LCVというジャンルの自動車をご存知ですか?
LCVとはLight Commercial Vehicleの略称で、ヨーロッパでは車両総重量が3.5トンを下回る小型商用車全般がこのように呼ばれています。LCVは現地の交通事情から、長距離移動を楽にこなす乗用車顔負けのグランドツアラーとしての性質も持っています。例えば、日本でもヒットしているルノー カングーや、そのロングバージョンであるグランカングーも、LCVに分類される自動車です。
今回ご紹介するルノー トラフィック(Renault Trafic)は、ルノーがカングーよりも1クラス大きなモデルとして販売しているモデルです。ルノー製LCVの評価は高く、カングーとトラフィック、そして更に大きなマスターの3車種を武器に、欧州LCVシェアNo.1に輝き続けています。そして2014年、トラフィックが13年ぶりに新型にモデルチェンジを行いました。注目は刷新されたディーゼルターボエンジンです。
今回はそんな新型 トラフィックについて徹底解説します。残念ながらカングーと異なり、正規輸入車として日本へ導入されていませんが、使いやすいルノー製のLCVを右ハンドル、イギリス仕様で並行輸入してみませんか?
この記事の目次
ルノー トラフィックの特徴
初代ルノー トラフィックの発売は1980年。それまでルノーが生産してきたキャブオーバーのエスタフェットに代わり、エンジンをおさめたボンネットを持つ新世代のレイアウトが採用されました。初代トラフィックは以来30年に渡り、約95万台が販売されるヒット作になりました。
満を持して2001年に登場した2代目は、オペルと共同開発されたモデルでした。こちらは13年間で65万台と、初代を上回るペースのセールスを記録しました。2014年までのシリーズ累計販売台数は160万台超に達し、トラフィックはルノーがLCVで欧州ナンバー1シェアを続ける上での立役者となっています。
2014年に発売された3代目ルノー トラフィックは、開発と製造で引き続きオペルとの協業体制を敷いています。このうち製造に関しては、販売ブランドを問わずルノーとオペルの両社が分担していますが、ルノー側は今までの日産バルセロナ工場に代わり、最近までエスパスの製造を行っていたフランス・サンドゥヴィルの工場で、オペル側では先代同様にイギリスのルートンにある、IBCビークルズ運営のGMMルートンで行われています。右ハンドル仕様は主にGMMルートンの分担だと考えられます。
トラフィックには、全長4,999mmと5,399mmの2種類のボディが用意されています。長短の2バリエーションを用意するのは2代目と同じですが、それぞれ2代目に対して200mm程度長くなっています。このサイズは、日本ではトヨタ ハイエースや日産 NV350キャラバンの長尺ワイドボディと同じクラスになりますが、キャブオーバーで後輪駆動のハイエースやNV350キャラバンと比べ、前輪駆動のトラフィックはリアにドライブシャフト等が無いため、床を低くできる利点があります。FFのため直進安定性に優れており、また、エンジンの真上にドライバーが座るキャブオーバーと比べると、ドライバーとエンジンの距離が離れているため、長距離移動の際の疲労も少なく、多人数向けの乗用車としての用途にも適しています。一方で車体の全長の割には相対的に荷室長が短いという欠点があり、また小回りの点でも、キャブオーバー勢の取り回しの良さには及びません。荷物を満載すると前輪の荷重が不足しがちになるので、許容積載量は後輪駆動車よりやや少なめになります。とはいえ、トラフィックは仕様にもよりますが、1.0〜1.2トンを積むことが出来るので、極端に重量物が苦手なわけではありません。日本では国産のキャブオーバーの商用車に対して、相対的にパーソナルユースに向いている構成とも言えます。
最新のトラフィックは、これまで同様にルノー以外ではボクスホール|オペル ヴィヴァーロ(Vauxhall|Opel Vivaro)として販売されるほか、2016年からは日産プリマスター改めNV300としても販売、さらにフィアットに対しても、フィアット タレント(Fiat Talento)としてOEM供給されます。3世代目に入った大ヒットLCVは、ヨーロッパでこれまで以上に強力な存在感を発揮していくことでしょう。
ルノー トラフィックのコマーシャル(約59秒)
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エクステリア
実用性を重視したキープコンセプトなデザイン
3代目トラフィックの全体的なシルエットは、先代からのキープコンセプトが徹底されており、フェンダーを縁取るようなサイドのプレスラインや、運転席の屋根がわずかに高くなっている部分なども継承されています。この屋根の形状は、居住性の向上は勿論、特徴的なシルエットによるトラフィックのアイデンティティーのひとつにもなっています。
近年ルノーのデザイン担当副社長に就任したオランダ人のデザイナー、ローレンス・ヴァン・デン・アッカーは、クリオ、メガーヌ、カジャール、タリスマン、そしてエスパスなど、ルノーの各乗用モデルに躍動的なデザインを採用していますが、積載性・実用性が求められるトラフィックは、全体的にはスクエアで抑揚が抑えられています。唯一フロントマスクはアグレッシブな印象になりましたが、これはルノーだけではなく、ボクスホール|オペルの各モデル、例えばボクスホール|オペル アストラなどともデザインの共通性を持たせたものです。
インテリア
豊富な収納スペースと広大な荷室サイズ
ヨーロッパの商用車らしく、トラフィックの最前席のインテリアは、乗用車から乗り換えても違和感を感じさせない雰囲気に仕上がっています。ただ、広い車体幅に起因するダッシュボードの横幅の広さは、やや乗用車離れした感もあります。また近年のルノーらしく速度計はデジタルとなったものの、カーステレオや空調の操作系は概ね保守的な設計で、信頼性や使い勝手を重視していることが伺えます。
室内の小物収納は日本車顔負けの充実ぶりです。大容量グローブボックスに加えて、ダッシュボード上やハンドル下など、収納の数は14ヶ所もあり、容量は総計90Lに達します。さらに仕様によっては、助手席(中央席)の背もたれを倒してテーブルとして利用することも可能です。
荷室長は標準モデルで2,537mmを確保、荷室幅は1,662mm、荷室高は1,387mmです。荷室長は助手席足元を使うことで最大3,750mmまでの長尺物を積載でき、ロングホイールベースではさらに400mm延長されます。ハイルーフ仕様では荷室高は1,898mmに達します。
ちなみにトヨタ ハイエース バン スーパーGL(4ナンバーサイズ)の荷室長は3,000mm。小型車のサイズでこれだけの空間を確保するのは、まさにキャブオーバーならではですが、エンジンの張り出しがあり前席と荷室の間には大きな段差があるので、助手席の床面を荷室の延長として使うことはできません。絶対的な容積は及ぶべくもありませんが、載せる荷物の種類によっては、フロアがフラットなFFのトラフィックが優位性を発揮する場面もあるかもしれません。
ルノー トラフィック パネルバンのPV動画 実寸表示で各部収納スペースを紹介(約95秒)
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パワートレイン
F1技術をフィードバックした最新ディーゼルターボを採用
エンジンはルノーの直列4気筒1.6Lディーゼルターボ、R9Mの1種類に統一されました。先代トラフィックの様なガソリンエンジンの設定はありません。カタログ上ではルノーの他のディーゼルエンジン同様にdCiと表記され、出力を示す数字が後に続きます。
このR9Mは2009年に発表、2011年から製造されている最新世代のエンジンで、すべてがフランス・クレオンの工場で製造され、乗用、商用の別を問わず、ルノー日産グループの出力が必要なモデルに優先的に採用されています。主な採用車種としては、ルノーではメガーヌ、カジャール、タリスマン、エスパス、日産ではキャシュカイ、パルサーが挙げられます。
またトラフィックのR9Mには、シングルターボ仕様と、低速域と高速域でそれぞれが効率的に機能するツインターボ仕様があります。シングルターボは95hpと120hpの2仕様を用意、またハイパワーなツインターボでは145hp(107kW)を発揮し、最大トルクは実に34.7kgm(340Nm)に達します
ルノーはこのR9Mについて、F1のテクノロジーを応用したエンジンだと謳っています。具体的には、ほぼスクエアなボアストローク、エンジンを横方向に横断する冷却水、ピストンのフリクションを低減したオイルリングの3つが、F1からのフィードバックであると言及されています。カム駆動にはタイミングチェーンを採用しており、ベルト交換の必要がなく、経済的なのも特徴です。
トランスミッションは6MTで、ルノー内製のPF6が採用されています。これは同社のメガーヌRSなど、ガソリンハイパフォーマンスモデルに採用されているPK4をベースに、商用モデルとして必要な耐久性を加えたもので、短いシフトストロークによるスポーティーな運転感覚が特徴です。また、残念ながら2016年現在2ペダル仕様の設定はありません。
商用車でありながら、モータースポーツとも関連の深いエンジンやトランスミッションを採用していることが、結果として日々の道具としてストレスのない運転環境を実現しているのです。
経済性
ボディサイズが気にならない低燃費
R9Mは高出力・高トルク以外にも、高い環境性能や低燃費による経済性を併せ持っています。
低燃費に貢献しているのが、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)の中でも世界的に採用例が極めて少ない、低圧での排気再循環(Low Pressure Loop – EGR)です。これは排気経路の下流から排気ガスを取り出して冷やし、吸気コンプレッサーの手前に還流させて、燃焼温度を下げてNOxの生成を抑え、また過給圧を安定させています。加えて広く普及している尿素触媒のAdBlueを採用し、ユーロ6に対応しています。
またENERGYと呼ばれる仕様ではスタート&ストップ(アイドリングストップ)が追加され、これはシングルターボエンジンでは任意に選択可能、またツインターボエンジンでは自動的にENERGY仕様となります。
燃費はもっともパワフルなENERGY dCi 145の欧州複合基準で約15.6km/L、もっとも経済的なENERGY dCi 125では約20.3km/Lに達します。この125hp仕様のENERGYは、ギア比もより燃費に配慮されたハイギアードな専用仕様となっています。
また、特に燃費に気を遣って走りたい場合にボタンひとつで走行プログラムを変更できるエコモードも、最新の乗用車さながらに用意されています。
ルノーによるLCVのエンジンの紹介動画(約2分40秒)
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足回り
積載時にも確実な走りを重視
トラフィックのサスペンションは、フロントはマクファーソン・ストラット、リアはラテラルロッド併用式のトーションビームです。後者は特に積載性に配慮したもので、現在のルノーで広く使われているトーションビーム式とは構造が異なります。商用車としての実用性を重視していることが伺えます。
駆動方式は前輪駆動のみで、先代やライバル勢のような四輪駆動の設定はありません。代わりにトラフィックにはグリップ・エクステンデッドと呼ばれるESC(横滑り防止装置)の拡張機能を装備しています。これはぬかるみや雪道などで任意に選択する走行モードで、後輪に荷重がかかっていて前輪のトラクションが不足しがちな状況でも空転を抑えつつ、しかしある程度の回転を許容しながら、最適な駆動力を確保することができます。
レイアウトとボディタイプ
用途に応じてバリエーションを用意
この様なモデルでは、室内レイアウトが気になる方も多いのではないでしょうか。イギリス仕様のトラフィックは、レイアウトに応じて、1列シートのパネルバン、2列シートのクルーバン、3列シートのパッセンジャーの3タイプが設定されています。全車に共通しているのは最前列で、独立した運転席と、ベンチシートで2名がけの助手席が並び、3名分の定員を確保します。いずれもオプションで独立した1人がけの助手席に変更することが可能です。他に荷台等を架装するためのプラットフォームキャブ仕様があり、運転席から後ろは前輪駆動を活かした低床シャシーのままとなっています。
最もスタンダードなパネルバンは、1列目の直ぐ後ろに丈夫な金属製の隔壁(バルクヘッド)があり、そこから後ろを荷室としています。これは事故や急ブレーキの際に荷物の室内への飛び込みを防ぐほか、エアコンの効きの面でも有利です。一方で基本的には室内から荷室へのアクセスは不可となり、運転席のリクライニング稼働域が制限されるなど、使い勝手はトラックに近くなります。ただし、仕様によっては長尺物を載せるための穴が助手席下に開けられており、パイプ等を積むことは可能です。この隔壁をユーザーが取り外すことはできませんが、不要な場合は無償のメーカーオプションとして対応できます。パネルバンは仕様によって、1.2トン程度の荷物を積むことが可能です。
クルーバンは、パネルバンにベンチシートで3人がけの2列目を追加し、定員を最大6名とした一方で、荷室長を約62cm短縮したモデルです。やはり荷室との間には隔壁がありますが、こちらはオプションでも取り外しが出来ません。
パッセンジャーは2列目をベンチシートと改め、さらに3列目にもベンチシートを追加して、定員を9名とした乗用仕様です。このうち2列目の背もたれは右端1/3が畳め、また両方のベンチシートを取り外すことも可能です。3列目は装備されない状態で購入することも可能で、設定のなかった隔壁なしのクルーバン需要を満たします。
エクステリアの項で触れたとおり、全長4,999mm(ホイールベース3,098mm)と全長5,399mm(ホイールベース3,498mm)の2種類が用意されていますが、プラットフォームキャブ仕様はロングホイールベースのみとなっています。これに荷台を架装した場合の全長は5,538mmまで許容されています。
また、トラフィックにはハイルーフ仕様の設定もありますが、これは長短ともにパネルバンのみの設定です。全高は2,495mmで、標準の1,971mmから500mm以上も高くなりますが、ひとクラス上のルノー マスター(日産 NV400)のハイルーフと比べると、やや後付け感があるデザインとなります。
ルノー トラフィック クルーバンのPV(約3分)
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グレード・装備とオプション
自分だけの1台を作り上げられる豊富なオプション群
商用のパネルバンとクルーバンではビジネス、ビジネス+、スポーツの3グレード、乗用のパッセンジャーではビジネスとスポーツの2グレードが設定されています。商用も乗用も、同じ名前のグレードの装備はおおむね同じです。ビジネスはスチールホイールや樹脂色のバンパーなど簡素で実用に徹した仕様となり、スポーツではマニュアルエアコンや17インチのアルミホイール、上級のシート表皮、さらにクルーズコントロールや革巻きステアリングなどが追加されます。間を埋めるビジネス+は、ビジネスに対してマニュアルエアコンやカラードバンパーを採用しているのが主な追加点となります。
ヨーロッパの他のLCVもそうであるように、ルノー トラフィックの装備内容やオプション内容は多岐に渡り、非常に柔軟です。たとえばビジネスの商用車然としたルックスに惹かれるけれども、日本で乗る上でエアコンが欲しい、長距離移動が多いからクルーズコントロールが欲しいなどの希望があれば、それぞれエアコンやクルーズコントロールをビジネスにオプションとして追加することも可能です。
特にパネルバンやクルーバンでは、リアドアやサイドドアの窓をガラスにするか否かなど、細かい部分を全て指定できます。基本的に窓が塞がれている仕様の方が荷室の目隠しにはなりますが、後方視界が制約されますので、安全性の面では後方視界確保に必要な最低限の窓を確保するか、バックミラー内蔵型のリアカメラを選択するといいでしょう。
用途がはっきりしている場合は、その用途に最適な組み合わせのトラフィックを作り上げることが出来ますので、是非オプション一覧と価格表をご覧になることをおすすめします。
なお、安全装備のうち横滑り防止装置と運転席・助手席エアバッグは全車標準装備ですが、サイドエアバッグとカーテンエアバッグは全車オプションとなっている点には注意が必要です。
また、トラフィックにはスポーツ+パックというパッケージオプションの設定もあります。これはルノースポールとのデザインの共通性を感じさせるエアロパーツや、LEDのデイライト、サイドステップ、そしてデカールがセットになったオプションで、トラフィックを、よりスポーティーに彩ります。色は黒x白、黒、黒x赤の3種類となり、1,194ポンドのオプションです。
総評
趣味の相棒として選びたい1台
トラフィックはシンプルな商用車ですが、モータースポーツとも関係の深い強力なパワートレインの構成に、このモデルへの意気込みの強さが伺えます。ヨーロッパではここに、ライバルより充実した4年10万マイル保証と、24時間年中無休アシスタントサービスが加わるのですから、その人気にも納得がいきます。
一方、日本に並行輸入した場合、同一車種が少なく部品の流通量が限られることからも、業務用としてハイエースのように第一線で酷使することは難しいかもしれません。ただ、例えば長距離での高速巡航性能の高さを活かして、趣味性の高い商品を広範囲の顧客に対して取り扱う事業での配送や営業という用途であれば、トラフィックを使うことによる宣伝効果が期待できます。
また、バイク(モーターサイクル)や自転車(ロードバイクやマウンテンバイク)、ダイビング、スカイダイビングなどの趣味のトランスポーターとして使う上では、とても良い相棒となってくれることでしょう。カングーからのステップアップにもおすすめします。
ルノー トラフィックのライバルとその評価は?
ルノー トラフィックには、ボクスホール|オペル ヴィヴァーロ、日産 NV300、フィアット タレントという兄弟車がいて、これらは販売上のライバルになりますが、どのメーカーのモデルを選んでも殆ど仕様は変わりません。ヨーロッパではディーラーのサポート体制や仕事場からのアクセスの良さなどが判断材料になるかと思いますが、日本で乗るならば好きなブランドのものを選べば大丈夫です。
最大のライバルは、グループPSAとトヨタが共同開発した、プジョー トラベラー、シトロエン スペースツアラー、トヨタ プロエース ヴァーソの兄弟車です。これらの商用グレードは、プジョー エキスパート、シトロエン ディスパッチ/ジャンピー、トヨタ プロエースとしても販売されています。先代に相当するモデルはPSAとフィアットの合弁事業として行われていましたが、フィアットが抜けてルノーからのOEMに鞍替えし、代わりにトヨタが参入したという構図になっています。
特に乗用モデルは国産車顔負けのシートアレンジの多様さを持っているのが特徴で、乗車定員は9名、8名、7名、そしてプジョーとシトロエンが設定している最上級モデルでは、全席キャプテンシートの6名のグレードを選択することが可能となっています。また、7名乗り以上のモデルでは3列目シートが、8名乗り以上のモデルでは2列目シートも、1:2の分割での取り外せるなど使い勝手の良さが光ります。一方、搭載されているディーゼルエンジンのHDiは、最新の環境基準に対応しているものの、基本設計は1990年代まで遡るもので、熟成こそ進んでいるものの設計の新しさという点ではトラフィックに優位性があります。
ドイツ勢からは、フォルクスワーゲン トランスポーター T6の名前が挙がります。アウトバーンでの用途を前提にしたドイツ車らしく、200馬力超のガソリンターボや400Nm級のディーゼルターボの設定があり、またデュアルクラッチトランスミッション(7DSG、ボルグワーナー製)の設定もあります。その動力性能は群を抜いていますが、当然ながら価格も相応に高くなります。
T6の基本設計は2003年に登場したT5に由来しますが、直線的でシンプルなデザインは色褪せることがありません。乗用仕様のカラベルや、メーカー純正キャンピング仕様のカリフォルニアなど、バリエーションが多いのも特徴です。また、ジェネレーション6など特別仕様車の設定にも積極的です。
同じくドイツのメルセデス・ベンツのヴィトーもライバル車種として挙がります。ちょうどトラフィックと同じく2014年に3代目に移行しました。このモデルの特徴は後輪駆動の設定があることです。後輪駆動の設定はパッケージングの面では不利になりますが、フル積載時は荷重が駆動輪にかかる点で優位性があり、実際にヴィトーは最大で1.3トン超の荷物を積むことができます。ヴィトーにも乗用仕様がありますが、特に豪華なモデルに関してはVクラスとして車種が分けられています。
ルノー トラフィックとライバルを比べると、何かに秀でて、代わりに何かを失っているというトレードオフの構図を多く見かけます。ヨーロッパでLCVは、ある程度用途に応じた住み分けが進んでいるとも捉えられますが、トラフィックはその中で、四輪駆動をラインアップしていなかったり、トランスミッションに2ペダルの設定がなかったりと、やや簡潔な構成になっていることに気付きます。代わりに積載性と経済性、そして走行性能は徹底して重視されており、古典的なルノーの設計思想を持ったモデルとも言えるのではないでしょうか。
2014年 ルノー トラフィック パネルバンのPV動画(約3分)
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ルノー トラフィックのベストバイは?
トラフィックを並行輸入する場合、用途を限定されない方には3列シートの”パッセンジャー”仕様のショートホイールベース仕様をおすすめします。親子3世代での旅行から、2列目3列目の座席を取り外しての引っ越しまで、何にでも使えます。
またパッセンジャーの場合、エアコンを含め最初はほぼ何も付いておらず、オプションで足していく”BUSINESS”と充実装備の”SPORT”の2通りのトリムがありますが、装備を考えるとSPORTの方が割安です。
またこのトリムの場合、エンジンは出力違いのツインターボ2種類のみとなりますが、価格差が小さく、燃費への影響も僅かなので上位仕様がおすすめです。カタログ上の表記はPassanger SPORT SWB 9 SEAT SL27 ENERGY dCi 145 Navとなります。
キャンピングカーなどへの架装やトランスポーターとしての使用を考えている場合は、パネルバンも視野に入るかもしれません。ただしバルクヘッドが装備されている仕様の場合はトラックと同じ扱いとなり、一旦、1ナンバーでの登録が必要になる場合があります。税制や車検システムが大きく異なるので、パッセンジャーをベースとした方が良い場合もあるかもしれません。詳しくはお問い合わせください。
注目の並行輸入、ルノー トラフィックの乗り出し価格は?
トラフィックのベストバイグレード、「Passanger SPORT SWB 9 SEAT SL27 ENERGY dCi 145 Nav」のイギリスでの車両価格は£30,895です。並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
ルノー・ジャポンでは正規輸入車として日本導入が行われていないため、トラフィックに乗るには並行輸入が現実的な選択肢です。左ハンドル仕様をご希望の場合も、お気軽にご相談ください。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
スペック表
ルノー トラフィックのサイズやカラーなどスペックは以下をご確認ください。+ボタンで詳細が表示されます。
車名 | ルノー トラフィック パッセンジャー/Renault Trafic Passanger |
エンジン、サンプルグレード | SPORT SL27 ENERGY dCi 145 Sport Nav |
英国販売価格 | £31,806 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 右 |
ドア数 | 5 |
カラー | バンブーグリーン(標準色) マグマレッド(標準色) モールグレイ(標準色) グレイシャーホワイト(標準色) ジェットブラック(標準色) オイスターグレイ(標準色) パノラマブルー(標準色) カッパーブラウン(標準色) ストーン(標準色) マーキュリー(標準色) |
全長x全幅x全高 | 4,999 x 1,956 x 1,971 mm |
ホイールベース | 3,098 mm |
トレッド(前/後) | 1,615 / 1,628 mm |
車両重量 | 1,882kg(参考値) |
乗車定員 | 8名 |
トランスミッション | 6速MT |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒DOHC16Vコモンレール直噴ツインターボ |
総排気量/内径x行程 | 1,598cc / 80.0 x 79.5mm |
圧縮比 | 15.4 |
最高出力 | 103kw(140ps)/ 3,500rpm |
最大トルク | 340Nm(34.7kgm)/ 1,500rpm |
燃料タンク容量 | 80L |
燃費 | 約15.6km/L(欧州複合基準) |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク / ディスク |
タイヤ/ホイール | 215/65R16C 106/104T |
最高速度 | 約177km/h(110mph) |
0-100km/h加速 | 約11.1秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
ルノー トラフィックのカタログダウンロード
・ルノー 英国 トラフィックのカタログダウンロード(RENAULT UK TRAFIC)
ルノー トラフィックの現地法人・ディーラーリンク
・ルノー 英国 トラフィック パッセンジャーのオフィシャルサイト(RENAULT UK TRAFIC PASSANGER)
・ルノー 英国 トラフィック パネルバン/クルーバンのオフィシャルサイト(RENAULT UK TRAFIC)
おすすめ関連グッズ
ヨーロッパの商用車に憧れるけれども、なかなか今すぐに実車の所有は難しい…そんな方に是非おすすめしたいのが精巧なミニカーです。各種LCVのミニカーはヨーロッパでは多数販売されており、たとえばルノー トラフィックは実車のヒットにあわせて、特に先代モデルは多数がミニカー化されました。例えば以下のモデルは警察車両仕様、1/43スケールで細部までこだわって再現されているので、机に飾っても良いかもしれません。
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[amazonjs asin=”B00V57KURK” locale=”JP” title=”Rietze リーツェ 51382 H0 1/87 消防車”]
またルノー トラフィックは、メンテナンスとリペアのためのマニュアルも多数出版されています。流通量は2代目が多く、今更旧モデルのトラフィックのメンテナンス本を買っても、ほとんどの人にとって実用性は微妙かもしれませんが、コーヒーを片手にパラパラとめくれば、クルマをまた違った切り口から眺めることができるでしょう。
[amazonjs asin=”0857338870″ locale=”JP” title=”Renault Trafic Van Service and Repair Manual (Haynes Service and Repair Manuals)”]上記は有名なヘインズ。メルセデス・ベンツ W124やポルシェ 911、フォルクスワーゲン タイプ1(ビートル)などは日本語の訳本が出ていることから、このシリーズをご存知の方も多いかもしれません。他にヨーロッパではRTAことRevue Technique Automobileというシリーズもも幅広い車種で出版されており、定番となっています。
[amazonjs asin=”2726875556″ locale=”JP” title=”Renault Trafic II Phase 2 Diesel 2.0 dCi 90 et 115 ch sans FAP (08/2006)”]尚、これらのメンテナンスマニュアルはモデルイヤーの変更などにあわせて細かく改訂が行われているので、実用を目的として購入される場合は、必要とする情報が掲載されているものなのかを十分にご確認ください。
※本記事は2016年10月14日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。