 5名 |
トランスミッション | 6速AT |
エンジンタイプ | 直列5気筒ターボディーゼル |
総排気量/内径x行程 | 3,196cc / 89.9 x 100.7 mm |
圧縮比 | – |
最高出力 | 200ps / 3,000rpm |
最大トルク | 470Nm / 1,500-2,750rpm |
燃料タンク容量 | 80L |
燃費 | 約11.2km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク / ドラム |
タイヤ/ホイール | 265/60 R18 |
最高速度 | 約175km/h |
0-100km/h加速 | 約10.6秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
メーカー 車種名をもっと知りたい方はこちら
・フォード 英国 レンジャー のオフィシャルページ(Ford UK Ranger)
・フォード 英国 レンジャー のコンフィグレーター(Ford UK Ranger)
・フォード 英国 レンジャー のカタログダウンロード(Ford UK Ranger)
※本記事は2016年9月27日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。