これからご紹介するのは、ルノー カングー(Renault Kangoo)です。といっても、日本でおなじみの5人乗りではなく、ホイールベースを400mm近くストレッチして3列シートにした7人乗り。その名も「グランカングー(Renault Grand Kangoo)」です。
残念ながらグランカングーは左ハンドル仕様のみが販売されており、右ハンドル仕様の設定はありません。しかし左ハンドル仕様の輸入は可能ですので、今回はフランス本国仕様グランカングーについて徹底解説します。日本未導入の7人乗り「デカングー」ことグランカングーを、お好みの仕様で並行輸入してみませんか?
この記事の目次
グランカングーの特徴
この384mmが、豊かさに
グランカングーは、カングーの商用モデルのロングホイールベース仕様であるカングー エクスプレス マキシ(Kangoo Express Maxi)をベースに乗用7人乗りにしたモデルです。
グランカングーの全長は4,666mm、ホイールベースは3,081mmです。5人乗りカングーがそれぞれ4,282mmと2,697mmですから、全長もホイールベースもぴったり384mm伸ばされていることがわかります。このサイズからも、フロントやリアまわりのデザインには手を加えず、車内空間の拡大のみを行ったことが分かります。そしてこの384mmが、後述するようにいろいろな豊かさの源となるわけです。
ちなみに全幅1,830mm、全高1,802mmは、どちらも変わりません。余談ですがこのサイズ、日本の正規ディーラーが発表している数字と本国のものでは厳密には1〜2mmの差があります。また、全高は仕様によって若干の違いもあります。
ではボディの長さは具体的にどんな感じでしょうか?
ほかのクルマを例にとると、グランカングーの全長4,666mmに対し、同じルノーのグランセニックが4,573mm、スバルの7人乗りワゴン、エクシーガが4,780mm、日本のワンボックスの代表格、トヨタ ヴォクシーが4,710mmです。こうして比べると、だいたいのサイズ感がイメージできるのではないでしょうか?
グランカングーのエクステリアの特徴
長くなり、より強くなった存在感
グランカングーを見て、5人乗りカングーに対して、全幅と全高の割に、やや全長が短いという印象を受けた方もいるかもしれません。マイナーチェンジ以降、“ロザンジュ(ひし形エンブレム)”を強調するフロントマスクに変更されてからワイド感が増したように見えます。その点、ストレッチされた“グラン”のボディは、全福と全長のサイズ比がより適切になったという見方もできます。長くなったことで、グランカングーは全体にゆったりと余裕を感じさせるフォルムになりました。5人乗りカングーのギュッと凝縮された感じもいいのですが、大人7人と、荷物をたっぷりと飲み込んで、どこまでも走って行ってくれそうなグランカングーの雰囲気も頼もしい感じです。
5人乗りカングーとグランカングーを見くらべると、どちらも左右のドア部分までは共通のままですが、グランカングーではドアより後ろのホイールアーチまでの部分をストレッチしていることが分かります。リアドアはがばっと大きく開き、低いフロアとあいまって乗り降りがしやすいので、追加された3列目シートへのアクセスもそれほど難しくはないでしょう。
ドアから後ろが長くなったおかげで、リアクォーターウインドウの左右幅がとても大きくなっています。見る人によっては「商用バンのようだ」という印象を持たれるかもしれません。だからといってそれがネガティブな印象ではなく、グランカングーの個性のひとつとして感じられると言ったら、ひいき目に過ぎるでしょうか。なお、バックドアは5人乗りカングーは乗用モデルの場合、ヨーロッパ仕様では日本仕様と異なり一般的な跳ね上げ方式ですが、グランカングーでは観音開きで統一されています。3列目シートにはバックドアからアクセスしても面白いかもしれません。
なお、グランカングーのフランス仕様はゼン(ZEN)とインテンス(INTENSE)の2グレード構成です。いずれもカラードバンパーですが、フロントナンバープレート周辺にインテンスでは銀色の加飾が行われており、外観の識別点になっています。
グランカングーのインテリアの特徴
最長で2.8メートルの長尺積載もOK
1列目と2列目の環境は、5人乗りのカングーと特に変わったところはありません。
ダッシュボードのデザインは傾斜が大きくミニバンライクなイメージです。センタークラスター上部の空間は、小物入れと書類入れとして利用可能です。他にも中段のエアコンのスイッチが、ゼンではダイヤルで操作するマニュアルタイプに対してインテンスではオートだったり、ステアリングにインテンスではシルバーのアクセントが加わるといった違いが見られます。
2列目シートは、ヨーロッパではそれほど多く普及していないダイブダウン式の折り畳みシートを装備。完全なフルフラットに比べると、やや傾斜がありますが、ワンアクションで荷室を広げられます3列目シートは左右で独立したものを搭載、こちらはそれぞれ独立して、折り畳みと取り外し可能が可能です。
3列目シートを取り外した場合の荷室長は1,328mm。2列目を折り畳み、オプションで追加される助手席折り畳み機能を使えば、荷室長は最大2,850mmに到達します。長大なカーゴルームは荷物を載せるにはもちろん、車中泊でも便利そうです。
また4人乗りのときに、2列目を折りたたむというシートアレンジの楽しみ方もあります。その場合、ゆったりとしたラウンジカーのような贅沢な乗車スペースを楽しむことができますし、ペットのケージなどを車内中央に置いて一緒に過ごす選択肢も生まれます。
グランカングーのパワートレイン
粘り強いターボディーゼルに、6MTの組み合わせ
エンジンは、Energy dCi 110と呼ばれるディーゼルターボのみとなります。
このユニットは、ルノーを代表するディーゼルエンジンのひとつであるK9K型で、メガーヌ、カジャール、クリオ/クリオ エステートなどルノー各車種はもちろん、日産ではパルサーやキャシュカイ、そしてメルセデス・ベンツ Aクラスなどまで幅広い車種に使われています。
コモンレール直噴タイプによる、粘り強いパワーと低燃費が特徴で、最大出力は110ps/4000rpm、最大トルクは240Nm/1750rpm。特にトルクは1,500回転で全体の約80%のトルクを発揮する粘り強さを持ちます。
また吸気方式を見直しレスポンスを改善したターボにより、ドライバビリティの向上も果たしています。約1.4トンのボディに7人と荷物を満載しても、充分な走行性能を確保できるとともに、カングーならではの楽しいドライビングを演出してくれるでしょう。
トランスミッションは6速MTのみとなっています。2ペダルの設定が無いことは惜しまれますが、トルクの特性から市街地でも乗りにくさを感じることは少ないのではないでしょうか。
なお、最高時速170km/h、100km/hまでの加速性能12.3秒といったスペックは、同じエンジンを搭載した標準ボディのカングーと同一です。
グランカングーの足回り
ドライブが楽しい、ロングツアラー
グランカングーもベースのカングーと同様、フロントにマクファーソンストラット、リアにトーションビームを採用しています。
しかし、大きく違うのは、3,081mmに延長されたロングホイールベースです。これにより、もともと優れている直進安定性がさらに高まり、約90kg増えた車重との相乗効果で、高速道路や郊外のオープンロードなどでも、どっしりと安定した走りを実現しています。
この特性は、フラットトルクなエンジンと相まって、長距離になるほど実力を発揮します。優れた乗り心地とドライバビリティで、ドライバーも、乗っている人も、長距離の移動を楽しく過ごせることでしょう。
グランカングーの燃費
スタート&ストップシステム搭載で23.3km/Lを実現
グランカングーに搭載されたEnergy dCi 110の燃費は、欧州複合モードで23.3km/Lと発表されています。またスタート&ストップ・システム、いわゆるアイドリングストップシステムを標準装備したことで、市街地走行で100キロあたり1Lの燃料を削減しています。60Lの燃料タンク容量は5人乗りのカングーと同じです。
グランカングーの総評
大きいことは、いいことだ
「大きいことはいいことだ」というCMが、1960年代に流れていました。チョコレートのCMで、ほかより同じ値段なのにちょっと大きくて、そのぶん「いいことだ」と自画自賛する映像でした。トヨタ カローラも「隣のクルマが小さく見えま〜す」というCMで、やはり大きさやゆとりをアピールしヒットしました。いまとなってはどちらも高度経済成長期の微笑ましい記憶です。
フルゴネットは、コンパクトさと使い勝手の良さで、日本でも広く知られるようになり、カングーはその立役者となりました。そのコンパクトさを敢えて犠牲にホイールベースを延長したグランカングーには、昔日の大きさやゆとりに重なるような豊かさを、新しい魅力として手に入れたのです。小回りはちょっと苦手になりましたが、普通のカングーにできないことが、このグランカングーであれば実現できるかも知れません。
もちろん、もっと大きな商用車もヨーロッパにはラインアップされています。けれども全長を伸ばしたフルゴネットというのは、大型の1box(1.5box)モデルのように現実的になり過ぎず、どこか親しみやすさを残しているようにも感じられます。その親しみやすさは、スペック面だけではなく感性として、運転の楽しさや、乗員の快適な時間を演出してくれるのです。
グランカングーのライバルは?
グランカングーだけではない、7人乗りのフルゴネット勢
グランカングーは、フルゴネットであるカングーをベースに、ホイールベースを延長して7人乗りに仕立てあげたモデルです。こういった構成を持つライバルはヨーロッパに2車種存在します。
ひとつはフォード グランド トルネオ コネクトです。これはトルネオ コネクトのホイールベースを延長した7人乗りモデルです。トルネオ コネクトに代えて、グランド トルネオ コネクトでは、2列目シートをカングー/グランカングー同様のダイブダウン方式に変更。さらに3列目シートも床面に折り畳み可能でフルフラットに近いラゲッジスペースを確保できます。ただ、グランカングーと比べると、シート折りたたみ時にやや上げ底となってしまうこと、3列目シートの間からテールゲート方向にトランクスルーできないのは弱点かもしれません。一方、エンジンがディーゼルのみなのはグランカングーと同様ですが、2ペダルの選択も可能なのはグランド トルネオ コネクトの強みと言えます。
もうひとつはキャディ マキシ ライフです。成り立ちはグランド トルネオ コネクトやグランカングーと同様、キャディ ライフのホイールベースを延長したものですが、3列目は左右一体型のベンチシートとなり、シートアレンジの柔軟性という点で少なからず後退しています。ただしキャディ マキシ ライフはガソリンとディーゼルの両方が選べ、さらに2ペダルのデュアルクラッチトランスミッション(DSG)が選べるという点で、大幅なアドバンテージがあります。
ちなみにキャディ ライフには、ホイールベースを延長せずとも3列目にシートを追加するオプションの設定がありますが、フル乗車時に荷室がゼロに近づいてしまうので、必要に応じて応急用として使うのが現実的です。同様の構成の設定はシトロエン ベルランゴ マルチスペース/プジョー パートナー ティピーやフィアット ドブロにもあり、これらを含めると7人乗りのフルゴネットの選択肢は増えますが、7人フル乗車+荷物という観点では、やはりグランカングー、グランド トルネオ コネクト、キャディ マキシ ライフの3台とは異なるコンセプトのモデルと考えた方が良いかもしれません。
ただ、PSAはトヨタと共同開発したシトロエン スペースツアラー/プジョー トラベラー/トヨタ プロエースの3兄弟に、全長4.6mの短尺モデルをラインアップしています。こちらが事実上のグランカングーのライバルとも捉えられます。
なお、7人乗りのモデルは、他にも多くの車種が発売されるようになっています。これから挙げるのはごく一部ですが、たとえばルノーではグランセニックやエスパスをラインアップ。フィアットはコンパクトな500LやSUVのフリーモントに7人乗りを設定。フォードはC-MAX/グランドC-MAX、S-MAX、ギャラクシーなど多彩なミニバンを用意しています。このほかにもフォルクスワーゲンのトゥーランとシャラン、BMWの2シリーズグランツアラーなどが挙げられますが、7人乗車時の居住性の高さを考えると、室内がリアエンドまで広いフルゴネットのパッケージングは魅力的です。
グランカングーの主な装備とオプション
“Modularité”と”Famille”、2つのパッケージオプションに注目
グランカングーでもっともベーシックなグレードであるゼン(Zen)でも、マニュアルエアコンや、Bluetooth/USB対応のオーディオ、クルーズコントロールなどを標準で装備しており、必要なものはひと通り揃っています。また、オプションで選べるオートエアコンや電動格納式ドアミラー、パーキングセンサーなどは上位のインテンス(Intense)に標準装備されます。ほとんどの装備差はオプションで埋めることができますが、たとえば革巻きステアリングはインテンス専用装備で、完全に装備差を埋めることはできません。
もしフル装備志向ならばインテンスの方がお買い得ですが、ゼン専用のオプションとしては、前後バンパーなどをボディ同色ではなく素材色にダウングレードするというものがあり、これがどうしても必要ならば、ゼンを選んでオプションを積み上げれば、商用グレードルックの実質インテンスをつくり上げることもできます。このようなカスタムオーダーの余地が大きいのは、欧州商用車ならではと言えるでしょう。
また、いくつかのパッケージオプションの設定もあり、特にPack ModularitéとPack Familleのふたつは要注目です。Modularitéはモジュールを意味するのですが、これは助手席の折り畳み機構にフロントシートのポケットなどをセットにしたオプションです。シートアレンジの幅が広がるので、ぜひ選択したいところです。Familleは、家族のこと。リアドアのパワーウィンドウや後席向けの天井の収納、リア向けの12Vソケットなどを追加しています。こちらも天井に長尺物の棚を自分で作る予定などがなければ、選んでおくと何かと便利でしょう。
ちなみに両グレードともにサイドエアバッグはオプション設定で、またカーテンエアバッグの装備はできない点は留意が必要です。ホイールはいずれも15インチのスチールホイールで、デザインが異なるホイールキャップが追加されます。アルミホイールはオプションです。
ルノー グランカングー並行輸入、日本国内での乗り出し価格は?
ルノー グランカングー ゼンの価格はフランス仕様で24,300ユーロです。並行輸入した場合の日本国内乗り出し価格は、下記の表を参考にしてください。コアカーズを運営する並行輸入者販売店YMワークスでの最新の為替レートに基づいた諸経費込みの販売価格を表示しています。
なお、ご希望に応じてノーマル5人乗りのカングーのご注文も承ります。またグランカングーにはイギリス仕様の設定がないため左ハンドル仕様のみとなりますが、商用モデルの「カングーバン」にはイギリス仕様があり、5人乗りロングホイールベースの右ハンドル仕様など、多くのバリエーションがあります。お気軽にご相談ください。
現在、英国内のグレード整理・価格改定に伴う調整作業中です。日本国内での乗り出し価格の目安はお問い合せ下さい。
※国内乗り出し価格目安は、ご覧の時点での為替レートにて算出しております。 金額が表示されない場合は、しばらく経ってから再度アクセスをお願いします。
ルノー グランカングーの主なスペック
スペックの詳細は、「+」ボタンクリックで表示されます。
車名 | ルノー グランドカングー ゼン/ Grand Kangoo Zen |
サンプルグレード | Energy dCi 110 / 6MT |
フランス販売価格 | €24,300 |
型式 | – |
初度登録 | 国内未登録新車 |
車検 | 受け渡し |
走行距離 | – |
ハンドル | 左 |
ドア数 | 5 |
カラー | ブラン ミネラル ブルー エトワール(M) グリ アルジョン(M) ノワール メタル(M) グリ カシオペ(M) ブラ モカ(M) ブルー コスモス(M) ※M:メタリック系塗装 |
全長x全幅x全高 | 4,666× 1,829 × 1,802 mm |
ホイールベース | 3,081 mm |
トレッド(前/後) | 1,521mm / 1,533mm |
車両重量(乾燥) | 1,430kg |
乗車定員 | 7名 |
トランスミッション | 6MT |
エンジンタイプ | 水冷直列4気筒DOHC8Vコモンレール直噴ターボ |
総排気量/内径x行程 | 1,461cc / 76.0×80.5mm |
圧縮比 | 15,7 |
最高出力 | 109ps/4000rpm |
最大トルク | 240Nm/1750rpm |
燃料タンク容量 | 60L |
燃費 | – |
ブレーキ形式(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ディスク |
タイヤ/ホイール | 195/65 R15 |
最高速度 | 約170km/h |
0-100km/h加速 | 約12.3秒 |
特記事項 | ※一部推定値、非公式情報を含んでいる場合があります。 |
車両詳細画像ギャラリー
ルノー グランド カングーをもっと知りたい方はこちら
・ルノー グランカングーのオフィシャルサイト(Renault France GrandKangoo)
・ルノー グランカングーのコンフィギュレータ(Renault France GrandKangoo)
・ルノー グランカングーのカタログダウンロード(Renault France GrandKangoo)
※本記事は2017年7月24日時点の情報を元に作成しております。最新の情報に関しては直接ご連絡にてご確認ください。また、記載情報の誤りがある場合はお知らせください。